Yahoo!ニュース

オリックス・井川選手にも教えたい!「こんなに簡単!サーキット走行への道」

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

東スポWebの記事で、次はレーサー?井川「B級ライセンス取りたい」という記事が目にとまった。これは多趣味で知られるプロ野球・オリックスの井川慶投手がモータースポーツの「国内B級ライセンス」を取得し、サーキットを走りたいと語ったもの。

プロ野球選手がレース出場。なかなか面白いではないですか。クルマが好きで、ポテンシャルの高いクルマを思いっきり走らせたいなら、最高の趣味になるはずなので、ぜひチャレンジして頂きたいところだが、単純にサーキットを走って楽しむだけなら、「国内B級ライセンス」は必要としない。サーキット走行やモータースポーツは実はもっと簡単に楽しめるということを井川選手にも知って頂きたいと思い、書き綴った。

鈴鹿サーキットのチャレンジクラブ走行の様子。自分の愛車でサーキットを走れる!
鈴鹿サーキットのチャレンジクラブ走行の様子。自分の愛車でサーキットを走れる!

そもそも国内B級ライセンスとは?

記事では国内B級ライセンスを取得し、サーキットを走りたいと言う井川選手の思いが綴られているが、そもそも「国内B級ライセンス」とは、モータースポーツ「競技会」に参加するための資格

JAF(日本自動車連盟)が発行する4輪モータースポーツ・ライセンスには「国内B級」と「国内A級」がある。井川選手が取得を希望している「国内B級」はモータースポーツへの入門ライセンスと呼ばれており、単純にライセンス講習を受けるだけで取得でき、試験も無い。講習は座学のみで、クルマを持ち込んで走ることもない簡単なものだ。

「国内B級」のライセンスを取得すると、レースには出場できないが、ラリーやスピード行事に参加できるようになる。スピード行事とは具体的に言うと、パイロンなどで設定された特設コースでタイムを競う「ジムカーナ」と呼ばれる競技など。タイムアタックをして誰かと順位を競いたいなら、取得をオススメしたい。

国内A級ライセンスは?

では、その上の「国内A級」は何かと言うと、こちらは「国内B級」では参加できなかった「レース競技」に出場するためのライセンス。国内B級の取得者が、ジムカーナなどの公認された競技に1回以上出場していればA級ライセンス講習会に参加できる。このA級ライセンス講習会では実際にクルマを運転する「実技」が必要になり、テストもある。

ただ、それほど難しいものではなく、普通にクルマを操作できるならパスできる。テクニックを見極めるものではなく、レース参加にあたってのマナーやルールの理解度をテストするもので、受講料を払ってレースに出場したい意思がある人なら、まず不合格になることはないだろう。

1泊2日で取れるAライセンス!

「国内A級」ライセンスは、「国内B級」を持っていなくとも、公認サーキットでの走行経験が50分以上あり、サーキットから証明書をもらった人ならA級ライセンス講習会に参加し、取得する事ができる。

ただ、ライセンス取得までのステップには時間がかかるので、1泊2日で「国内A級」が取れるプログラムも実施されている。例えば、F1が開催されている鈴鹿サーキットでは「SUZUKAエンジョイAライ」というプログラムがあり、全くモータースポーツ経験のない人でも、1泊2日で取得可能。SUV車、RV車、軽自動車、ワンボックス、ミニバンなどサーキット走行に適さないクルマは参加できないが、これ以外なら愛車を持ち込んでプログラムを受講することができる。有効な普通自動車免許は当然必要となる。ライセンスを取得したいなら、こういう合宿タイプのプログラムが最もてっとり早い方法だ。

SUZUKAエンジョイAライ 案内ページ

かつてF1ブームのバブル期には、三井ゆりさんなどグラビアアイドルが「国内A級ライセンスを持っています」と語って話題になったが、今も昔もごく簡単に取得が可能なものである。繰り返しになるが、モータースポーツライセンスはジムカーナやレースなどの「競技」に参加するのに必要な資格であって、参加する意思や予定がないのであれば、年ごとの更新費用がかかるだけの写真付きカードになってしまいかねない。レース出場の意思があるなら、ぜひ取得を。

サーキットを愛車で走って楽しみたいだけなら、サーキットごとの「サーキットライセンス」を取得することで走ることができる。走行当日に取得できる制度のものが多く、これも講習を受けるだけである。いきなり本格的なサーキット走行にチャレンジする自信が無ければ、ドライビングレッスンプログラムから参加するのも良いと思う。

鈴鹿サーキットのドライビングレッスン 【写真:MOBILITYLAND】
鈴鹿サーキットのドライビングレッスン 【写真:MOBILITYLAND】

学んで、レンタルで参加できるレース

かつては非常に敷居の高かったモータースポーツの競技参加も今は気軽に参加できるプログラムもある。

画像

M-TECが主宰する「Honda Sports & Eco Program」はホンダCR-Zのレース車両をレンタルして参加するモータースポーツ入門プログラム。CR-Zを使った4段階のレッスンを受講し、スポーツドライビングの基礎を学び、実際にタイムアタック競技やレース形式の競技にも参加できるプログラムである。

クルマも、ヘルメットやレーシングスーツなどの装具も全てレンタル可能で、体ひとつで参加できるのも特徴。日数はかかってしまうが、プロドライバーのレッスンにより、モータースポーツを正しく理解してレース参戦が実現できる魅力的なプログラムだ。プログラム内で「国内B級」「国内A級」の取得も可能で、筆者自身もこのプログラムで夢の4輪レース出場を実現した。

Honda Sports & Eco Program ホームページ

もっと気軽にレンタルカート

あらゆるモータースポーツの中で最も気軽に楽しめるのが「レンタルカート」。遊園地のゴーカートよりもはるかに速く、ホンモノのレーシングカートよりもスピード域が低いカートだ。長袖長ズボンでレンタルカート場やミニサーキットに行けば、あとは全てレンタルして楽しめる。

レンタルカート (幸田サーキット/愛知県)
レンタルカート (幸田サーキット/愛知県)

「カートなんて。。。」と思われるかもしれないが、大抵の人はいきなり速く走らせることはできないし、走行後は体の疲れを感じるはずだ。最も安い費用で、充分に楽しめてしまう。レンタルカート場によっては、仲間と貸切でレースを楽しめるパッケージプログラムを用意しているところもある。レンタルカートの場合、大柄な野球選手は体重の重さがタイムに影響してくるので、レクリエーションとして選手同士で集まって貸切で楽しむと良いかもしれない。スポーツマンシップに反する幅寄せなど危険な行為をしない限り、最も安全に楽しめるモータースポーツといえる。

という感じで、余計なお世話とばかりに、モータースポーツの気軽な体験方法について書いてきたが、モータースポーツはレンタルカートでも危険が伴うものであることは忘れてはならない。公道と違い、サーキットでは全ては自己責任での参加が求められる。ただ、スポーツ選手ならその辺のことはよく理解されていると思うし、体幹が鍛えられていて身体能力に優れるので、あっという間に速さを身につけることができるだろう。シーズンオフのストレス解消に簡単なものからぜひチャレンジして頂きたい。他のジャンルのスポーツ選手のモータースポーツへの参加を歓迎します!

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

辻野ヒロシの最近の記事