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天皇陛下がお誕生日記者会見で貫かれた 令和流の“雅子さまファースト”

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇皇后両陛下(写真:ロイター/アフロ)

2月23日、天皇陛下は63歳のお誕生日を迎えられ、一般参賀には抽選で選ばれた約4000人が訪れ、祝意を奉じた。

お誕生日に際しての記者会見では、ご家族のことから皇室のSNSに関する質問、さらには平和が脅かされている世界情勢など多岐にわたる話題について、天皇陛下は丁寧に言葉を尽くし、真摯に具体的な話をされていた。

その中で印象に残ったのは、やはり雅子さまへの愛情の深さであった。会見の端々に「雅子さま」の名前が何度も登場し、二人三脚で支え合ってこられた仲睦まじさが伝わってきた。

◆陛下の雅子さまへの変わらぬ愛

この3年の間、コロナ禍によって公務でのお出ましがほとんどなくなり、国民と直接接する機会を失っていたことを陛下は、「私も雅子も残念に思っていました」と、両陛下共通の心残りを吐露された。

しかし昨年10月には、2020年1月以来の地方訪問となる、「栃木国体」開会式にお二人揃って出席し、その後に兵庫県、さらに沖縄県も訪問されたことを、陛下はこう述べている。

「(去年)10月には、国民文化祭及び全国障害者芸術・文化祭に際して、雅子と一緒に沖縄県を実際に訪れることができたことを嬉しく思いました。沖縄県では、沖縄戦における御遺族の方々のお話を直接伺い、お一人お一人の御苦労や悲しみに思いを致しました」

エリザベス女王の葬儀に出席できたことに関しても…

「突然の英国訪問となった昨年9月の英国女王エリザベス2世陛下の御葬儀への出席は、時差が大きく長時間のフライトとなるなど厳しい日程だったと思いますが、二人でそろって参列できたことに安堵いたしました」

と、陛下は移動を伴う時にも、雅子さまが傍におられることを心強く感じるとともに、会見では「私と一緒に」「二人で一緒に」「二人でそろって」という言葉を使っていらっしゃったのが印象的だ。

プロポーズの際、雅子さまを「一生、全力でお守りします」とおっしゃった陛下にとって、ご結婚以来30年間、雅子さまは最愛の人であり続けているのだ。

     皇后雅子さま(写真・ロイター/アフロ)
     皇后雅子さま(写真・ロイター/アフロ)

◆隠さぬ陛下の「雅子さまファースト」

上皇さまは美智子さまに結婚を申し込まれる時に、「公的なことが最優先であり、私事はそれに次ぐもの」と話され、私的なことは後回しとなってしまうことで、我慢や不自由を強いる結果になるかもしれないと諭したという。

昭和一桁生まれの上皇さまは、妻への愛情をはっきりと口に出すものではないという価値観が染みついている世代だ。銀婚式を迎えられた記者会見で、美智子さまは上皇さまに「感謝状」をお送りしたいと述べられ、上皇さまは美智子さまに「努力賞」を差し上げると話されたことからも窺い知ることができる。

しかし、天皇陛下はご結婚30年に触れつつ、雅子さまに対しての愛情と感謝のお気持ちを、躊躇なく、ストレートにこう語られた。

「雅子が29歳半の時に結婚してから、その人生の半分以上を私と一緒に皇室で過ごしてくれていることに、心から感謝するとともに、深い感慨を覚えます。この30年近く、二人で一緒に多くのことを経験し、お互いに助け合って、喜びや悲しみなどを分かち合いながら、歩んでまいりました。(中略)雅子は、私の日々の活動を支えてくれる大切な存在であるとともに、公私にわたり良き相談相手になってくれていますし、愛子の日常にもよく気を配りながら見守っており、生活に安らぎと温かさを与えてくれていることもとても有り難く思っております。私も、今後ともできる限り力になり、支えていきたいと思っています」

国民に寄り添い、弱き立場の人びとに心を砕かれる陛下にとって、上皇さま同様、公的なことが最優先であることは揺るぎないものの、筆者は敢えてこう考える。

天皇陛下にとって「雅子さまファースト」もまた、心温かな人としての真実なのだろうと。

「佳子さま『心の自由の表明』か 赤いお召し物を好まれるワケ」

https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20230220-00337582

「麗しのプリンセス愛子さま ターニングポイントは成年の記者会見」

https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20230227-00338215

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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