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雅子さまも召し上がった!? 甘き香りに包まれた 天皇陛下の絶品スイーツ

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
上皇ご夫妻と天皇皇后両陛下(写真:ロイター/アフロ)

 今でも時々「宮内庁御用達」という言葉を目にする。これは、明治24年に当時の宮内省が皇室への物品の納入許可制度にもとづき、お墨付きを与えた、いわば金看板のようなものであった。

 しかし、この制度は昭和29年に廃止され、現在、「宮内庁御用達」を表示したり、広告に使用しないよう要望が出されている。

 したがって「宮内庁御用達」がどこまで信ぴょう性のある話かは、断定できないものの、皇室の方々が好んで愛用される品々、特にスイーツの類に限っては、好んで御所望されているエピソードを耳にすることも少なくない。

 そこで今回は、皇室の方々に愛されるスイーツを、エピソードとともにご紹介したい。

◆上皇さまと美智子さまがお好きな村上開新堂のクッキー

 上皇さまのご友人が御所を訪ねる時によく持参していたというのが、東京・千代田区にある「村上開新堂」のクッキーである。上皇さまと美智子さまがお好きなので、このクッキーを選んでいたのだという。

 御所に伺うと、大抵の場合は上皇さまだけが応接間に来られて、クッキーを渡すと、「いや、どうも」と、短く謝意を述べられるのが慣例であったと聞く。

 村上開新堂は、明治7年に創業し、日本の洋菓子店の草分けである。当時から宮内省や各国大使らに販売を行い、長い歴史を受け継いできた。

 このお店のクッキーは、大変貴重な品だ。お店に名前を登録している人だけが予約して買うことができ、現時点での予約受付は9月1日からで、受け取りは1年後からだという。

 以前、上皇さまのご友人のお宅に伺った際、幸運にも筆者も味わう機会に恵まれた。缶の中に、いろんな種類のクッキーがギュウギュウに詰められていて、どれも丁寧に作られたことが伝わってくる、奥深い味わいだった。

 そのご友人の話によれば、昔から上皇さまは紅茶とともに、クッキーを召し上がることを好んでいらっしゃったという。そのわけは、上皇さまが学習院中等科時代、英語教師だったアメリカ人のヴァイニング夫人から受けていた個人授業が終わるとお茶の時間となり、よく振る舞われたお菓子がクッキーだったことから、いつしか好まれるようになったというのだ。上皇さまにとって、クッキーは思い出の味でいらっしゃるのだろう。

◆天皇皇后両陛下の儀式ゆかりのスイーツ

 今から3年前の2019年10月22日、皇居宮殿で即位礼正殿の儀が執り行われ、天皇皇后両陛下が古式ゆかしい装束をお召しになった光景は記憶に新しい。この儀式には、世界各国の王族、国家元首をはじめ、国際機関など多くの賓客が出席した。

 この賓客に手土産として渡されたのが、神奈川県・鎌倉市にある「MAISON CACAO」の生ガトーショコラだ。

MAISON CACAOの生ガトーショコラ(筆者撮影)
MAISON CACAOの生ガトーショコラ(筆者撮影)

 このお店はチョコレートの美味しさにこだわり、コロンビアにカカオの栽培から加工まで行う自社管理農園を持っている。そういえば、独身時代に雅子さまが可愛がっていらっしゃった愛犬の名前も「ショコラ」だった。両陛下はチョコ味をお好きなのかもしれない。

 お店で購入して食べてみたところ、とても濃厚で、ケーキというより、高級な生チョコを存分に堪能した満足感を得られた。

◆青春時代に上皇さまが召し上がった思い出の味

 駅ビルやデパートなどでよく見かける、老舗の洋菓子店「コロンバン」。コロナ禍になる前まで、毎年春と秋に赤坂御苑で開かれていた園遊会で出されていたのが、このお店で作られたプチフール(一口サイズのケーキ)と焼き菓子だった。

 実は、園遊会に並んでいるのは特別なもので、目でも季節感を味わってもらいたいと、春の園遊会では、桜色や薄緑など春らしい色合いのプチフールにしているという。

 さらにこのお店には、皇室との深い繋がりを物語るエピソードがある。上皇さまが学習院高等科3年生の時、ご学友と連れ立ってこっそり銀座の街に繰り出し、喫茶店に立ち寄られた。護衛の目を盗んでお出掛けになったため、大騒動となったこの出来事は、後に『孤獨の人』という小説に描かれたほどだ。この時の喫茶店が「コロンバン」であり、当時、上皇さまは紅茶とともにアップルパイを召し上がったと伝えられている。

コロンバンのアップルパイ(筆者撮影)
コロンバンのアップルパイ(筆者撮影)

 上皇さまが召し上がったコロンバンのアップルパイは、しっかりとしたパイ生地の中に、甘酸っぱいリンゴがたっぷり入っており、素朴で懐かしい味わいだった。

◆明治天皇の発案で作られた伝統の和菓子

 江戸時代まで天皇がおわした京都には、雅な文化を受け継ぎ、皇室の方々から愛された和菓子の名店がある。京都御所に生麩を献上してきた、創業約200年の老舗「麩嘉」(ふうか)だ。

 ここには、明治天皇からリクエストを受け、日本で初めて作られたという和菓子がある。それが生麩の生地で餡を包んだ、「麩まんじゅう」だ。明治天皇は甘い物がお好きだったのだろう、晩年は糖尿病が悪化し、心臓麻痺を起こして崩御されたという説がある。

 お取り寄せして食してみたところ、口の中に入れると、つるんとした舌触りがなんとも絶妙で、上品な甘さが広がっていった。

麩嘉の麩まんじゅう(筆者撮影)
麩嘉の麩まんじゅう(筆者撮影)

 この「麩まんじゅう」は、こだわりの職人技で作られており、職人さんが一つひとつを丹精込めて手作りしている。明治天皇にゆかりが深いことから昭和初期まで明治神宮にも奉納されており、皇室の歴史を感じ取ることができるだろう。

 初めて出合う味は、新鮮な発見と美味しさという幸福に満ちている。皇室ゆかりのスイーツを味わって、この夏の思い出を作ってみてはいかがだろうか。

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放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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