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国民の85%が賛成する「愛子さまが天皇に」即位後に起こる重大な問題とは?

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
両陛下の長女・愛子さま(写真:ロイター/アフロ)

■皇位継承有識者会議でぶつかりあう意見

 安定的な皇位継承を議論する、政府の有識者会議は5月10日に3回目となるヒアリングを行った。招集された専門家は史学や法学などの学識経験者、著名な文化人、女優などで構成されている。

 それら専門家の意見は、「あくまで男系男子の継承」を支持するものから、「女性天皇も女系天皇も容認」するというものまで、まさに百家争鳴。もちろん有識者会議は、結論を出す機関ではない。皇位継承についてどのように考えることが現実的な皇室存続に繫がるものなのか、意見の中身を吟味することが重要だ。

 例えば、憲法学者の国士舘大学・百地章特任教授は、男系男子継承こそが憲法における世襲の意味であり、安易な女性天皇や女系天皇は憲法違反の疑いが生じかねないと釘をさした。一方、東京大学・宍戸常寿教授は、憲法には皇位の世襲にあたり女性を排除するものではないので、女性皇族の皇位継承は認められるという立場だ。

 このように皇位継承における最大の課題は、女性天皇や女系天皇を容認するべきなのかどうかという一点である。なるほど男女平等の観点から言えば、確かに女性が天皇になったとしても問題はないように見える。現に海外の王室では、英国の例を出すまでもなく、古くから女王の継承が認められている。

■実在した女性天皇

 では、なぜ日本では女性天皇が認められないのだろうか。

 歴史を振り返れば、八方十代の女性天皇が即位し、それぞれの時代でおおいにその存在感を発揮していた。

 しかし、明治政府が作った大日本帝国の旧皇室典範では、皇統の継承は天皇の男子でなければならないと明記され、戦後改まった皇室典範においても内親王の継承は禁じられてきたのだ。それは古くから日本人の血に染みつく、父系継承という儒教の考えによるもので、家の名を受け継ぐものは長子であらねばならないという、家父長制にも表れている。

 かつては天皇の血統が絶えることを懸念し、側室を置き世襲宮家も存在した。しかし大正以降、側室を置くことは倫理的に問題となり排除され、世襲宮家も戦後GHQによって11宮家51人が皇室を離脱したのだった。

 現在の宮家は、秋篠宮家、常陸宮家、三笠宮家、高円宮家の4家があるが、男性は85歳の常陸宮さま、55歳の秋篠宮さま、14歳の悠仁さまの3人のみである。将来の皇位継承が不安定になるのではないかと危惧するのは、こうした現状があるためだ。

■愛子さまが女性天皇となったら?

 そんな中、今年12月に20歳を迎え、成年皇族となられる愛子さまを巡り、様々な世論が賑わっている。その多くは「愛子さまが天皇でも良いではないか」という、女性天皇を認める意見だ。共同通信の調査によれば、85%もの国民が支持しているという。

 しかし、問題はこの先だ。過去の女性天皇は、天皇となるべき次世代の皇子が幼かったり、あるいは政争の渦中にあったりした場合、一時的な繋ぎとして即位していた。それも寡婦となった皇后や、早世した皇太子の姉か妹と、前の天皇とごく近い立場であった。

 独身のまま皇位についた場合、その女性天皇は生涯独身であることが不文律。なぜなら、結婚して夫を持ち子どもができれば、その子の処遇が問題となる。もしも、その子が次期天皇として推戴されれば、天皇を母に持つ女系天皇が誕生してしまうからだ。

 愛子さまを天皇にという世論が、女性天皇に対する好意的な支持であることはよく理解できる。しかし、実は女性天皇と女系天皇は、一体として考えるべき問題なのだ。また仮定の話で恐縮だが、もし愛子さまが女性天皇となり、その子も女系天皇として認められるならば、そこには乗り越えなくてはならない大きなハードルが待ち受けている。

 夫選びは天皇の父としてふさわしいことが条件となり、今注目を集めている眞子さまと小室圭さんの結婚問題どころの騒ぎではなくなる。かといって愛子さまに結婚を諦めてもらい、生涯独身を強いることなどできるはずもない。つまり女性天皇も女系天皇も、感情的な公平性で考えれば容認しても良いと考えがちだが、それはあまりにも天皇家の血脈の継承を軽々しくとらえているように思えるのだ。

■最適な結論は?

 京都産業大学の所功名誉教授は、皇位継承は男系男子を優先し、将来のことを考えて、ひとまず男系女子を危機回避策として容認することを提案している。さらに戦後皇籍を離脱した旧宮家の男系男子を天皇家あるいは宮家の養子とする案も、難しいが検討に値すると述べているが、最も現実的な案だろう。

 幸いにも現在、秋篠宮さま、そして悠仁さまと男系男子直系の血脈は保たれている。しかし、皇位継承に関する論議は、結論まで時間がかかるものだ。今からおおいに議論を深めておいてもいいのではないだろうか。

 次回のヒアリングは、5月31日に行われる予定だ。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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