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元中日 山本昌の引退試合、意図的に空振りするなら始球式で十分

豊浦彰太郎Baseball Writer

山本昌が、地元ナゴヤドームでの5日のオリックス戦(追記 ヤクルト戦の間違いです、訂正してお詫び申し上げます)で引退登板を果たした。打者1人に対して3球を投げ、空振りで三振を奪った。場内も夜のニュースでのスポーツコーナーも、ウェブでの報道も、賛美のムードと言葉で埋め尽くされていた。しかし、これもいかがなものか、と思う。

引退のセレモニーに対する考え方は、人それぞれだとは思う。毎年、シーズン終盤に引退試合が繰り返される。戦力的に必要性をなくした選手が、その日に限り戦力である選手の登録枠や出場機会を奪ったり、そこで相手球団が手心を加えた投球や打撃で花を持たせることに、フェアネスや野球という競技へのリスペクトの観点からぼくは懐疑的なのだけれど、それを許容する人々が大多数であることは事実だ。

しかし、昨日の山本昌の登板に関して言うと、投げるのはすでに引退した選手だし、登板も打者1人に対してだ。そして、相手打者は(少なくともぼくはそう思っているのだけれど)、意図的に空振りをしていた。

それなら、始球式で良いのではないかと思う。

誤解がないよう強調しておきたいが、ぼくは同世代の星である山本を心の底から尊敬している。彼にファンが別れを告げるためには、それなりに盛大なセレモニーは必要だと思う。だから、オープン戦という場を利用し1日契約を結んでマウンドに上がるのも良いと思う。しかし、それも相手打者が真剣に対決してあげてこそだと思う。打たれても一向にかまわないと思うし、それで山本へのお別れの儀式が傷ついてしまうものではないと思う。

先にも記した通り、引退試合や引退セレモニーでの「武士の情け」への許容度は人それぞれだとは思うが、ぼくはこのような対決は相手への非礼に値すると思う。

仮にそうでなく、三振してあげること、空振りしてあげることが必要なら、選手登録したうえでの出場より始球式というセレモニーのほうが相応しい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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