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星野監督引退はNPBのマネジメントスタイル変革へのきっかけとなるか?

豊浦彰太郎Baseball Writer

楽天が、今季最終戦となる10月6日のオリックス戦で星野仙一監督の引退記念セレモニーを開催するようだ。球場敷地内に指揮を執った4年間の写真や映像などを展示し、入場者には記念のTシャツが配布されるという。

プロは実績で判断される世界だ。その意味では星野仙一は選手としても指導者としても一流であったことは間違いない。メディアでも彼の功績を称え、その情熱を賛美する記事が目に付く。

しかし、先週の土曜日に某スポーツ紙に掲載されたコラムにはどうしても賛同できなかった。それは星野監督の熱血指導とセットになったフォローの細やかさを伝えるものだった。

それによると、若き日の今中慎二がある日ふがいない投球で降板を命じられた後にベンチ裏で待っていた星野監督に「熱血指導」を受け、その結果歯が欠けたことがあったらしい(明確に「殴った」とは書いていない。結果として歯が欠けたことを示し暗にそのことを伝えているだけだが)。しかし、それでも今中は星野を慕っていた。それは感情に任せた怒りだけでなく、その後のフォローがあったからだという。

そのコラムを書いた記者(記名だった)が伝えたかったのは「闘将の本質は思いやりにあった」ということなのだとは思うけれど、「バイオレンスだけでない愛」という論旨はまちがっていると思う。

何も星野監督に限ったことではないが、このコラムのような論調はぼくとても危険だと思う、それは、人が人に接するに当たりどんなに心がこもったアフターフォローがあったとしても、そもそも暴力が肯定されるべきではないと思うからだ。

フォローがあるから暴力(物理的なものだけに限らない)があって良いという道理はないし、スポーツの世界だから鉄拳やその他のハラスメントも時には許容されるべきという考えも間違っている。

どんなに成果を挙げていても、どんなに思いやりに満ちたフォローがあっても、暴力は決して肯定されるべきではないと思う。

また、暴力とセットになったフォローにより構築された互いに依存度の高い人間関係というのも、好みを言わせてもらうなら好きになれない。何やら、DVがありながら離れられない夫婦関係を思い起こさせるからだ。

星野仙一という野球人の功績には大いに敬意を表するのだけれど、彼以外も含めこのようなスタイルの指導をぼくは評価できない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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