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現役世代が4割。20代女性の自殺も多い。「第6回孤独死現状レポート」に見る孤独死の傾向

豊田眞弓永続家計アドバイザー/FP/大学非常勤講師
(写真:アフロ)

2021年6月にまとめられた日本少額短期保険協会「第6回孤独死現状レポート」を見ると、「孤独死」は高齢者だけの問題でないことが強調されています。

■「孤独死レポート」とは?

「孤独死現状レポート」は、少額短期保険会社の家財保険(孤独死特約付き)に加入している被保険者のうち、2015年4月~2021年3月までの間に「孤独死」で亡くなった人のデータを分析したレポートです。データの特性上、賃貸住宅に住んでいる人に限られます。

なお、レポートでは、孤独死について「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った1人暮らしの人」と定義されています。「死後」の日数などは設定されてはいません。

■65歳未満が多め。男性が女性の5倍

レポートによると、孤独死をした人の平均年齢は男性61.6歳、女性60.7歳で、第5回と変更なしでした。孤独死をした人のうち、65歳未満の割合は、男性で51.9%、女性で52.4%。

この傾向は第1回レポートから続いていて、65歳以上のいわゆる「高齢者」の数のほうが、65歳未満よりやや少ないことがわかります。

男女比では、およそ5:1で、女性の約5倍、男性の孤独死が多くなっています。

年代で最も多いのは60代(30.6%)で、70代(20.9%)、50代(19.2%)、40代(10.1%)、80代~(8.5%)、30代(6.4%)、20代(4.2%)と続きます。

■病死に次いで自殺も多い

孤独死者の死因を病死、事故死、自殺、不明と分けた場合、最も多いのが病死で、次が自殺となっています。不明については、「ほとんどの場合、病気に起因した死亡が該当すると考えられるが、不明のまま計上している」との説明がありました。

自殺については、女性の方が男性の1.6倍多くなっています。

<孤独死者の死因>

・病死 3518人(65.6%)

・自殺 579人(10.9%)

・事故死 73人(1.3%)

・不明 1193人(22.2%)

■自殺者の割合が高いのは20代までの女性

孤独死の自殺者は、20代までが最も多く、年代が上がるごとに右肩下がりに下がっていきます。自殺者に占める割合では、特に20代までの女性の割合が高く、ほぼ4割(39.2%)となっています。

厚生労働省自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課「令和元年中における自殺の状況」のデータでは、自殺者の割合は40代、50代がやや多く、20代から70代まで比較的フラットになっています。

そのため、20代の女性の自殺による孤独死の割合が特に多いのは、賃貸住宅入居者特有の問題である可能性が指摘されています。

■発見までの日数は平均17日

孤独死から発見されるまでの平均日数は17日間で、男女差はありませんでした。3日以内の早期発見は39.4%と高い一方で、30日以上経過後に発見された割合も16.0%あります。

女性の方が早期発見される割合が高く(3日以内が女性50.1%、男性38.4%)、男性の方が長期化しやすい傾向が見られます(30日以上が女性10.2%、男性16.6%)。

■第一発見者は?

第一発見者は、多い順に次の通りです。

<第一発見者>

・不動産管理会社・オーナー等 24.7%

・親族 24.6%

・ケアワーカー・配食サービス・自治体・配達業者・ガス電気検針員等 18.5% 

・友人 14.4%

・隣人等の他人(「異臭」や「郵便物の滞留」で発覚) 11.9%

・警察 5.7%

孤独死の第一発見者は、不動産管理会社等やケアワーカー等、警察と「職業上の関係者」が約5割(48.9%)で、親族や友人など「近親者」が約4割(39.0%)。

女性では近親者の第一発見者の割合が男性より高く、普段から何かの時に気にかけてくれる友人などを作っておくことの大切さがわかります。

高齢単身世帯に対しては、申込者に対して乳酸菌飲料や弁当を手渡ししたり(利用者負担有り)、緊急通報装置の貸与、定期的な訪問をしたりなど、サポートメニューをそろえている自治体は多くなっています。一方で、1人暮らしの若年層とはどう関わればいいのか、模索しているように思います。年代に関係なく、孤立しない・させないことが大事なようです。

■季節ごとの孤独死発生割合

孤独死は、単月ベースで見ると7、8月に多い傾向がみられるようです。

地域別の特徴は、平均年齢で見ると、九州・沖縄で57.2歳、北海道・東北が58.1歳、中国・四国で58.4歳とやや低めである一方で、関東62.8歳、関西61.5歳と高めです。

発見までの平均日数は関西が14日、北陸・中部が15日、九州・沖縄で16日と短めで、他は17日となっています。

■孤独死による経済的リスク

最近は、「特殊清掃」という職業があることが知られるようになってきましたが、残置物処理や原状回復には費用がかかります。また、未納家賃が発生するケースもあります。

これらは本来、連帯保証人や借り主の相続人が負担すべき費用ですが、亡くなった人に遺産がないと、相続人は相続放棄をする可能性があります。賃貸住宅での孤独死による損害は、賃貸住宅オーナーが負担せざるを得ないケースも少なくありません。

<残置物処理費用>

平均損害額 23.5万円(最高額178.2万円)

平均支払保険金 23.1万円(最高額99万円)

<原状回復費用>

平均損害額 39.0万円(最高額152.8万円)

平均支払保険金 33.2万円(最高額300万円)

<家賃保証費用>

平均支払保険金 29.8万円

■残置物の処理等に関するモデル契約条項

レポートの内容はここまでですが、関連情報を加えておきます。

孤独死による残置物処理や遺品整理を行うには、相続人の了解が必要です。処分が終わるまで、次の入居者を募集することができず、大家には大きな負担でした。

これを解消すべく、2021年6月に、国土交通省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(孤独死後の契約の解除や残置物の処理に関する賃貸契約のモデル条項)を公表しました。

賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした死後事務委任契約等に関する内容で、使用が義務づけられているものではありません。合理的な死後事務委任契約等が締結されることで、単身高齢者の居住の安定確保にもつながると見られています。

■孤独死の経済的リスクに備える保険

孤独死による経済的リスクに備えるためには、賃貸住宅オーナーと入居者、それぞれの立場で利用できる保険があります。

まず、賃貸住宅オーナー向け商品の例として挙げられるのが、アイアル少額短期保険「無縁社会のお守り」や、あそしあ少額短期保険「大家の味方」、住まいぷらす少額短期保険「大家さんの安心ぷらす」などです。賃貸住宅内での孤独死や自殺、犯罪死によりオーナーが被る損失や清掃・遺品整理等にかかる費用が補償されます。

大家向けの孤独死リスクを補償する特約(家賃収入補償特約・家主費用補償特約)がついた火災保険もあります。

一方、入居者自身が入る火災保険でも、孤独死等による残置物処理費用や原状回復費用に関する特約が付いた商品があります。借家人賠償責任保険特約が原状回復費用を補償してくれる場合もあるでしょう。ただし、家賃保証はありません。

入居者の立場で孤独死などで遺族に負担をかけることをリスクに感じるなら、100万~500万円程度の死亡保険(終身保険や定期保険)に入っておくのも1つの方法です。ただし、生命保険の場合、多くは3年間の自殺免責があります。

【参照】日本少額短期保険協会「第6回孤独死現状レポート」

永続家計アドバイザー/FP/大学非常勤講師

<生涯永続できる家計の実現を!> マネー誌・女性誌等のライター・コラムニストを経て、独立系FPへ。講演・研修、コラム執筆や監修、個人相談などを業務としている。ライフワークとして、子どもから高齢者まで幅広く金融経済教育に携わっている。亜細亜大学ほかで非常勤講師、子どもマネー総合研究会理事を務める。趣味は講談、投資、猫に添い寝。

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