Yahoo!ニュース

平成から令和へ。それでも「昭和」はまだまだ続く。

鳥塚亮えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。
いすみ鉄道国吉駅に集結した昭和のボンネットバスと後ろを走る昭和の国鉄車両。(W)

いよいよ明日で平成が終わり、新しい時代「令和」が始まります。

ところが、そんな時代の転換はお構いなしに、今でも「昭和」を楽しめる場所。

それが千葉県のいすみ鉄道です。

昨日、このいすみ鉄道国吉駅で昭和のボンネットバスが集結する「春の鉄道まつり」が開催され、田んぼの中の無人駅が多くの観光客で賑わいました。

この「春の鉄道まつり」は、いすみ鉄道応援団が主催で行われているもので、筆者がいすみ鉄道社長時代の2011年に、昭和40年製の国鉄形ディーゼルカー・キハ52形をJR西日本から払い下げを受けて導入し、「昭和の観光急行列車」として走らせ始めたのを契機に、いすみ鉄道応援団長の掛須保之さんが中心となって、昭和の旧型自動車を保存している愛好会の皆様方がいろいろな車を持ち寄って古い街並みに並べたのがきっかけとなって、以来毎年ゴールデンウィークのこの時期に行われているイベントです。

ボンネットバス愛好会の皆様が勢ぞろい。カメラを向けるのは表紙写真を撮影された地元のカメラマン渡辺新悟さん。
ボンネットバス愛好会の皆様が勢ぞろい。カメラを向けるのは表紙写真を撮影された地元のカメラマン渡辺新悟さん。

ますはイベント開始の前にボンネットバスを保存している愛好会の皆様方を記念撮影。

皆さん昭和の国鉄時代の乗務員の制服に身を包んで勢ぞろいです。

カメラを向けているのは大多喜町在住の郷土写真家、渡辺新悟さん。

ほぼ毎日沿線で季節ごとのいすみ鉄道を記録してくれている応援団の一員です。

画像

ボンネットバスが3台。

これだけでもすごい光景ですが、このバスは3台とも現役。

国吉駅に到着する昭和の国鉄形ディーゼルカーに合わせて発着し、駅前から昭和の街並みが残る商店街をボンネットバスでぐるりと一回り体験乗車できるのがこのイベントの特徴です。

画像

▲国吉駅前に再現された昭和のバス乗り場には人だかりがしています。

ちょっと見づらいですが、左後ろ、案内図の上に矢印をつけたところに古い小屋があるのがわかりますね。

昭和43年の国吉駅前に停まるボンネットバス。(撮影:石田俊幸氏)
昭和43年の国吉駅前に停まるボンネットバス。(撮影:石田俊幸氏)

▲こちらは昭和43年の同じ場所。国吉駅前に停まるボンネットバスです。

写真に付けた矢印のところに小屋が写っていますが、昨日のカラー写真の同じ小屋です。

電話ボックスも形は違えど当時からちゃんとあるのがわかります。

50年も前のこういう写真が残っていて、古い小屋が残っているだけで、観光資源になると思いませんか。

画像

ボンネットバスの乗車待ちの行列。

今どきボンネットバスなんて言っても、若い人たちはほとんど知らないと思います。

それなのにこの行列はいったいどういうことかと思いましたら、行列に並んでいる若い人たちが、

「わあ、猫バスに乗るんだ。すごいねえ。」

と言っているのを聞いて、そうか、昭和は年齢関係ないんだと思いました。

2年前、2017年のイベントでは三輪自動車が集結しました。(撮影 渡辺新悟氏)
2年前、2017年のイベントでは三輪自動車が集結しました。(撮影 渡辺新悟氏)

この写真は2年前の2017年のイベント時のもの。

この時は三輪自動車が集結しましたが、後ろ姿が見えるボンネットバスは今回と同じ車です。

ボンネットバスは昭和39年製。後ろを走るディーゼルカー・キハ52は昭和40年製、その後ろのキハ28は昭和39年製ですから、まさに時代考証ピッタリですね。

これがローカル線の価値と筆者は考えます。

つまり、この「モノの価値」が分かるかどうかが、今、日本の田舎に問われているのではないでしょうか。

なぜなら、たったこれだけのことで、やり方一つでその地域が全国区に知名度が上がって、都会からたくさん人が来る集客のツールになるのですからね。

画像

昨日のイベント会場で、いすみ鉄道現社長の古竹孝一氏(右)と筆者(左)。

「キハの力ってすごいですね。この世界観は大切にしていかなければなりません。キハあってのいすみ鉄道です。」

と古竹さん。

ファンの皆様、安心してください。

彼もモノの価値が分かる人間のようですから。

キハは整備の面では大変だと思いますが、小さな会社では技術力が不足しているでしょうから、自社で抱え込まずに、ボランティアでキハの修理指導をしてくれる整備士の方々もいらっしゃいます。困ったときはぜひ声をかけてくださいとお話しさせていただきました。

画像

昭和の商店街といえばちんどん屋さん。

昭和のちんどん屋さんの保存会(上尾チンドン倶楽部)の皆様方がホームの脇でちんちんどんどん。

画像

発車していくキハの急行列車には立ち客が出るほどの大盛況。

画像

ホームで見送る人たちもみなさんカメラを構えて手を振って。

画像

田んぼの中の無人駅とは思えないぐらいたくさんのお客様で賑わいました。

明日で平成が終わり、令和の時代を迎えますが、こうしてみると昭和はまだまだ続いていきそうだと筆者は感じました。

いすみ鉄道の「春の鉄道まつり」は好天に恵まれ、今年も大盛況でした。

応援団の皆様、関係者の皆様、たいへんお疲れ様でした。

▼このイベントの様子は朝日新聞デジタルで動画付で紹介されています。

千葉)いすみ鉄道国吉駅で「春の鉄道祭」 昭和の香り

※注 文中の写真はおことわりのあるものを除き筆者撮影です。

(w):渡辺新悟氏

えちごトキめき鉄道代表取締役社長。元いすみ鉄道社長。

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長に就任。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

鳥塚亮の最近の記事