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年末の羽田空港、異例の満席便なし。お盆よりは多く、9月・11月の連休からは大幅減、移動も少人数の傾向

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
年末年始初日(12月26日)朝6時半頃の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)

 年末年始の帰省ラッシュにも新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響が出ている。帰省ラッシュや年末年始の旅行のピーク日となった12月26日(土)・27日(日)の朝の羽田空港には、ある程度の利用者の姿が見られ、閑散状態ではないが、大きな混雑は見られなかった。

 混雑具合の状況としては、お盆のピークとなった8月8日よりは多かったが、9月19日(土)の4連休初日、11月21日(土)の3連休初日と比べると大幅に減少している。特に家族連れの空港利用者が減少しており、1名~2名の少人数で飛行機利用する人が目立つなど、羽田空港ではいつも違う光景が見られた。

9月中旬~11月末は混雑してたが、年末年始初日の羽田に混雑なし

 年末年始の帰省ラッシュのピーク日となる12月26日・27日の朝に筆者は羽田空港を取材したが、9月19日の4連休以降~11月末までの週末に見られていた便が多く出発する朝7時台の利用者が集中する朝7時前の保安検査場の行列が今回の年末のピーク日には全く見られず、利用者はスムーズに保安検査場を通過できていた。

 最も国内線の利用者が多かったのが11月21日(土)であったが、大混雑していたチェックインカウンターや保安検査場入口の光景は全く見られなかった。例年の年末年始の帰省ラッシュは12月29日・30日がピーク日となるが、今年は24日(木)・25日(金)に仕事納めを早めた企業も多く、26日・27日がピーク日になっている。しかしながら混雑は見られていない。

12月26日朝6時半過ぎの羽田空港第2ターミナルのチェックインカウンター。混雑はしていないが、8月のお盆期間よりは利用者は多いが、9月・11月の連休初日に比べると大幅に利用者が減っている(筆者撮影)
12月26日朝6時半過ぎの羽田空港第2ターミナルのチェックインカウンター。混雑はしていないが、8月のお盆期間よりは利用者は多いが、9月・11月の連休初日に比べると大幅に利用者が減っている(筆者撮影)

JALグループ便とスカイマーク、スターフライヤーが発着する第1ターミナルのチェックインカウンターも12月26日の年末年始初日の朝6時15分前後でも混雑は見られなかった(筆者撮影)
JALグループ便とスカイマーク、スターフライヤーが発着する第1ターミナルのチェックインカウンターも12月26日の年末年始初日の朝6時15分前後でも混雑は見られなかった(筆者撮影)

ANA、JALともに満席便はほぼなし。駐車場も終日空車あり

 26日・27日朝の出発案内版の空席状況を見ても、上級クラスで一部満席便はあったが、普通席については全便空席があるなど、明らかに例年と異なる年末年始のスタートとなった。保安検査場の混雑具合同様に、混雑状況の目安となるターミナル直結の駐車場についても26日(土)は満車になることは一度もなく、27日(日)も午前9時現在でも「空車」になっており、筆者も実際に駐車したが、空いているスペースが多く見られて、すぐに駐車することができた。

 コロナ禍に入り「満車」になることはしばらくなかったが、9月19日(土)の4連休初日に約半年以上ぶりに「満車」表示が出た。それ以降は土曜日を中心に、11月末までの週末の土曜日は毎週「満車」の状態が続き、GoToトラベル効果もあって、利用者が回復していることは誰の目から見ても明らかであった。海外旅行へ出かけられない状況下で、新型コロナウイルスの感染者が拡大してなければ、年末も大混雑になっていたことは間違いなかっただろう。

12月26日(土)の朝の羽田空港のJAL便出発案内版。普通席には全便空席があった(12月26日朝6時15分過ぎ、筆者撮影)
12月26日(土)の朝の羽田空港のJAL便出発案内版。普通席には全便空席があった(12月26日朝6時15分過ぎ、筆者撮影)

12月26日(土)の朝の羽田空港のANA便出発案内版。JAL同様に普通席には全便空席があった(12月26日朝6時30分頃、筆者撮影)
12月26日(土)の朝の羽田空港のANA便出発案内版。JAL同様に普通席には全便空席があった(12月26日朝6時30分頃、筆者撮影)

羽田空港のターミナル直結の駐車場も「空車」表示が目立った(12月27日朝6時半前後、筆者撮影)
羽田空港のターミナル直結の駐車場も「空車」表示が目立った(12月27日朝6時半前後、筆者撮影)

年末年始の国内線回復を期待していた航空会社であったが・・・

 11月前半の段階では航空会社関係者は前年比で8割~9割程度まで利用者が回復することを想定し、3月から大幅減便が続いていた国内線の減便率も年末年始期間は約1割程度にまで回復させていた。

 しかしながら、11月後半からの感染者拡大、更に追い打ちをかけたのが12月14日(月)に突如発表されたGo Toトラベルにおける12月28日(月)~1月11日(月)までの全国一時停止。ここで多くの帰省客や旅行者がキャンセルすることになった。宿泊を伴わない帰省以上に旅行における影響は大きく、全方面でキャンセルが多く発生したほか、この1週間の東京都における新型コロナウイルスの新規陽性者の数が増加しており、12月17日に800人超えの821人となり、24日は888人、25日は884人、26日には過去最高の949人になったことで帰省取りやめも直前でも相次いでいる。

昨年の年末年始と比べて利用者は4割程度に

 航空各社では12月18日(金)に年末年始期間(12月25日~1月3日)の国内線予約状況を発表しており、Go Toトラベル全国一時停止(12月28日~1月11日)が12月14日(月)の夕方の突然の発表でキャンセルが出たことも影響し、予約数で見ると、12月18日時点ではANA(全日本空輸)では前年比57.6%の約80.1万人、JALでは前年比48.5%の約51.2万人となった。前年比8~9割程度の利用者を見込んでいた航空会社にとっては落胆が大きかったが、18日以降も断続的にキャンセルが続いた。

 その後、ANAでは12月24日(木)に改めて予約状況を発表し、前年比44.7%の約65.2万人になったことを明らかにした。予約率も12月18日時点では46.7%だったのが、40.1%に低下し、12月18日~24日の約1週間だけでも約2割の人がキャンセルした計算となる。Go Toトラベル全国一時停止の発表があった14日以降で見ると、かなりの人がキャンセルしたことは明らかだ。JALも数字の発表はないが、同様の状況になっているだろう。

子供連れが特に減少。1~2名程度の少人数移動が多い

 羽田空港の国内線チェックインカウンターには、帰省や旅行で飛行機を利用する人が訪れているなかで、大きな変化としては、子供連れの帰省や旅行に出かける人の姿が減っていたことだ。例年はスーツケースなど大きな荷物を持った家族連れが多く羽田空港では見られるが、今年は一人もしくは夫婦やカップル、兄弟など1名~2名など少人数で移動している利用者が多いのも、今年ならではの傾向である。

 緊急事態宣言中のゴールデンウィークとの大きな違いとしては、帰省を見合わせる人が多い一方、単身赴任中の人で自宅へ戻るのを中止している人は少なく、また帰省においても帰省先の状況次第で予定通りに帰省する人もいる。実家の近所の目を気にする必要があるかどうかによっても異なる状況になっている。

12月27日(日)の朝の羽田空港も人出は見られたが、大きな混雑はなかった。全般的に家族連れの姿が減っているように感じた(12月27日午前6時半過ぎ、羽田空港第2ターミナルにて筆者撮影)
12月27日(日)の朝の羽田空港も人出は見られたが、大きな混雑はなかった。全般的に家族連れの姿が減っているように感じた(12月27日午前6時半過ぎ、羽田空港第2ターミナルにて筆者撮影)

12月27日(日)の朝7時頃の羽田空港第1ターミナル。少人数での移動光景が多い(筆者撮影)
12月27日(日)の朝7時頃の羽田空港第1ターミナル。少人数での移動光景が多い(筆者撮影)

元旦の展望デッキでの初日の出開放も中止に

 また羽田空港の各ターミナルでは例年、展望デッキから初日の出を拝む人が多く訪れているが、2021年元旦は「密」になることを回避する為に早朝の展望デッキは開放せずに、初日の出後の朝7時30分からの開放とすることを決めるなど、間違いなく例年と違う年末年始の羽田空港の光景になっている。

元旦の羽田空港展望デッキでの「初日の出」の早朝開放を実施しない掲示板(筆者撮影)
元旦の羽田空港展望デッキでの「初日の出」の早朝開放を実施しない掲示板(筆者撮影)

【この記事はYahoo!ニュースとの共同連携企画記事です。】

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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