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羽田空港、事故機の影響で滑走路が1本使えず大幅遅延が続出。羽田行きでは管制塔の指示で離陸時間を遅らす

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
羽田空港第2ターミナルのANA国内線出発ロビー(1月3日、筆者撮影)

 1月2日に羽田空港で発生したJALの航空機と海上保安庁の航空機が衝突した影響で、同日21時半頃に羽田空港の滑走路が再開した後、事故が起こったC滑走路以外のA・B・Dの3本の滑走路を使って運用を続けている。

 現時点でC滑走路の運用再開の目処は立っておらず、運用再開までは使える滑走路が制限されることで、既に羽田空港発着の便で遅延や欠航が出ている。

2024年1月3日19時40分追記:福岡空港では、羽田空港行きで出発が3時間~5時間遅れており、搭乗ゲート前には多くの人で溢れているとのことです。

福岡空港のANA出発案内版。3時間以上の遅延便が続出している。中には5時間10分遅れも(1月3日19時10分、筆者関係者撮影)
福岡空港のANA出発案内版。3時間以上の遅延便が続出している。中には5時間10分遅れも(1月3日19時10分、筆者関係者撮影)

福岡空港のANA便搭乗ゲート前(1月3日19時頃、筆者関係者撮影)
福岡空港のANA便搭乗ゲート前(1月3日19時頃、筆者関係者撮影)

2時間以上遅延する便も続出。滑走路が1本閉鎖の影響が大きい

 1月3日も朝から前日の滑走路閉鎖の影響で機材繰りの関係で欠航や遅延便が出ていたが、特に午後になってからは国内線の多くの便で遅延が発生し、多くの便で1時間以上の遅延となり、なかには2時間・3時間以上遅延する便も出ている。

 その理由は滑走路が3本しか使えないなか、1月3日の午前中から夕方までの運用を見ると、沖合のD滑走路から出発便が離陸し、第1ターミナルと第3ターミナルの間にあるA滑走路に到着便が着陸する運用になっている。

事故機となった鎮火後の羽田空港C滑走路上のJALのエアバスA350-900型機(1月3日9時45分頃、筆者撮影)
事故機となった鎮火後の羽田空港C滑走路上のJALのエアバスA350-900型機(1月3日9時45分頃、筆者撮影)

通常は同じ離陸でも方面別に2本の滑走路を使い分けることが多い

 風向きによって利用する滑走路が決まるが、通常であれば離陸について、今日と同様の北風であれば、大阪や四国、沖縄方面など南へ向かう便がD滑走路、北海道や東北など北へ向かう便がC滑走路を使うことが多いが、C滑走路が使えないことから、離陸便は方面に関係なくD滑走路を使っている。風向きの影響もあり、実質2本の滑走路での運用となっている。

 着陸便も同様で通常は2つの滑走路を方面別に使用することが多いが、1月3日は方面に関係なく、ほぼA滑走路に着陸している(通常の北風では南からの便はA滑走路、北からの便はC滑走路が多い)。C滑走路が使えないことから、房総半島あたりで北から飛んでくる飛行機と南から飛んでくる飛行機のルートが合流する形になるが、合流する前に少し離れた場所(南からの便であれば伊豆大島の南など)で旋回している便が特に午後から増えている。北風ということで、1月3日については横風用のB滑走路は使わない運用になっている。

管制塔の指示で離陸の時間を遅らせている

 使える滑走路が制限されるなか、羽田空港の手前で旋回する飛行機の数が集中しないように空を管轄する管制塔からの指示で、全国各地の空港から羽田空港へ向かう国内線下り便を中心に、出発準備ができて離陸できる状況であっても、上空での混雑を回避するために、管制塔から離陸する時間を指定されることがある。

 機内アナウンスでも「管制塔からの指示で離陸時間が○時○分に指定されており、それまで滑走路手前で待機します」というアナウンスが流れることが多い。

 これは滑走路が閉鎖されていない時でも便が集中したり、天候が悪いときや風向きが変わって滑走路への進入方向が変わる場合などでも行われる措置であり、飛行機を頻繁に利用する人にとっては珍しいことではない。ただ今回は、終日滑走路が制限されていることもあり、特に到着便の多い午後以降、便が集中した結果、遅延便が大幅に増えているのだ。

羽田空港第1ターミナルのJAL国内線到着ロビー。写真は午前便の到着案内版となっているが、午後から1時間以上の遅延便が続出している(1月3日11時40分頃、筆者撮影)
羽田空港第1ターミナルのJAL国内線到着ロビー。写真は午前便の到着案内版となっているが、午後から1時間以上の遅延便が続出している(1月3日11時40分頃、筆者撮影)

Uターンラッシュのピーク日で便数を減らすのは難しい

 欠航便を増やせば、それだけ上空の混雑を緩和することもできるが、Uターンラッシュのピーク便で、更に2日の事故以降に欠航した便の乗客の振替も完全にできてないなかで、便数を減らすことは難しく、1つの滑走路における離着陸可能な便数を増やすことは安全上できないことから、遅延でも飛ばすしかない状況になっている。閑散期であれば計画減便も可能だが、現状では難しいだろう。

 羽田空港への着陸が遅延すれば、当然その機体を使用する予定の羽田発の便も遅延することになり、遅延の時間が更に伸びてしまうことになる。また羽田発着便でない場合でも、一部の便では羽田から来た飛行機を使用することもあるので注意が必要となる。

Uターンラッシュのピーク日であることから各便満席で羽田空港に到着している。遅延便も目立っている(羽田空港第2ターミナルのANA到着ロビーにて1月3日11時55分、筆者撮影)
Uターンラッシュのピーク日であることから各便満席で羽田空港に到着している。遅延便も目立っている(羽田空港第2ターミナルのANA到着ロビーにて1月3日11時55分、筆者撮影)

1月3日は24時以降の到着便も続出する見込み

 1月3日については、既に大幅遅延が決定的で、運用時間内(羽田空港や関西空港など24時間空港で滑走路が使える空港以外)の運航が難しいことから、夕方になって追加で欠航することを決めた便も出ている。

 1月3日19時現在、新千歳発羽田行きANA82便(定刻20時30分発)は、3時間20分遅れで新千歳発が23時50分発になっており、羽田空港到着は25時30分を予定している。その他のANA便、更にはJAL便やAIRDO便などでも24時以降に到着する便が複数出そうだ。

 4日以降は、3日に比べると遅延が減る可能性が高いが、通常時に比べると午後便を中心に遅延する可能性が考えられる。

夜便利用時は遅延時の地上交通機関の確保が問題

 1月3日については、現在の状況を考慮すると、大幅遅延の便によって23時以降、便によっては24時台・25時台に羽田空港に到着する便が続出することになるが、その場合に自宅やホテルまでの足を確保しなければならない。1月2日は成田空港では京成電鉄などが最終列車の後に臨時列車を走らせたが、羽田空港で同様の対応するかは未定であり、基本的にはタクシーのみになってしまう可能性もある。

 家族や友人などが車で迎えに来てもらったり、自家用車を羽田空港の駐車場に停めてあれば問題ないが、公共交通機関を利用予定の場合で、最終列車・最終バスがなくなる可能性もあるので注意が必要だ。運航が乱れている際には、タクシーも長蛇の列になることもある。朝の始発列車までターミナル内で過ごす人も出るだろう。通常時は第3ターミナルのみターミナルで深夜を過ごすことができるが、大幅遅延の便が多く出る際には第1ターミナル、第2ターミナル内を開放することが多い。

1月4日以降もC滑走路再開までは時間に余裕を持つ必要がある

 このような状況から、1月4日以降もC滑走路再開までは遅延する可能性が通常よりも高くなることから、現地で予定が入っている場合には早めの便の利用が賢明だ。航空券の変更ができない場合は便の前倒しが難しくなるが、変更できない航空券でも手数料なしでの変更・キャンセルに対応する特別対応を実施している。

羽田空港C滑走路には、海上保安庁の飛行機が原形を留めていない状況になっている。今後撤去が進められることになる(1月3日9時40分頃、筆者撮影)
羽田空港C滑走路には、海上保安庁の飛行機が原形を留めていない状況になっている。今後撤去が進められることになる(1月3日9時40分頃、筆者撮影)

特別対応の対象であれば、便の前倒しも検討

 特別対応の対象となっていれば、空席があることが条件となるが、便の前倒しも可能となる。1月3日18時55分時点での国内線各社の特別対応は以下の通りとなっている。情報は随時更新されることから、最新情報は各航空会社のホームページで確認していただきたい。

ANA:1月3日・4日の羽田発着国内線全便

JAL:3月31日までの国内線全便

スカイマーク:1月3日・4日の羽田発着国内線全便

AIRDO:1月3日・4日の国内線全便

ソラシドエア:1月3日・4日の羽田発着国内線全便

スターフライヤー:1月3日の羽田発着国内線全便

欠航した場合は空港のチェックインカウンター(専用カウンターが設置されている場合もある)もしくはホームページ上で便変更や払い戻し手続きが可能となっている(1月3日午前9時35分、筆者撮影)
欠航した場合は空港のチェックインカウンター(専用カウンターが設置されている場合もある)もしくはホームページ上で便変更や払い戻し手続きが可能となっている(1月3日午前9時35分、筆者撮影)

 斉藤鉄夫国土交通大臣は、1月3日の夕方、事故を起こした機体を撤去後、速やかにC滑走路の運用を再開させたいという意向を示したことから、数日中に再開する可能性が高いが、運用再開までは、今まで以上に最新の運航案内(各航空会社のホームページ及び羽田空港のホームページ)を確認することが望ましいだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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