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来年3月29日からの羽田空港発着アメリカ路線が出揃う。出張や弾丸旅行に使える便が増えて便利に

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
羽田空港国際線ターミナルは来年3月29日より第3ターミナルに名称変更(筆者撮影)

 ANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)は、来年3月29日から増枠となる羽田空港発着国際線の新路線及び増便を11月19日に発表した。

羽田国際線全体で50往復100便の日中時間帯の発着枠が増える

 国土交通省航空局が日中時間帯の羽田空港発着国際線全体で50枠(往復)を配分し、国内航空会社に25枠、海外航空会社に25枠が配分された。国内航空会社への25枠については、ANAに13.5枠、JALに11.5枠の配分となった。0.5枠ずつの配分となったインド線について、日中時間帯に出発し、深夜早朝時間帯に戻ってくることで0.5枠でありながらも往復の運航が可能であることから、実質ANAが14枠分、JALが12枠分が増えたと言ってもいいだろう。

 航空会社・国別の枠配分が9月2日に発表され、その後ANAとJALでは就航路線確定へ向けた調整が進み、11月19日に両社がそれぞれ具体的な路線名を発表した。

■ANAの発着枠配分における新規就航及び増便する都市(11月19日、ANA発表)

アメリカ:ワシントンDC、ヒューストン、ロサンゼルス(※増便)、サンフランシスコ、サンノゼ、シアトル

中国:青島、深セン

ロシア:モスクワ

オーストラリア:シドニー(※増便)

インド:デリー

イタリア:ミラノ

トルコ:イスタンブール

スウェーデン:ストックホルム

■JALの発着枠配分における新規就航及び増便する都市(11月19日、JAL発表)

アメリカ:ニューヨーク(※増便)、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、ホノルル(※2枠分)、

フィンランド:ヘルシンキ

ロシア:モスクワ

オーストラリア:シドニー

インド:デリー

中国:大連、上海浦東(※増便)

JALの2020年度首都圏路線拡充についての発表スライド(以下全て筆者撮影)
JALの2020年度首都圏路線拡充についての発表スライド(以下全て筆者撮影)

アメリカ路線は24往復48便が増便

 今回注目したいのはアメリカ線だ。アメリカ便への配分は、全体50枠(往復)のうち約半分の24枠が配分された。3月29日より都心上空の飛行が一部時間帯で解禁されることにより、羽田空港の発着枠が拡大されるが、空域の関係でアメリカの協力があったことで、発着枠が多く配分されたとも言われている。

 24枠が配分されたことで羽田からアメリカへの路線は6社で36往復72便(深夜早朝時間帯枠を含む)へと大幅増となる。既にデルタ航空は、成田から羽田へ完全移転することを発表しているほか、その他の航空会社も路線によって成田発着から羽田発着に移管する動きになっており、アメリカ線は成田発着よりも羽田発着の便数が多くなる。

 とはいえ、成田からの北米便も今後継続して運航される。2021年2月15日のJAL成田~シカゴ線が再就航した段階で29往復58便となる予定となっている。羽田・成田発着の来年3月29日以降のアメリカ便について航空会社別にまとめた。路線・便数は発表されている便が全て就航した場合の数字となり、特記事項がなければ1日1便(往復)での運航となる。

■ANAのアメリカ路線

羽田発着:9路線10往復

ニューヨーク、シカゴ、ワシントンDC、ヒューストン、ロサンゼルス(2便)、サンフランシスコ(※)、シアトル、サンノゼ、ホノルル

※サンフランシスコ線のみ就航日は後日発表

成田発着:5路線6往復

ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ホノルル(2便)

■JALのアメリカ路線

羽田発着:6路線8往復

ニューヨーク(2便)、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ホノルル(2便)

成田発着:8路線10往復

ボストン、サンフランシスコ、サンディエゴ、シアトル、ホノルル(2便)、コナ、シカゴ(※)、グアム(2便※)

※成田~シカゴ線は来年3月28日まで運航後、3月29日より羽田~シカゴ線に路線移管したのち、改めて2021年2月15日より運航開始予定。最終的には羽田・成田の両方から運航

※成田~グアム線は来年7月1日より2便に増便

■ユナイテッド航空のアメリカ路線

羽田発着:5路線5往復

ニューヨーク(※)、シカゴ、ワシントンDC、ロサンゼルス、サンフランシスコ

成田発着:7路線9往復

ニューヨーク(※)、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、デンバー、ホノルル、グアム(3便)

※ニューヨークはニューアーク空港発着(ANA・JALはJFK空港発着)

■デルタ航空のアメリカ路線

羽田発着:7路線7往復

ミネアポリス、アトランタ、デトロイト、ロサンゼルス、シアトル、ポートランド、ホノルル

■アメリカン航空のアメリカ路線

羽田発着:2路線3往復

ダラス、ロサンゼルス(2便)

成田発着:1路線1往復

ダラス

■シンガポール航空のアメリカ路線

成田発着:1路線1往復

ロサンゼルス

■ハワイアン航空のアメリカ(ハワイ)路線

羽田発着:2路線3往復

ホノルル(週18便)、コナ(週3便)

成田発着:1路線1往復

ホノルル

■大韓航空のアメリカ(ハワイ)路線

成田発着:1路線1往復

ホノルル

 ANAとJALで傾向が異なる点がある。ANAのアメリカ便は、羽田単独もしく羽田・成田両方からの発着で成田からのみの路線はないのに対し、JALは羽田単独・羽田・成田両方に加えて、ボストン、サンディエゴ、シアトル、コナ、グアムは成田からのみの発着となっている。

出張や弾丸旅行に特に使えるJALニューヨーク発羽田行き深夜便

 今回の新しい羽田発着アメリカ便で筆者が注目したいのはJALのニューヨーク発羽田行きの帰国便だ。JALの羽田~ニューヨーク便は1日2往復に増便されるが、増便される帰国便(JL3便)はニューヨークを深夜1時30分に出発して、羽田空港に朝4時45分に到着する(日付上は翌日着)。この便だと、ニューヨークでゆっくり夕食を食べたり夜のミュージカルを楽しんでから、そのままJFK空港へ向かって帰国便に乗ることができ、羽田に早朝到着となるので、そのまま朝から出勤することが可能になるのだ。また往路便も羽田18時30分発(ニューヨーク18時25分着)と組み合わせることで、現地での時間を最大限楽しみつつ、日本での出発直前、到着後の時間を有効的に使える。

ニューヨークのタイムズスクエア。23時頃にマンハッタンを出てから深夜1時30分発の便に乗ることが可能
ニューヨークのタイムズスクエア。23時頃にマンハッタンを出てから深夜1時30分発の便に乗ることが可能

ANAはロサンゼルス行きが2往復で体に負担が少ない便を新設

 ANAのアメリカ線ではロサンゼルス便が1日2往復に増便される。往路は羽田発21時05分発(ロサンゼルス15時05分着)と羽田発23時30分発(ロサンゼルス17時40分着)となる。両便共に仕事を終えてからでも間に合う便であり、ロサンゼルスに到着後にそのまま夕食に行ける時間帯であるとともに、アメリカ各都市への乗り継ぎにも便利な時間帯だ。また、帰国便がロサンゼルス17時05分発と深夜0時50分発。17時05分発であれば、羽田に翌日21時15分の到着となり、家でぐっすり寝てから翌日仕事に向かうことが可能だ。またロサンゼルスで夕食を食べてから0時50分発に乗って、羽田に朝5時に戻り、そのまま仕事をするという方法もあり、2便あることで選択肢が広がる。

羽田空港に駐機中のANA機
羽田空港に駐機中のANA機

ハワイ線も激戦に。4社で1日7往復体制に

 それ以外では、JALの羽田~ホノルル便が復活し、1日2往復で運航される。ANAは今年5月に就航した全520席で運航するウミガメの機体で人気の総2階建て飛行機エアバスA380型機「FLYING HONU」を成田~ホノルル線に投入し、加えてボーイング787型機で羽田~ホノルル線を1往復で運航しているなかで、JALが羽田から2便飛ばすことで両社の競争がより激しくなるだろう。

 

 ハワイ線関連では、デルタ航空もホノルル線を羽田発着に変更するほか、ハワイアン航空はホノルル線を週18往復に増便し、コナ線(ハワイ島)の週3往復を含めて1日3往復で就航するなど、羽田からのハワイ便だけで4社で1日7往復体制に強化される。

羽田~ホノルル便が1日2往復運航するJAL。羽田からのホノルル便は約3年ぶりの復活となる
羽田~ホノルル便が1日2往復運航するJAL。羽田からのホノルル便は約3年ぶりの復活となる

 今後、首都圏からのアメリカ路線は羽田が中心となるが、利用する航空会社や目的地によって羽田空港と成田空港を上手に使い分けするといいだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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