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ハワイ線、ANAのA380投入で変化。ハワイ線全体はJAL、東京~ハワイ線はANAが提供座席数トップ

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
ANAは、7月よりA380型機が2機体制で週10便になった(7月2日、筆者撮影)

 ANAが、成田~ホノルル線に5月24日から520人乗りのエアバスA380「FLYING HONU」を投入したことで日本からのハワイマーケットにも変化が。7月からはA380型機を従来の週3往復から週10往復に増やしたことで、提供座席数は大きくアップし、提供座席数のシェアを伸ばしている。

 今回、日本~ハワイ線を運航する7社へ取材し、便数・機材・座席数などのデータをまとめた。数字は日本発ハワイ行きの片道あたりの提供座席数・便数となる。

※臨時便や機材の大型化など日によって座席数が変わる場合もあるが、7月現在の通常機材での運航をベースにした数字となる。

ANAは週あたりの座席数が4月と比べて約1.5倍の7906席に

 A380導入前の今年4月時点のデータとの比較もしているが、ANAは4月時点では週あたり5166席の提供座席数だったのに対し、A380型機が週10便化した7月現在では週あたり7906席となり、4月に比べると約1.5倍(週2440席増)の提供座席数となった。

 ANAによると5月24日の就航以降、A380で運航した便のほぼ全便が500人以上(座席数520席)という高い搭乗率を記録し、6月のANAハワイ線全体の搭乗率は95%を超えるなど、ANAのA380に乗ってハワイへ行きたいという現象が起きている。

ANAのA380型機「FLYING HONU」の2号機はエメラルドグリーンの特別塗装機(筆者撮影)
ANAのA380型機「FLYING HONU」の2号機はエメラルドグリーンの特別塗装機(筆者撮影)

 週あたり7906席の提供座席数となったことでANAのハワイ線におけるシェアが拡大しているが、今回、「日本~ハワイ線」「東京~ハワイ線」「東京~ホノルル線」と3つに分けてシェアを検証することにした。

※日本は成田、羽田、関西、中部、福岡、新千歳の6空港。東京は成田、羽田の2空港。ハワイはホノルル、コナの2空港と定義

ハワイ線全体ではJALが提供座席数シェアNO1を継続

 まずは日本~ハワイ線から検証していく。地方からのホノルル便、東京からのハワイ島・コナへの便も含めた、日本からハワイへの全路線を集計した数値から検証した。

各社からのデータを基に筆者作成
各社からのデータを基に筆者作成

 ハワイ線全体のシェア第1位はJALがその座を守った。ANAが大型機を投入したことで若干シェアを下げることになったが、27.7%(4月時点では28.2%)のシェアを維持した。成田からだけでなく、関西や中部からのホノルル直行便、また2017年に復活した成田~コナ線など合計4路線を飛ばし、成田~ホノルル線は1日4便体制ということもあり、日本~ハワイを結ぶ路線においての提供座席数は第1位の週あたり10591席となった。便数も週49便と最多となっている。

 第2位は、日本路線を積極的に強化しているハワイアン航空。現在、羽田~ホノルル、羽田~コナ、成田~ホノルル、関西~ホノルル、新千歳~ホノルルの5路線を運航し、11月27日からは福岡~ホノルル線にも週4便で運航を開始する。7月時点でのハワイアン航空のシェアは22.5%。日本路線は全便エアバスA330型機(278席)を使って週31便体制で運航している。ハワイアン航空は、2018年からコードシェア・マイル提携を開始し、今年度中には、JALと共に更なる提携強化を目指した共同事業(ジョイントベンチャー)をスタートさせることになるが、JAL+ハワイアン航空を合わせたシェアは50.2%で、両社で日本~ハワイ線の半分を超える座席を提供していることになる。

 そして第3位がANA。7月時点のシェアは20.6%。JALとは7%近い差がある。だが、エアバスA380型機の投入前の4月時点では13.8%で第4位(4月時点の第3位はデルタ航空)だったことを考えると、A380投入で7%近いシェアを増やしたことになる。ANAは現在、成田~ホノルル線を1日2便(うち週10便がA380型機)、羽田~ホノルル線を1日1便(ボーイング787-9型機)運航している。

 第4位のデルタ航空は、成田だけでなく関西や中部からホノルルへの直行便を毎日運航していることから、12.3%のシェアとなっている。

日本からのハワイ路線全体のシェアNO1はJAL(2019年5月筆者撮影、以下同じ)
日本からのハワイ路線全体のシェアNO1はJAL(2019年5月筆者撮影、以下同じ)
日本路線に積極的なハワイアン航空。成田、羽田、関西、新千歳の4空港からハワイ便を運航
日本路線に積極的なハワイアン航空。成田、羽田、関西、新千歳の4空港からハワイ便を運航

東京~ハワイ路線では、シェアNO1はANAに

 次に東京(成田、羽田)~ハワイ路線(ホノルル、コナ)で検証する。首都圏からハワイへ出かける場合のシェアとなる。

各社からのデータを基に筆者作成
各社からのデータを基に筆者作成

 ANAが東京~ホノルル線に路線を集中させていることが数字としても表れている。ハワイ路線を東京に特化し、成田からA380型機を就航させたことで、東京からのハワイ路線の提供座席数のシェアは30.0%と初のトップに立った(4月時点では21.9%でJAL、ハワイアン航空に次ぐ3位)。

 地方からの利用者は成田もしくは羽田での乗り継ぎで対応している。この点は東京以外の都市からもホノルルへの直行便を飛ばしているJALやハワイアン航空、デルタ航空とは異なる点だ。JALとハワイアン航空が運航するコナ線も含めた数字でのトップであり、首都圏からハワイへの提供座席数はANAがNO1となったことは大きなニュースだろう。

 JALとハワイアン航空は、ANAが飛んでいない自然溢れるハワイ島のコナへの便を運航し、JALは成田~コナを1日1便、ハワイアン航空は羽田~コナを週3便で運航している。コナ線を含めた東京~ハワイ線のシェアはJALが27.5%、ハワイアン航空が22.1%のシェアで、両社を合わせると49.6%となりANAを上回る。コナへの単純往復、コナとホノルルの2都市周遊が可能なのはJALとハワイアン航空のみで、両社便を組み合わせた航空券の購入が可能で、両社の提携により、便の選択肢が増えるなど旅のバリエーションが広がっている。

東京~ホノルル線では、ANAのシェアが32.7%でトップ

 最後に東京~ホノルル線で比較する。ハワイを訪れる多くの旅行者がワイキキのあるホノルルを目指す傾向にある。実際、2018年にハワイ州を訪れた日本人157万のうち9割以上の148万人がオアフ島(ホノルル)を訪問している。そこで首都圏(成田、羽田)からホノルルへの路線のみで検証した。

各社からのデータを基に筆者作成
各社からのデータを基に筆者作成

 上記でも書いたが、ANAは成田から2便、羽田から1便の合計3便しかないが、週10便のA380導入効果は大きく、提供座席数のシェアは32.7%となり、JALの24.2%、ハワイアン航空の20.7%を引き離すシェアとなった。4月時点ではJALが27.3%でANAが24.1%だったが、A380投入でANAがJALを逆転した。改めてA380型機の520席のインパクトの大きさを感じた。

 JALは成田~ホノルル線を1日4便体制で運航。うち3便を中型機のボーイング767-300型機で運航し、夏休みや年末年始などの繁忙期は機材を大型化することで需要増に対応しているが、それでもANAの座席数を超えるのは難しい状況になっている。またハワイアン航空は、羽田からホノルルへ週10便飛んでおり、出発時刻も遅いことから定時まで仕事をしてからもそのまま利用できる時間帯になっていることで人気がある。

この2~3年のハワイ線の変化

 ここまでは直近の情報を中心に取りあげたが、この2~3年でも日本~ハワイ路線でいくつかのニュースがあった。その中でも代表的なのがチャイナエアラインの成田~ホノルル線からの撤退。ハワイ最安値の航空会社としてファンも多かったのだが、2018年10月末で成田~ホノルル線の定期便を運休。運休後も年末年始などの繁忙期に臨時便運航はあったが、2019年は現時点で運航はない。またデルタ航空も2017年12月まではジャンボ機(ボーイング747-400型機)が投入されていたが、退役を機にボーイング767-300型機での運航となった。

 関西空港からは2017年にエアアジアXとスクートのLCC(格安航空会社)2社が相次いで関西~ホノルル線を就航した。エアアジアXは1日1便で運航しているなか、直近の平均搭乗率は90%を超えるなど絶好調だ。だが週4便だったスクートは、搭乗率が伸び悩み今年のゴールデンウィークをもって運休となった。また福岡空港からは今年5月8日にデルタ航空が路線撤退したが、冒頭でも触れたがハワイアン航空が11月27日より週4便で福岡~ホノルル線の運航を開始する。

 ユナイテッド航空と大韓航空も成田~ホノルル線を1日1便運航している。大韓航空によると、8月9日~16日までは368席仕様のボーイング747-8型機を投入する。また、ユナイテッド航空はANAと共同事業(ジョイントベンチャー)をしていることで、ANA運航便・ユナイテッド運航便を組み合わせることも可能となっている。

ワイキキビーチ沿いのホテルは、宿泊代金が高騰しているにも関わらず、宿泊稼働率は高い
ワイキキビーチ沿いのホテルは、宿泊代金が高騰しているにも関わらず、宿泊稼働率は高い

いかに高い搭乗率を出すことができるのかに注目

 今回の検証は、提供座席数ベースでの比較であり、実際の搭乗者の数ではなく、搭乗率によって利用者数のシェアは変わることになる。路線、価格、時間帯、機内サービス、利便性、マイレージ、空席状況などを総合的に考えて、ハワイへの旅行者は航空会社を選択することになるが、ANAがA380を投入したことでハワイマーケットが大きく変わったことは間違いなさそうだ。

オアフ島の中でも綺麗なビーチとして知られているラニカイビーチ
オアフ島の中でも綺麗なビーチとして知られているラニカイビーチ

7月時点での日本発着ハワイ路線の航空会社別一覧

■JAL(日本航空)

・成田~ホノルル(1日4便)

ボーイング767-300型機 3便:199席(C24席、Y175席)

ボーイング787-9型機 1便:239席(C28席、PY21席、Y190席)

・成田~コナ(1日1便)

ボーイング767-300型機 1便:199席(C24席、Y175席)

・関西~ホノルル(1日1便)

ボーイング787-9型機 1便:239席(C28席、PY21席、Y190席)

・中部~ホノルル(1日1便)

ボーイング787-9型機 1便:239席(C28席、PY21席、Y190席)

■ANA(全日本空輸)

・成田~ホノルル(1日2便)

エアバスA380型機 週10便:520席(F8席、C56席、PY73席、Y383席)

ボーイング787-9型機 週4便:246席(C40席、PY14席、Y192席)

・羽田~ホノルル(1日1便)

ボーイング787-9型機 1便:246席(C40席、PY14席、Y192席)

■ハワイアン航空

・成田~ホノルル(1日1便)

エアバスA330型機 1便:278席(C18席、PY68席、Y192席)

・羽田~ホノルル(週11便)

エアバスA330型機 週11便:278席(C18席、PY68席、Y192席)

・羽田~コナ(週3便)

エアバスA330型機 週3便:278席(C18席、PY68席、Y192席)

・関西~ホノルル(1日1便)

エアバスA330型機 1便:278席(C18席、PY68席、Y192席)

・新千歳~ホノルル(週3便)

エアバスA330型機 週3便:278席(C18席、PY68席、Y192席)

※PY:エクストラ・コンフォート

■ユナイテッド航空

・成田~ホノルル(1日1便)

ボーイング777-200型機 1便:269席(C48席、PY113席、Y108席)

※PY:ユナイテッド・エコノミープラス

■デルタ航空

・成田~ホノルル(1日1便)

ボーイング767-300型機 1便:225席(C25席、PY29席、Y171席)

・関西~ホノルル(1日1便)

ボーイング767-300型機 1便:225席(C25席、PY29席、Y171席)

・中部~ホノルル(1日1便)

ボーイング767-300型機 1便:225席(C25席、PY29席、Y171席)

※PY:デルタ・コンフォートプラス

■大韓航空

・成田~ホノルル(1日1便)

エアバスA330型機 1便:276席(C24席、Y252席)

■エアアジアX

・関西~ホノルル(1日1便)

エアバスA330型機 1便:377席(C12席、Y365席)

※日によって機体が変更されることもあるので注意

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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