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ANAが羽田~ウィーン線を来年2月に就航。ヨーロッパ直行便の路線と提携関係はこうなる

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
ANAの羽田~ウィーン線はボーイング787-9型機で運航する(筆者撮影)

 ANA(全日本空輸)は、来年2月17日より羽田~ウィーン線に就航することを発表した。ANAがオーストリアに乗り入れるのは17年ぶりとなる。羽田発は深夜1時55分に出発してウィーンに朝6時に到着。ウィーン発は午前11時50分に出発して羽田に翌朝の6時55分に到着するスケジュールになっている。仕事を終えて羽田空港から出発することが可能だ。

ウィーンは乗り継ぎ時間が短い空港として知られる

 ウィーンはヨーロッパの中でも乗り継ぎ時間が短くて済む空港として知られている。ウィーンを拠点とするオーストリア航空では25分で乗り継げるようになっているのが特徴となっている。ANAはオーストリア航空とコードシェア便及び共同事業(ジョイントベンチャー)を行っていることから、ウィーンで乗り継ぐ場合において、正式な発表はないがANAのウィーン便においても30分での乗り継ぎが可能となる可能性が高い。特にウィーンの到着が朝6時ということで、ウィーンを朝7時前後に出発するヨーロッパ内路線が多く、多くの都市に朝9時前に到着することが可能となる。

 ウィーン以外で日本からの直行便がある空港で乗り継ぎ時間が短くて済む空港としては、スイス インターナショナル エアラインズ(以下SWISS)が拠点とするチューリッヒ空港やフィンエアーが拠点とするヘルシンキ空港などがある。両空港共に30~45分程度の乗り継ぎ時間で乗り換えができることで乗り継ぎ客からの評価は高い。ロンドンやパリなどにおいては最終目的地となる利用者が多いが、その他の日本からの乗り入れ空港においては、最終目的地の利用者がいる一方、乗り継ぎで他の都市へ向かう比率も高い。その為、ヨーロッパ中都市では乗り継ぎ時間を短くして乗り継ぎ客を獲得する戦略を取る航空会社も多い。

 筆者もウィーン空港を5回程度利用したことがあるが、フランクフルト空港やロンドン・ヒースロー空港、パリ・シャルル・ド・ゴール空港などと比べると歩く距離が格段に短く、乗り継ぎにはベストな空港であることは間違いない。30分乗り継ぎをしたこともあるが特段問題なく乗り継げた。時間に余裕があれば、空港から30分間隔で運転されているシティエアポートトレイン(CAT)を使うことで、市内中心部のウィーン・ミッテ駅まで16分で行けるので、東京へ戻る前日にウィーンに入り、有名なザッハトルテを食べて、夜はオペラ鑑賞してウィーンで1泊してから日本へ戻るのもいいだろう。コンパクトな街並みなので1泊でもウィーンだけなら楽しめる。また、RJ(レイルジェット)でウィーン空港とウィーン中央駅間を15分でアクセスできる鉄道もある。

ウィーン空港と市内中心部を結ぶシティエアポートトレイン(以下全て筆者撮影)
ウィーン空港と市内中心部を結ぶシティエアポートトレイン(以下全て筆者撮影)
ウィーン国立オペラ座
ウィーン国立オペラ座
ウィーンで多くの観光客が訪れるホテルザッハーのチョコレートケーキ「ザッハトルテ」
ウィーンで多くの観光客が訪れるホテルザッハーのチョコレートケーキ「ザッハトルテ」

日本~ヨーロッパ便は各社8割以上の搭乗率で推移

 最近、日本~ヨーロッパへの便の搭乗率が高い。ヨーロッパでのテロ不安が解消しつつあることで観光客も堅調だが、それ以上にビジネス需要が好調だ。ANAは今年4月~8月のヨーロッパ線の平均搭乗率は85%となっており、JALも8割強の高い搭乗率で推移している。ヨーロッパ系の航空会社でも8割以上の航空会社がほとんどだ。10月15日に都内でレセプションを行ったアリタリアのファビオ・マリア・ ラッツェリーニCCOも直近の日本~イタリア線の平均搭乗率は86%と話した。

日本に来日したアリタリアのファビオ・マリア・ ラッツェリーニCCO。日本路線の平均搭乗率は86%でビジネス渡航を中心として長距離路線に力を入れていきたいと話した(2018年10月15日東京都内)
日本に来日したアリタリアのファビオ・マリア・ ラッツェリーニCCO。日本路線の平均搭乗率は86%でビジネス渡航を中心として長距離路線に力を入れていきたいと話した(2018年10月15日東京都内)

 高い搭乗率は航空会社にとっては収益の部分においてプラスになるが、利用者にとってはマイレージの席が取れないであったり、繁忙期に運賃がアップしてしまうなどのデメリットもあり、絶対的な座席数を増やさない限り厳しい状況になっている。JAL(日本航空)も昨年10月に羽田~ロンドン線を1日2往復に増便したが、2便共に高い搭乗率をキープしている。そして共同事業(ジョイントベンチャー)を行っているブリティッシュ・エアウェイズは来年4月1日(ロンドン発は3月31日)より関西~ロンドン線を週4便で復活させることを発表した。

ANAやJALは提携関係も含めてネットワーク強化をしている

 ANAやJALの最近の傾向としては、自社運航便を増やす一方(ANAはデュッセルドルフ、ブリュッセル、JALはヘルシンキ)、提携航空会社を活用しコードシェア便(共同運航便)でのネットワーク拡大にも力を入れている。

 10月28日にはANAとアリタリア(イタリア)の提携が開始され、10月15日からコードシェア便航空券(アリタリア運航の成田~ローマ、成田~ミラノなど)の販売が開始された。提携がスタートする10月28日以降はアリタリア運航便利用時にもANAマイレージクラブへの積算も可能となる。ANAマイレージクラブのマイルを使ったアリタリア便の特典航空券は10月28日時点ではスタートしないが、準備ができ次第開始する予定となっている。JALは2016年10月からイベリア航空(スペイン)が運航する成田~マドリードのコードシェア便を開始している。

アリタリアとのコードシェア便について説明するANAの藤村修一取締役専務執行役員(2018年10月15日東京都内)
アリタリアとのコードシェア便について説明するANAの藤村修一取締役専務執行役員(2018年10月15日東京都内)
ANAとコードシェア便提携を開始するアリタリアは11月上旬より新制服の着用を開始する。ANAの客室乗務員との記念撮影(2018年10月15日東京都内)
ANAとコードシェア便提携を開始するアリタリアは11月上旬より新制服の着用を開始する。ANAの客室乗務員との記念撮影(2018年10月15日東京都内)

日本~ヨーロッパ線の全路線一覧

 現在の日本~ヨーロッパ線(直行便)の一覧をまとめた。特記事項がない場合は1日1往復で、季節によって変更がある場合もある。

■ANA

羽田~ロンドン、パリ、フランクフルト、ミュンヘン

(羽田~フランクフルト線のみ1日2往復)

成田~デュッセルドルフ、ブリュッセル

成田~ウィーン(2019年2月17日より運航開始)

■JAL

羽田~ロンドン、パリ

(羽田~ロンドン線のみ1日2往復)

成田~フランクフルト、ヘルシンキ、モスクワ

■スターアライアンス加盟航空会社便(ANAマイレージクラブに積算・特典利用が可能)

ルフトハンザ:羽田~フランクフルト、羽田~ミュンヘン、関西~フランクフルト(2019年3月31日から関西~ミュンヘン線に変更)、中部~フランクフルト

SWISS:成田~チューリッヒ

オーストリア航空:成田~ウィーン(夏季期間のみ運航で週5往復)

スカンジナビア航空:成田~コペンハーゲン

LOTポーランド航空:成田~ワルシャワ(週5往復)

ターキッシュエアラインズ:成田~イスタンブール

■ワンワールド加盟航空会社便(JALマイレージバンクに積算・特典利用が可能)

ブリティッシュ・エアウェイズ:羽田~ロンドン、成田~ロンドン、関西~ロンドン(2019年4月1日より※ロンドン発は3月31日より)

フィンエアー:成田~ヘルシンキ(1日2往復)、関西~ヘルシンキ、中部~ヘルシンキ、福岡~ヘルシンキ(夏季期間のみ運航で週2~3往復)

イベリア航空:成田~マドリード(週5往復)

■スカイチーム加盟航空会社便

アリタリア(10月29日よりANAとコードシェア便及びマイレージ提携):成田~ローマ、成田~ミラノ

エールフランス航空(JALとマイレージ提携):羽田~パリ(週12往復)、成田~パリ、関西~パリ

KLMオランダ航空(日系航空会社との提携はなし):成田~アムステルダム、関西~アムステルダム

アエロフロート(JALとの間で昨年11月に包括的業務提携を結び、今後コードシェア便やマイレージ提携を開始させる計画):成田~モスクワ

ANAはヨーロッパ7都市に就航へ

 ANAは自社便として6都市に就航しており、来年2月のウィーン線就航でヨーロッパ7都市目となる。提携関係ではルフトハンザ、SWISS、オーストリア航空とは日本~ヨーロッパ線の収益を一括管理する共同事業(ジョイントベンチャー)を展開しているほか、ANAが加盟する航空連合「スターアライアンス」の中で、スカンジナビア航空、LOTポーランド航空、ターキッシュエアラインズ、更にアライアンス外の独自提携として今月末からアリタリア航空との提携がスタートする。

 JALは自社便として4都市に就航している。提携関係ではブリティッシュ・エアウェイズ、フィンエアー、イベリア航空で共同事業(ジョイントベンチャー)を展開しているほか、マイレージ提携のみとなるがエールフランス航空便でマイル積算や特典航空券の利用が可能だ。ロンドンにおいては、JAL便とブリティッシュ・エアウェイズ便合わせて東京(羽田・成田)から1日4便、来春からは関空からも就航する。またヘルシンキもJAL便とフィンエアー便を合わせて成田から1日3便就航し、往路と復路で両社を組み合わせた旅程も可能だ。将来的にロシアのアエロフロートとの提携も開始する予定となっている。

 特にビジネス渡航においては中東やアジアで乗り換えるよりも圧倒的に時間が短い直行便が好まれるなか、マイレージを中心に提携関係を見ながら便を選ぶ傾向がより増えることになりそうだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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