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WBC決勝が最も盛り上がった瞬間はいつか

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

2023年3月22日,ワールドベースボールクラシックが,14年ぶりの日本の優勝で幕を閉じました.

日本は平日の昼間であったにもかかわらず大いに盛り上がったようで,Twitter上でもWBCに関する話題で盛り上がりました.

そこで,Twitter上のWBCあるいは#WBCが含まれるツイートを収集して分析を試みました.

その結果,1,208,795アカウントによる2,980,539ツイートが取得されました.

言語の分析

まずこれらツイートがどこの国のものだったのかを分析してみました.実際にどこからツイートされたかは分かりませんが,ツイートの言語を分析してみました.

その結果がこちら.

ツイート言語の割合(筆者作成)
ツイート言語の割合(筆者作成)

全体の91%が日本語のツイートであることが分かりました.

もともとツイッターのユーザは日本人が多いことは分かっていますが,WBCに関しては特に日本人が多かったようです.

とはいえ,アメリカではWBCという言葉や#WBCというハッシュタグが使われていなかったんじゃないかという気はしますので,今回分析したデータは日本人のものが多かった程度にご理解ください.

2023/03/25追記:

念のため公式ハッシュタグ #WorldBaseballClassic について調べた結果,日本語が48%,英語が37%でやはり日本語のほうが多いことがわかりました.

#wbcと併せると80%が日本語でしたのでやはり日本人のツイートが多かったことが分かります.

ただし,ツイッターは日本人の利用者が多いなど,様々な事情がありますので,「WBCはアメリカより日本で盛り上がっていた」と言っているわけではないのでご注意ください.

一分当たりのツイート

さて,今回の試合時間中での一分当たりのツイート数はこちらの通り.

一分ごとのツイート数(筆者作成)
一分ごとのツイート数(筆者作成)

この結果から,一番盛り上がったのはやはり優勝直後であることが分かりました.

一分間に4万以上のツイートが投稿されたということで,かなり盛り上がったといえるのではないでしょうか.サッカーワールドカップの日本対スペインで日本が勝利したときの一分間のツイートが最大で1万件程度だったので,サッカーワールドカップの4倍盛り上がったようです.さすが優勝というインパクトはすごい.

2023/03/23 13:30追記

数字を見間違って40倍としてしまっていました。正しくは4倍。

盛り上がったのはいつか?

さて,次に盛り上がったタイミングを見てみましょう.ここでは,日本語と英語を分けて,それぞれの一分当たりのツイート数を最大を1に正規化して違いを見てみたいと思います.なお,リツイートは実際に盛り上がった瞬間と時差が生じると考えられるため,オリジナルツイートのみを対象にしました.

その結果がこちら.

一分当たりのオリジナルツイートの盛り上がり.日米別(筆者作成)
一分当たりのオリジナルツイートの盛り上がり.日米別(筆者作成)

青が日本語,オレンジが英語です.

これを見ると,日本語と英語で盛り上がった瞬間が微妙にずれていることが分かります.それぞれ盛り上がった瞬間を見ていきましょう.

8:46

英語のツイートが盛り上がります.これはアメリカのターナーがソロホームランを打った瞬間です.ワードクラウドにも英語が多く混じっています.

ターナー先制の瞬間のツイートのワードクラウド(筆者作成)
ターナー先制の瞬間のツイートのワードクラウド(筆者作成)

8:57

日本のツイートが盛り上がります.村神様がソロホームランを打ったことで完全復活を喜ぶツイートが多数投稿されています.

村神様復活のワードクラウド(筆者作成)
村神様復活のワードクラウド(筆者作成)

9:45

岡本のホームランに日本のツイートが再び盛り上がります.

おかもと以外の語彙力を失った人々のワードクラウド(筆者作成)
おかもと以外の語彙力を失った人々のワードクラウド(筆者作成)

11:15

ダルビッシュがシュワーバーにホームランを浴びた瞬間,英語のツイートが盛り上がりました.

Schwarberなワードクラウド(筆者作成)
Schwarberなワードクラウド(筆者作成)

11:32

大谷がマウンドに上がりました.この瞬間は日本語でも英語でも大きく盛り上がっています.Ohtaniもワードクラウドに入ってきています.

最終回!(筆者作成)
最終回!(筆者作成)

11:42

トラウトvs大谷という激熱な展開に英語日本語ともに盛り上がってきました.

漫画のような展開に日米どちらも固唾を飲んで見守るワードクラウド(筆者作成)
漫画のような展開に日米どちらも固唾を飲んで見守るワードクラウド(筆者作成)

11:44

試合が終了して,日本語英語ともに最も盛り上がりました.英語でもCongratsと入っているあたりはスポーツマンシップを感じます.

感動渦巻くタイムラインのワードクラウド(筆者作成)
感動渦巻くタイムラインのワードクラウド(筆者作成)

おわりに

というわけで,WBC決勝時のツイートの様子を見てみました.

放送の時間帯の違いはあるものの,サッカーのときと比べて4倍近いツイートが投稿されていたということで,世界一というドラマティックな展開はやはり盛り上がることが分かりました.

また,得点を決めたときに一気に盛り上がるのはどのスポーツでも一緒ですし,ツイートの内容を見ても,点を決めた人の名前を叫ぶという形式は野球もサッカーもあまり変わらないようです.

さて,WBCが次に行われるのは3年後のようです.また今回のようなドラマがあることを楽しみにしたいと思います.そして,そのときはまた盛り上がりの分析をしてみたいものです.

しかし,その時までTwitterは存在するのだろうか?それが最大の問題です.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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