2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻しました.

3月7日現在いまだ侵攻は続いており,一般市民にも多くの死傷者が出ているということで早期の収束を願うばかりです.

ロシア側はウクライナへの侵攻の正当性として,ウクライナ政権はネオナチ政権であるという主張をしているようです.

プーチン氏は安全保障会議で「我々はまさにネオナチと戦っている」と述べ、ウクライナ政府側をネオナチ扱いした。

https://mainichi.jp/articles/20220304/k00/00m/030/061000c

日本のマスメディアでこの主張を入れているところはあまりないようですが,ソーシャルメディア上ではこの主張に沿ってロシアの侵攻を正当化しているグループもあるようです.

ロシアによるウクライナ侵攻について、日本では「単なる思い込みによる誤解」から「めちゃめちゃな陰謀論」まで、ツイッターのみならず、ウェブのメディアやテレビのワイドショー、そして野党の政治家までが、大量におかしな情報をばらまいている。

「ウクライナが親ロシア住民を大量虐殺した」「ウクライナ政府はネオナチ」といった荒唐無稽な陰謀論。

https://toyokeizai.net/articles/-/536199

そこで,ツイッター上ではどのようなアカウントがロシアの主張通りウクライナ政府はネオナチであるというツイートをしているのか調べてみました.

クラスタリング

データとしては,ウクライナ関連語(ウクライナ,ロシア,プーチン等)+ナチでツイッター検索したものを利用しました.利用データは2022年1月1日~2022年3月5日までの291,852ツイートです.

もちろんこの中にはロシアの主張とは無関係なツイートやプーチン大統領の主張について言及したツイートもあるため,この中から「ウクライナ政府はネオナチ」という主張のツイートを取り出す必要があります.

そこで,リツイートユーザに基づくクラスタリング手法を使ってツイートの分類を行い,「ウクライナ政府はネオナチ」という主張をしているクラスタを取り出せるか確認してみました.

その結果がこちら.

ウクライナ関連語+ナチツイートのクラスタリング結果(著者作成)
ウクライナ関連語+ナチツイートのクラスタリング結果(著者作成)

大きく4つのクラスタが取得できました.

では,それぞれのクラスタの特徴を見てみましょう.

クラスタの分析

Aのクラスタは最も大きいクラスタで,ツイート内容はロシアの侵攻について言及したものでした.148ツイートが40,161アカウントによって72,263回拡散されました.

Bクラスタは戦争に反対するツイート群で,92ツイートが18,458アカウントによって31,622回拡散されました.ナチスという単語は戦争の過去の事例として出てきていました.

Cクラスタはロシアを批判するツイート群で,70ツイートが13,824アカウントによって20,495回拡散されました.こちらはロシアの「ウクライナはナチス」発言への批判が多くありました.

最後にDクラスタは「ウクライナ政府はネオナチである」というロシアの主張を拡散しているツイート群で,228ツイートが10,907アカウントによって30,342回拡散していました.なお,ウクライナのネオナチ部隊に関するツイート群もここに含まれます.

以上をまとめた図がこちら.

各クラスタの拡散数と拡散したアカウント数(著者作成)
各クラスタの拡散数と拡散したアカウント数(著者作成)

1万以上のアカウントがロシアの主張を拡散していたのは個人的には意外でした.ツイート拡散数も3万回以上と比較的多いようです.

ただし,1アカウント当たりの拡散数がA~Cが1.4~1.7回くらいなのに対して,クラスタDだけ2.8と大きいようです(下図参照).

1アカウント当たりの平均拡散数(著者作成)
1アカウント当たりの平均拡散数(著者作成)

クラスタDの正体

では,クラスタDの拡散しているアカウントはどのようなアカウントなのでしょうか.そこで,過去のツイート群と比較して,クラスタDのツイートを拡散したアカウントがどのような話題を拡散していたのかを調べてみました.

過去のツイートとの比較(著者作成)
過去のツイートとの比較(著者作成)

まず,最近陰謀論といえばこれ,というQアノン関係ですが,クラスタDのアカウントの46.9%がQアノン関連のツイートも拡散していたことが分かりました.ちなみにクラスタBのアカウントもそこそこQアノン系を拡散していますが,クラスタBにはいわゆるネトウヨアカウントが多く含まれているようです.

次に,ワクチン接種についてみてみると,他のクラスタでは80%以上のアカウントがワクチン接種関係の話題を拡散しているのに対して,クラスタDだけ68.4%と少なめです.

一方,「ウクライナ政府はネオナチ」という情報を拡散したアカウントの87.8%が反ワクチン関連ツイートを拡散していました.クラスタDのほとんどの方が反ワクチン系だったということになります.ただし,実はこれの逆は成り立ちません.反ワクチン系のツイートを拡散したアカウントのうち,クラスタDに含まれるアカウントは4%にすぎませんので,反ワクチン=クラスタDという訳ではないことにご注意ください

ちなみに,クラスタA~Cも結構反ワクチン関連ツイートを拡散しているのが気になりますが,そもそも「ナチス」という強い言葉を使うこと自体が一定の特性を持ったアカウントということができるのかもしれません.

最後に,ロシア系ニュースサイト,「スプートニク日本ニュース」のツイートを拡散しているアカウントとの関係を見てみたのですが,これについてはほとんど被りがないことが分かりました.

まとめ

「ウクライナ政府はネオナチ」というロシアの主張に沿ったツイートを拡散しているアカウントを分析したところ,これらのアカウントは反ワクチン系のツイートも拡散しているアカウント群であることが分かりました.

この記事は,どの意見が正しいということについて結論を述べるものではありませんが,ロシアによるウクライナ侵攻とワクチン接種という直接的には関係のない二つの事象について特徴的なツイートを拡散するアカウント群が重なっているということには一定の意味があるのではないかと思います.

なお,この結果に疑問点がある方は,ぜひご分析していただければと思います.分析が不十分な点などもある気はしますので,皆さまのお力添えを待っています.Web Tweet Crawlerを使えば比較的お手軽にデータを収集できますので,お試しください.