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藤井聡太二冠の昇級の行方は?ー第79期順位戦B級1組~C級2組中間展望ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
(写真:森田直樹/アフロ)

 第79期名人戦・順位戦は、B級1組~C級2組の各クラスで年内の対局を全て終えた。

 藤井聡太二冠(18)や永瀬拓矢王座(28)の昇級なるか?

 各クラスの途中経過と注目ポイントをまとめた。

B級1組

記事中の画像作成:筆者
記事中の画像作成:筆者

 B級1組は全13回戦のうち、10回戦まで終えている。

 昇級争いの上位につけるメンバーを表にまとめた(下記の各クラスも同様)。

 昇級は2名だ。

 注目の永瀬王座は現在7勝3敗で勝数のうえでは2番手につけているが、1戦消化が多いため郷田真隆九段(49)が11回戦(永瀬王座は抜け番)で勝利すると3番手に落ちる。

 永瀬王座は24日に行われた山崎隆之八段(39)との直接対決で敗れたことで、昇級へ暗雲立ち込めている。

 昇級争いは混戦模様だ。1敗で単独首位の山崎八段は最終戦で昇級を争う郷田九段との直接対決を残しており、11・12回戦の星次第ではその一戦が昇級をかけた一騎打ちになる可能性もある。

 上位陣が星を落としてもつれる展開になれば、木村一基九段(47)にもチャンスがまわってくるかもしれない。

 24日に行われた行方尚史九段(46)との対戦では0時を過ぎてから千日手となり、指し直し局が終わったのは午前3時過ぎ。死闘を制したことで流れはいい。

 今期から降級枠が3名に増えた残留争いも熾烈だ。

 いまだ2勝の深浦康市九段(48)と行方九段はかなり厳しい状況を迎えている。A級在籍も長いこの両者が降級の危機にひんしているあたり、B級1組が「鬼の住処」と言われる所以だ。

B級2組

 B級2組より下のクラスの昇級は3名だ。

 注目の藤井聡太二冠はここまで全勝できている。内容も盤石といっていい。

 1敗者が2名しかいないため、残り3戦で2勝すれば昇級が決まる。

 9回戦の相手は、還暦近くでも活躍を続け、6勝2敗で昇級争いに加わっている中村修九段(58)だ。

 中村九段含めて残り3戦も楽な相手ではないが、今年度も8割台の勝率をキープしている藤井二冠がここから崩れることは考えにくい。

 B級1組への昇級の可能性はかなり高い。

 2番手の横山泰明七段(40)と3番手の佐々木勇気七段(26)は、9回戦で直接対決が組まれている。順位がいい横山七段はここで勝てば昇級はほぼ確定的となる。

 佐々木七段は10回戦でも昇級を争う大石直嗣七段(31)との直接対決が組まれており、昇級争いのキーマンとなっている。

 今期から昇級枠が3名に増えたことで、現在2敗の3名、そして星が割れると4勝3敗の谷川浩司九段(58)までチャンスがありそうだ。

C級1組

 C級1組の昇級は3名だ。

 全勝が2名、1敗が2名いる。抽選のアヤでこの4名の直接対決が多く組まれており、昇級戦線は混沌としている。

 こういう展開では前期成績に基づく順位がモノをいってくる。

 増田康宏六段(23)はこの4名の中で順位最上位のため、残り3戦で2勝すれば昇級が決まる。

 現在2番手の高崎一生七段(33)と3番手の船江恒平六段(33)は9回戦で直接対決を迎える。高崎七段は3期前、船江六段は2期前に9勝1敗の好成績をとりながら昇級を逃している。悲願へ近づくのはどちらか。

 高見泰地七段(27)は現在4番手だが、直接対決が多い関係で残り3戦を全て勝てば昇級が決まる。20代にして元タイトルホルダーである高見七段にとって、このチャンスは是が非でもつかみたいところだ。

 上位の直接対決が多い関係で、2敗勢にもチャンスがありそうだ。可能性があるのは順位のいい、千葉幸生七段(41)、青嶋未来六段(25)までか。

C級2組

 C級2組の昇級は3名だ。

 ここまで全勝は黒田尭之四段(24)ただ一人。順位もいいため、残り3戦で2勝すれば昇級が決まる。

 6勝1敗は4名。次戦、黒沢怜生五段(28)と出口若武四段(25)の直接対決がある。

 4名とも順位が悪いため、一つの負けは即終戦を意味するサバイバルマッチだ。上位陣と直接対決のない伊藤真吾五段(38)と服部慎一郎四段(21)も残り3戦に強敵との対戦を残しており、スンナリいくとは限らない。

 1敗勢が星を落とすと、順位上位で5勝2敗の佐々木大地五段(25)や大橋貴洸六段(28)にも可能性が出てくる。

 二人とも高勝率をほこり、タイトル挑戦にも絡む活躍をみせる若手棋士で本命とみられていたが、ここまで2敗を喫している(佐々木五段の1敗は大橋六段に喫したもの)。

 この両者でも簡単にいかないあたりがC級2組のレベルの高さを表している。

 「順位戦は残り3戦を制するものが制す」という言葉がある。

 年明けからの残り3戦はプレッシャーもかかるし、対戦相手も昇降級が絡むと普段とは必死さが違ってくる。

 各クラス、残り3戦を全勝した人が昇級を果たすことになるだろう。

 3月に笑うのは果たして誰か。

 そして各クラスの残留争いも厳しい戦いが続く。

 B級2組~C級2組は降級点を持つ人の成績不振が目立つため、各クラスでメンバーの移動が多くなるかもしれない。

 裏の戦いからも目が離せない。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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