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藤井聡太七段、朝日杯将棋オープン戦でA級棋士を連破!活躍を導いた4つの要因とは?

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 1月20日(日)に行われた第12回朝日杯将棋オープン戦本戦で、藤井聡太七段(16)が、午前中に行われた1回戦で稲葉陽八段(30)を、午後に行われた2回戦で糸谷哲郎八段(30)を連破して、準決勝にコマを進めた。優勝、そして10代での連覇まであと2勝としている。

2連勝の要因は?

 今回の相手は二人とも関西を代表する若手棋士で、順位戦もA級に属するトップ棋士だ。

 この二人を相手にどちらも後手番ながら主導権を握って圧倒する強い内容だった。

 藤井(聡)七段の実力はもう疑う余地はないが、とはいえこの内容には驚きもある。

 要因となったのは、

  • 深い研究
  • タイミングのいい端攻め
  • 鋭い踏み込み
  • 粘りを許さない指しまわし

 この4点だ。

 まずは1回戦の稲葉八段戦。角換わり腰掛け銀の最新型で藤井(聡)七段が深い研究を見せた。

 中盤で意表を突く端攻めを敢行したが、これはその場で考えるには難易度が高く、藤井(聡)七段の研究で間違いない。タイミングのいい端攻めで主導権を握ったあとは、鋭い踏み込みで一気に攻め込んだ。稲葉八段はしぶとさに持ち味があるが、全く粘ることができず藤井(聡)七段の快勝となった。

 

 2回戦の糸谷八段戦。角換わりからお互いに銀を繰り出す「相早繰り銀」という形になった。糸谷八段が得意としている形だ。

 しかしここでも藤井(聡)七段は対策を用意しており、主導権を握って猛攻を仕掛けた。

 中盤で相手の歩の頭に角を打つというなかなか見ない攻めを敢行して、これが見た目以上に厳しかった。自宅のPCで解析したところ、この角打ちで勝負アリと言えるほどの差がついていたようだ。

 糸谷八段は1回戦で佐藤天彦名人を相手に逆転勝ちしている。その勝負術はプロの中でも群を抜いているが、藤井(聡)七段の的確な指しまわしに糸谷八段をもってしても為す術がなかった。

藤井(聡)七段の連覇はなるか?

 一日でA級棋士に2連勝というのはやはりすごいことだ。4つの要因の中でも、トップ棋士相手に粘りを許さなかったことが一番であろう。これは実力がなければ出来ないことである。年初に藤井(聡)七段が上位の棋士には勝率がそこまで高くないという記事を書いたが、さらにパワーアップしている2019年は違う結果が生まれることを予感させられる。

 年度勝率も8割5分を超えて、年度最高勝率(0.854)の記録更新も視界に入ってきた。この朝日杯将棋オープン戦も連覇がかかっている。この充実した内容の将棋を見せつけられると、記録更新も連覇も現実味を帯びていると言えよう。

 注目の準決勝と決勝は2月16日(土)に行われる。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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