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shezoo版〈マタイ受難曲2023〉のためのオーヴァーチュア

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

2021年2月に上演され、バッハの古典的大作に21世紀の場面設定と解釈を大胆に施したエポックな作品として話題となった〈マタイ受難曲2021〉が、装いも新たに2023年の新春、帰って来るらしい。

マタイ受難曲2023チラシ
マタイ受難曲2023チラシ

限りなく新作に近いヴァージョンアップ

どうやら再演、すなわち同じ脚本・構成・演出による〈マタイ受難曲2021〉の“再現”でないことだけは確かなようなのだけれど、それ以外については「違う作品だと思ってもらうほうがいい」という関係者の話が漏れ伝わってきている。

音楽部分については〈マタイ受難曲2021〉同様、バッハの原曲に忠実であることには変わりないとのことだが、ボーカロイド入りの現代楽器による編成も変わらないようで、そうなるとまさに「新約聖書マタイ伝」第9章にある「新しき葡萄酒は新しき皮袋に入れ」を再び具現してしまおうという、壮大にして実験的な音楽劇第2弾になりそうなのだ。

〈マタイ受難曲2023〉の見どころとは?

原曲〈マタイ受難曲〉や作曲者のバッハについては、「shezoo版〈マタイ受難曲2021〉証言集のトリセツ」で触れているので参照されたい。

〈マタイ受難曲2023〉については、舞台演出の部分を暗示するとされる副題が「神と嘘」であることが公表されている。

さらに、shezooが自身のFacebookで発表しているところによれば、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』における“神”という存在への問いかけと、“嘘”=フェイクに翻弄される現代の世相をミクスチャーしたストーリーによって、バッハが描こうとした“憂き世”のドラマツルギーを蘇らせようとしているらしい。

『カラマーゾフの兄弟』は、19世紀のロシア文学を代表する作家にして思想家のドストエフスキーの“最高傑作”ともされる大著であるから、各自予習を兼ねて読んだり聴いたりしておくことをオススメしたい。手っ取り早く概要を知りたい人はNHK「100分de名著93」をどうぞ。

100分de名著|カラマーゾフの兄弟

公演情報はこちらから→https://shezoo-matthauspassion.info/

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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