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【JAZZ】Trinite Live 2Days @サラヴァ東京/@横浜ドルフィー

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
Trinite『prayer』
Trinite『prayer』

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、音楽集団“Trinite(トリニテ)”の2days。

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Triniteは、shezoo(=シズ、作・編曲、ピアノ)の呼びかけで集まったジャズ&インプロヴィゼーションの最前線で活躍するミュージシャンたちによるユニット。2012年にファースト・アルバム『prayer』をリリースしている。

アルバム『prayer』に納められているのは、Triniteが繰り返しライヴで磨き上げてきた組曲「prayer」を構成する楽曲だ。アルバム『prayer』はshezooの音楽観の一部を表現する組曲「prayer」の一部を収録したに過ぎず、その後のライヴでこの組曲はさらに増殖と変貌を続けている。

作品主義的なインプロの未来を切り拓く先陣

インプロヴィゼーションを重視してきた1940年代以降の狭義のジャズにおいて、標題はあまり重く扱われなかった。曲名はほとんど意味をもたず、演奏内容のヴァリエーションでいかに斬新なことをしているかという“アンチ作品主義”とも言うべき風潮が優先されたのだ。

1950〜60年代にはバトルやセッション、さらにインプロヴィゼーションと呼ばれるような即興的な変奏曲が主流だった。ジャズにおける譜面=作品の意味を継続させるのはビッグバンド=集団演奏のみという状況にまで細分化していたのは否めない。そして、1990年代以降のリヴァイヴァル・ムーヴメントにおいても、譜面の地位は向上したとはいえず、「ジャズはアドリブ」という言葉が先行するなかで、無批判に譜面を無視する風潮が支持される傾向がなかったとは言えない。

一方で、ポスト・クラブジャズのなかから構築性の高いインプロヴィゼーションの模索が芽生え(クラブジャズがオーガナイズしていた音源には1960〜70年代のフリー・ジャズが多いことも関係していると思われる)、乖離していたように思われていた「ポピュラリティとジャズの無秩序の関係性」が見直されているのがこの10年であると感じている。

そうしたシーンの最前線で、作品主義というアドバンテージを最大に活かして活動しているユニットの代表がTriniteであると言える。

このライヴが終わるとスタジオに入って2作目の作品に取りかかるという噂もある彼ら。ぜひそのビフォー/アフターの貴重な瞬間を体験しておきたい。

では、行ってきます!

●公演概要

4月4日(土) 開場12:30/開演13:00

会場:サラヴァ東京(渋谷)

4月5日(日) 開場18:00/開演19:00

会場:JazzSpot ドルフィー(横浜・宮川町)

出演:Trinite(トリニテ):shezoo(ピアノ)、壷井彰久(ヴァイオリン)、小森慶子(クラリネット)、小林武文(パーカッション)

♪Prologue / Trinite

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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