Yahoo!ニュース

出掛ける前からジャズ気分:感情の裏側を映像化する音の浮遊感(ジュリエッタ・マシーン@新宿ピットイン)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
Giulietta Machine『Machina Nostalgia』
Giulietta Machine『Machina Nostalgia』

ジュリエッタ・マシーンは2000年夏に活動を始めたバンド。江藤直子(ヴォイス、キーボード)、大津真(ギター、プログラミング)、藤井信雄(ドラム、パーカッション)、2005年から参加の西村雄介(ベース)という4人編成で、「アコースティックとエレクトロニクスを行き来するような浮遊感のあるシネマ的なサウンド」と評されている。

音楽的には、ボサノヴァのようなブラジル系音楽を軸にアヴァンギャルドなロックやジャズ、そしてミニマルなクラシックなどの要素を融合して、“架空の映画のサウンド・トラック”と呼ばれる異空間に聴き手を誘ってくれる。

今回のライヴでは、2012年リリースの4枚目のアルバム『MACHINA NOSTALGIA』にも参加している超高音域ヴォイスのヴォーカリスト高遠彩子と、熱帯ジャズ楽団やVINCENT ATMICUS、DCPRG、ハイ・ブラスなどでトロンボーン、キーボード、ベースを手に暴れ回る青木タイセイ、チェリストの笠原あやの、サックス&クラリネットの小森慶子を加え、さらに厚みと広がりのあるサウンドを披露してくれるのではないだろうか。

“映画のサウンド・トラック”のようなーーと言っても、映画はもちろんサウンド・トラックにもひとつの概念があるわけではないので、どのような方向性と範囲をもった音楽なのかを伝えるのは難しい。2012年のアルバム発売記念ライヴから受けた印象は、断片的な音をまき散らしながら徐々に相互の関係性が明らかになっていき、カメラを引いて俯瞰するとそれまでは隠れていた異なる映像が現われるといった、ドキュメンタリー映画で用いられるような手法を想起させるものだった。

ストレートな感情だけでは表現しきれない“なにか”を音に託すためのヒントを、ジュリエッタ・マシーンのライヴは教えてくれるのではないかと期待している。

♪Giulietta Machine (ジュリエッタ・マシーン) (Part 1 of 3) at Roppongi SuperDeluxe, Tokyo

●公演概要

9月9日(火) 開場 19:30/開演 20:00

会場:新宿ピットイン

出演:江藤直子(ヴォイス、キーボード)、大津真(ギター)、藤井信雄(ドラム)、西村雄介(ベース)、ゲスト:高遠彩子(ヴォーカル)、青木タイセイ(トロンボーン)、小森慶子(サックス、クラリネット)、笠原あやの(チェロ)

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

富澤えいちの最近の記事