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[訃報]フリー・ジャズを代表するドラマーのロナルド・シャノン・ジャクソンさん逝去

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

フリー・ジャズを代表するドラマーのロナルド・シャノン・ジャクソンさんが亡くなられました。

Ronald Shannon Jackson, a drummer and composer who worked largely within the realms of free jazz, funk and fusion, died Oct. 19, in Ft. Worth, Tex. Jackson’s passing was confirmed by his cousin, Tobi Hero, on Jackson’s Facebook page. Jackson was suffering from leukemia and had been living in a hospice. He was 73.

出典:Drummer & Composer Ronald Shannon Jackson Dies at 73|JazzTimes

Ronald Shannon Jackson『what spirit say』
Ronald Shannon Jackson『what spirit say』

オーネット・コールマンのプライムタイム、アルバート・アイラーやセシル・テイラー、ジェームス・ブラッド・ウルマー、ビル・ラズウェルらとの共演など、ロナルド・シャノン・ジャクソンさんが“ジャズの自由度”に刻んだ功績は、枚挙にいとまがありません。

ウチのCD棚にも彼が参加したアルバムは数知れず。

そのドラミングはジャズ・ドラムという概念を超越し、プリミティヴな打楽器の範疇にも落とし込むことができないという、まさに唯我独尊の存在感を放っていました。

♪Last Exit live 1986- 1/4

ラスト・イグジットは鬼才ビル・ラズウェルが1986年にスタートさせたバンドで、ノイズ・ミュージックに新たな一石を投じました。ラズウェルはファンク・バンド“マテリアル”を結成したり、ハービー・ハンコックの『フューチャー・ショック』への参加や『ロック・イット』のプロデュースでヒップホップ界へ殴り込みをかけるなど、時代の寵児として活躍した人。ラスト・イグジットではロナルド・シャノン・ジャクソンのフリー・ドラミングの概念を使いながら、60年代フリーとは異なるサウンドを模索しているようすがうかがえ、それにロナルド・シャノン・ジャクソンも同調していたことが伝わってきます。

♪Ronald Shannon Jackson- Ghost Dance

これまたクセモノのギタリスト、デヴィッド・フュージンスキーが参加しているバンドでのライヴ。フュージンスキーは上原ひろみのアルバムにも参加しているので日本でもおなじみでしょうが、スクリーミング・ヘッドレス・トーソズあたりから知っている人にとっては“アッチの人”という印象が強いかも。だから、ロナルド・シャノン・ジャクソンのバンドに参加しているほうが自然だと思えてしまうんです。

♪Ronald Shannon Jackson- Harlem Jazz Festival

ロナルド・シャノン・ジャクソンが1979年に結成したデコーディング・ソサエティのメンバーがいる動画です。このサウンドをいま聴いて感じるのは、彼は違う方法論でフュージョン(あるいはポスト・ファンク、アンチ・ブラック・コンテンポラリー)を具現したかったのではないかということ。ポップなのにベタじゃない、そこがカッコいいんです。

♪Ronald Shannon Jackson Decoding Society Montreux 1983

ちょっと長尺ですが、デコーディング・ソサエティ名義でモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演したときの映像があったので貼っておきます。スペーシーでファンキー、プライムタイムとウェザー・リポートのあいだをすり抜けていくようなサウンドで、「あー、ボクはもっともっとロナルド・シャノン・ジャクソンをシッカリ聴いておかなければならなかったな……」と後悔させるイカした音を発しています。

ご冥福をお祈りします。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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