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侍ジャパンでのインスタ人気から考える、日本野球界のSNS活用の可能性

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
侍ジャパンは、試合だけでなくSNSの投稿も話題になっています。(写真:CTK Photo/アフロ)

ワールド・ベースボール・クラシックで、日本代表チームが快進撃を見せてくれています。

21日に開催される準決勝が今から楽しみな方も多いと思いますが、今日は準決勝までの間、ちょっと違った侍ジャパンの楽しみ方をご紹介しましょう。

今回のWBCで前回大会に比べた大きな変化の1つにあげられるのが、侍ジャパンの代表選手達によるSNS投稿が様々なニュースになっていることです。

(出典:大谷翔平インスタグラムアカウント)
(出典:大谷翔平インスタグラムアカウント)

特に大谷翔平選手やダルビッシュ選手のインスタグラムやツイッターの投稿は、毎日のようにメディアで取り上げられています。

その関係か、大谷翔平選手のインスタグラムのフォロワー数は、大会期間中に倍増して、360万人を超える結果になっているそうです。

参考:大谷翔平のインスタフォロワー数が倍増! “二刀流”人気上昇も、MLB記者はまさかの嘆き「今頃になって…」

ここで興味深いのは、W杯サッカーにおける日本代表と、WBCの侍ジャパンではSNS活用の傾向が明確に違う点です。

4年前には巨人の「SNS禁止令」報道が騒動に

実は日本のプロ野球界は、JリーグやBリーグに比較すると、SNS活用に後ろ向きだった歴史があります。

象徴的なのは、2019年1月に当時巨人の監督だった原辰徳さんが「SNSの利用禁止」を予告した、という報道が話題になったことでしょう。

関係者に聞く限りは、この発言は単純にSNS禁止を示唆したものではなく、メディアやファンを意識して発言するべきだという趣旨だったようですが、日本野球界のデジタル活用の遅れの象徴として様々な批判を集めることになります。

参考:巨人の原監督のSNS禁止令が波紋 ホリエモンらから非難ゴウゴウ

実際、その前年である2018年に開催されたサッカーW杯では、サッカー日本代表チームが本田選手や長友選手を筆頭に、積極的にツイッターを活用して発信をしていました。

そうした積極的なサッカー界と比較すると、当時の野球界は明らかにSNS活用に後ろ向きだったと記憶しています。

参考:サッカー日本代表のツイッター事情がブラジル大会から4年で激変していた

ただ、その状況はこの4年で明らかに大きく変化したようです。

侍ジャパンではインスタ利用率が9割に

特に日本のメディアの報道では、大谷翔平選手やダルビッシュ選手、そしてヌートバー選手など、メジャーリーグの選手のSNS投稿が話題の中心になっているようです。

ただ、侍ジャパンの代表選手でSNSを活用しているのはメジャーリーグの選手だけではありません。

しかも、興味深いのはそのSNSアカウントの利用傾向です。

サッカーW杯における日本代表選手のツイッター利用率と比較してみましょう。

■WBC2023での日本代表選手のSNS利用率

・ツイッター      32選手中15人  46%

・インスタグラム    32選手中29人  90%

(参考)サッカーW杯での日本代表選手のツイッター利用率

・2014年ブラジルW杯  23選手中 7人   30%

・2018年ロシアW杯   23選手中 15人  65%

・2022年カタールW杯  26選手中 21人  80%

まずツイッターの利用率を見ると、侍ジャパンの登録選手を辞退したり追加招集されたりした選手を含めた32選手のうち15人がツイッターアカウントを保有しています。

サッカーにおける2014年のブラジル大会と2018年のロシア大会の間ぐらいの利用率です。

ただ、現在の侍ジャパンにおけるインスタグラムの利用率はなんと90%。

カタール大会でのサッカー日本代表のツイッター利用率も上回っているのです。

実際、大会期間中にツイッターを投稿しているのは、ほぼダルビッシュ選手だけのようですので、侍ジャパンの中では圧倒的にインスタグラムの方が人気があるといえるでしょう。

ダルビッシュ以外の代表選手のツイッターアカウントは、あまりアクティブではなく、記念写真の投稿や、メディアの投稿のリツイートが目立ちます。

テキストでの発信が中心となるツイッターよりも、インスタグラムは写真や動画だけをアップするという使い方ができますので、プロ野球選手の方々には気軽に使いやすいということなのかも知れません。

巨人の岡本選手もインスタを開設

象徴的なのは、巨人の岡本選手が、大会期間中の3月13日にインスタグラムアカウントを開設されたことでしょう。

(出典:岡本和真インスタグラムアカウント)
(出典:岡本和真インスタグラムアカウント)

参考:岡本和真がついにインスタグラムを開設!侍ジャパン、“韓国のイチロー”も早速反応「ありえないほど偽物っぽい」

インスタグラムのアカウントを開設した背景は明らかにされていませんが、侍ジャパンの選手のほとんどがインスタグラムを活用されていることに影響されたことは、容易に想像できます。

(出典:佐々木朗希インスタグラムアカウント)
(出典:佐々木朗希インスタグラムアカウント)

ただ、こうやって選手の間でSNS活用が拡がっていくおかげで、私たちは試合がない期間も、侍ジャパンのメンバーの様子をうかがい知ることが可能になっているわけです。

侍ジャパン公式アカウントも善戦

実はこうしたインスタ人気は、公式アカウントにも好影響をもたらしています。サッカー日本代表の公式アカウントと比較すると下記の通り。

■侍ジャパン公式アカウントフォロワー数

・ツイッター   77万人

・インスタグラム 85万人

■サッカー日本代表公式アカウントフォロワー数

・ツイッター   131万人

・インスタグラム 70万人

ツイッターの公式アカウントこそ、50万以上の差をつけられていますが、インスタグラムの公式アカウントは侍ジャパンの方がフォロワー数が多いという結果になっているわけです。

サッカーW杯のカタール大会では、ABEMAがネット上の配信権を持っていた関係で大量のハイライト動画がツイッター上で話題になっていました。

参考:日本代表快挙の裏側で、ABEMAが成し遂げたW杯中継民主化の破壊力

それに比べると、WBCは放映権の関係か、ネット上に動画はあまり上がっておらず、侍ジャパンの公式アカウントですらHawkEyeの画像ぐらいしかアップしていないというハンデがあることを考えると、よく健闘しているということもできるでしょう。

ツイッター上では連日のようにWBC関連のキーワードがトレンド入りしていますから、やはり日本において野球人気は高いことが再確認できた大会だったと言えると思います。

プロ野球人気にも波及するか

プロ野球はこれまでファンの年齢層が比較的高く、SNS活用やデジタル活用にも保守的な傾向があると見られてきました。

ただ、やはり今回のWBCを通じて野球選手のSNS活用も、野球人気を盛り上げるために重要な要素であることが非常に明確になったように感じます。

侍ジャパンのYouTubeアカウントは、放映権の関係か、WBC開催前の名古屋での配信で止まっているようですが、おそらく、今回の反響を受けて次回大会には、サッカー日本代表の密着ドキュメンタリーのような取り組みも期待できるように思います。

参考:サッカー日本代表の公式YouTubeに学ぶ、選手が誹謗中傷にさらされる時代のSNSの使い方

現在の若い世代は、テレビを持っていない人も増えていますし、野球ファンの裾野を拡げるためには、SNSの活用は必須と言えます。

今回のWBCでの侍ジャパンの選手達のSNS活用に刺激を受けて、日本のプロ野球においても、新しい取り組みが増え、若い世代にもプロ野球人気がひろがるかどうかに注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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