昨年大きな話題になったボーイズグループオーディション「THE FIRST」から誕生した「BE:FIRST」の活動が拡がりを見せています。

昨年11月にデビューし、デビュー曲「Gifted.」が各種音楽チャートで40冠に輝いた後、今年に入って全国5都市でファンミーティングを実施したかと思えば、今週末には「THE FIRST FINAL」と銘打った「THE FIRST」のFINALライブを開催。

日本テレビでも一部ライブ中継されるなど、大きな盛り上がりを見せていました。

さらに、本日1月31日からは2ndシングルからの先行配信曲「Brave Generation」が先行配信開始されていますし、プレデビュー曲「Shining One」の動画再生数は、2500万回を突破した模様。

Z世代を対象に実施したネクストトレンド予想でも筆頭に入っていたようです。

参考:BE:FIRST、INI…Z世代女子によるネクストトレンド予想に、ユージ「この2グループはとにかく人気がすごい」

「THE FIRST」は日テレ系のスッキリやHuluでも配信されていたこともあり、「NiziU」を生み出した「Nizi Project」の延長のプロジェクトと受け止めている方も少なくないのではないかと思います。

日本の音楽業界への問題意識から生まれたプロジェクト

ただ、実は「THE FIRST」は、SKY−HIこと日高さんが、「BMSG」という会社を立ち上げ、この企画のために自ら1億円を出資してはじめたもの。

「BMSG」は「アーティストが自分らしく才能を開花させられる環境をつくっていくレーベル」と銘打たれており、アーティストでもある日高さんが現状の日本の音楽業界に感じていた問題意識から始まっているのが、大きな特徴であると言えると思います。

参考:起業家・SKY-HIが考える、日本の音楽業界「再興のシナリオ」

その証拠に、「THE FIRST」にしても「BE:FIRST」にしても、従来の業界の常識では考えられないアプローチが随所に見られます。

オーディションの過程やパフォーマンスが、今もYouTubeで全て見られるのも特徴的ですし、今回の「THE FIRST FINAL」において、オーディションでは落選したメンバーもそろってチームとしてパフォーマンスを行っていたのは、その1つと言えるでしょう。

ファンのSNS上での応援投稿はOKに

そうした中で、個人的に「BE:FIRST」が、日本の音楽業界のSNS活用の常識に革命を起こしてくれるのではないかと密かに期待しているのが、ファンによるアーティスト写真の利用の姿勢です。

ファンの間以外ではそれほど大きな話題にはなりませんでしたが、昨年9月、実はBE:FIRSTはウェブサイト上に「BE:FIRSTを応援してくださる皆様へ」と題して、著作物や肖像の扱いについて詳細なガイドラインを公表しています。

参考:BE:FIRSTを応援してくださる皆様へ | BE:FIRST

その中でも非常に重要なポイントとなるのが、このくだりです。

●特別に利用ができる例(いずれも、後述するパブリシティ権を侵害しない場合に限ります。)

・アーティストの写真やグループのロゴ等をSNSのプロフィール画像、ヘッダー等に利用する場合(なりすましの場合は除きます。)

・アーティストの写真やグループのロゴ等を、アーティストを応援することを目的としてSNSに投稿すること

つまり、BE:FIRSTの写真やグループのロゴを、SNSのプロフィール画像や、ヘッダーに利用したり、応援する目的でSNSに投稿することはパブリシティ権を侵害しない限り、特別に「OK」であると明確に宣言したのです。

この宣言を行った際の、日高さんのツイートも非常に印象的です。

画像に書かれた文章の中で、明確に「不当なお金稼ぎや、誹謗中傷、悪意のある捏造みたいなものを見ない限りは基本全スルーしますので、どんどんハッシュタグを盛り上げてほしい」という趣旨の宣言をされているのです。

韓国と日本で真逆になる著作権の姿勢

日高さんのツイートの画像にもありますが、こうしたファンの写真や動画活用を積極的に推進しているのがK-POPです。

特にBTSのARMYと呼ばれるファンのSNS上の拡散力の凄さは世界的にも知られていますが、このARMYに対して、BTSはまとめ動画や翻訳の字幕など、著作権に寛容な対応をしていることが、こうしたエネルギーを生んでいると言われています。

参考:ワールドツアー中止でも勢い止まず。BTSが仕掛けた「3つのメディア戦略」

一方で、これまで日本の音楽業界においては、著作権や肖像権が存在するものは基本的にはファンであっても自由には使わせないという考え方が、ネット上でも主流を占め続けてきました。

特に所属アーティストのネットでの写真等の掲載について、ジャニーズ事務所が厳しい姿勢をとり続けてきたのは、非常に有名な話です。

なにしろ数年前まで、ジャニーズのアーティストは、テレビCMのスポンサー契約をしている企業ですら、そのアーティストの動画や写真をウェブサイトで利用するのにかなり厳しい制限があったと聞いています。

その後、メディアの写真のネット掲載については2018年の1月にようやく解禁されましたが、そのこと自体がメディアで記事になるほど、ジャニーズのネット上の写真や動画に対する姿勢は厳しいものだったことが分かります。

参考:ジャニーズの写真、ついにネット解禁。錦戸亮が笑顔で記者会見

もちろん、こうした姿勢はアーティストの権利を守るためのものですし、ジャニーズ事務所も時代に合わせてSNS活用に積極的な姿勢に徐々に変わりつつあります。

ただ、現在は明らかにSNSの口コミが強い時代になり、BTSのARMYのようにファンがアーティストの躍進を支援できる立場になりました。

一方で、日本の音楽事務所の従来型の著作権保護最優先の姿勢が、日本のアーティストの海外進出を阻む一因になっているのではないか、という分析も少なくありません。

最近は日本の音楽業界でも、韓国のトレンドを見ながらファンのSNS上の拡散行為については寛容な姿勢を見せ始めているケースが増えてきているようですが、日本のファンの間にその姿勢が伝わっておらず、ファン同士の間で写真投稿や拡散行為に対して議論になるケースがまだまだ少なくないようです。

様々なSNS上でアクティブに活動するBESTY

そういう意味で、今回のBE:FIRSTの宣言が非常に革命的なのは、BE:FIRSTのファンに対して「アーティストの写真やグループのロゴ等を、アーティストを応援することを目的としてSNSに投稿すること」はOKである、と明言している点でしょう。

これにより、BE:FIRSTのファンであるBESTYは、胸を張って自分達の推しのアーティストの活躍をSNS上で拡散していくことができるわけです。

実際にSNS上の投稿を見てみると、明らかに他の日本のアーティストのファンに比べて、BESTYのアカウントは公式のロゴや写真を活用しているケースが多い印象を受けます。

例えば印象的だったのは、最近BE:FIRSTが配信を開始した動画配信アプリ「smash.」の共有機能の動向です。

「smash.」は、「バーティカルシアターアプリ」というキャッチコピーでSHOW ROOMが提供しているスマホ向けアプリ。

BE:FIRSTだけでなく、BTSやHey! Say! JUMP、日向坂46など、さまざまなアーティストのオフィシャル動画を視聴することができるのが特徴です。

このアプリにはPICKという自分の気に入った動画のシーンを取り出して、シェアする機能がついています。

これは著作権処理を「smash.」側が実施することにより、ユーザーが気軽にオフィシャルな動画をシェアできる機能なのですが、この機能を利用したツイート数がBE:FIRSTが「smash.」の配信を開始した25日に明らかに大きく跳ね上がっているのです。

(出典:Yahoo!リアルタイム検索 「#smashpick」のTwitter検索結果 )
(出典:Yahoo!リアルタイム検索 「#smashpick」のTwitter検索結果 )

おそらくは、BE:FIRSTファンの方々は、こうしたアーティストの動画素材をシェアする行為に対する姿勢がアクティブで、シェアしてもよいという認識が拡がっているからだと想像できます。

日本でもファンによる応援を加速する動きがはじまるか

さらに、BE:FIRSTの前述の宣言には、ファンによる「応援広告」についても明言があり、問い合わせ先のメールアドレスや、応援広告に使える素材集が、誰にでも手軽にアクセスできる状態で公開されているのも印象的です。

「応援広告」とはファンの手によって掲載される広告のことで、韓国での流行を起点として日本でも最近増えてきている手法です。

参考:VTuberや「おそ松さん」も…多様化する「応援広告」、「私の力で売れさせたい」ファンによる"推し活”が進化中

こうしたBE:FIRSTのファンのSNS投稿や「応援広告」を積極的に支援する姿勢が成功すれば、当然他の音楽事務所や芸能界に与える影響は少なくないでしょう。

現在の日本の音楽業界ではBE:FIRSTのアプローチは革命的だと思いますが、実は世界の音楽業界では既にそれが普通になりつつあるということでもあります。

昨年には、YOASOBIがオンラインライブの映像のキャプチャ一を許可して、ファンによるレポートを書いてもらう取り組みを実施していましたが、こうした様々なアーティストの応援の仕方や、それを体験したファンが増えることによって、日本の音楽ファンの応援の仕方も徐々に変わっていくはずです。

参考:28万人をライブ配信に動員したYOASOBIに学ぶ、ネット時代の新しい音楽の拡げ方

現在の日本のSNS上では、著作権保護に対する事務所側の指導が非常に浸透している関係で、著作権者ではない人が他のファンの写真や動画の投稿に対して「著作権的に大丈夫か?」という指摘をすることが散見されますが、こうした雰囲気もBE:FIRSTやYOASOBIのようなアーティスト公認の活動が増えることによって変わってくる可能性も十分あるはずと感じます。

実際に、BE:FIRSTのメンバーの動画を見ていると、応援してくれているファンであるBESTYを意識した発言が多いのが非常に印象的。

SNSでファンとコミュニケーションを取るのが普通の世代ならではと言えるかもしれません。

日本のアーティストの作品が海外に拡がっていくために、まずは日本のファンのSNSでの発信がポイントになるのは間違いありません。

BE:FIRSTとBESTYの今後の活動が、その鍵になりそうな予感がします。