18年の毎日更新を続けた「百式」の更新終了を受けて考えること

(出典:100shiki.com)

皆さんは「百式(ヒャクシキ)」という単語を聞いたら何を想像するでしょうか?

テレビアニメのガンダムに出てくる金色のモビルスーツでしょうか。

それともロックバンドでしょうか?

私のような2003年頃からブログを書き始めたブロガーの間では、「百式」と言えば真っ先に想像するのが「世界のアイデアを日替わりで」をキャッチコピーに、海外のユニークなサイトを紹介していたブログ「100shiki.com」です。

その「百式」が、8月31日に、自らを最後に紹介するという形で、18年間日替わり更新の歴史に終止符を打ちました。

参考:100SHIKI | 世界のアイデアを日替わりで

現在では長く続いた雑誌が休刊することも珍しくないことを考えると、長く続いたウェブサイトが終了するというのも珍しい出来事ではありませんし、この出来事をとりあげて騒ぐのは、百式管理人の田口さんにとっても本望ではないんだろうと思いますが。

■ブログという言葉が無い頃から開始した個人ブログの代表格

「百式」は企業が運営しているメディアではなく、個人で運営されていたサイトというのが、百式をご存じない方に注目して頂きたいポイントです。

アメリカでブログが注目されたのは、2001年9月11日の同時多発テロ事件の時と言われていますから、百式が開始した2000年には、まだブログはアメリカでもブームは始まっていません。

今でこそ百式のことをブログと呼びますが、百式が始まった時にはブログという言葉すらなかったわけで。

日本でブログが多くの人に注目されはじめたのは2003年のことですから、その3年も前からブログ的なウェブサイト運営を開始され、しかも毎日のように更新していたのだから、その先見の明と継続力たるや凄いです。

(徹底して顔出ししないスタンスも特徴的 出典:IDEA*IDEA) 
(徹底して顔出ししないスタンスも特徴的 出典:IDEA*IDEA) 

参考:プロフィール | IDEA*IDEA

そういう意味でも、やはり個人的には、平成最後の年である今年に、個人ブログの一つのシンボルであった百式の更新が終了するということに、一つの時代の変化を感じざるを得ないので、今更ながら振り返りの記事を書いておきたいと思います。

■ブロガーイベントのはしりである無敵会議

百式と田口さんの存在なしに、私の今は語れません。

14年前の2004年、アリエル・ネットワークというソフトウェアベンチャーの一社員であった私が、おそるおそるブログを始め、知り合いのブログ経由で知って参加したのが、百式の田口さんが橋本大也さんと共同で開催していた「無敵会議」というイベントでした。

この無敵会議が、今で言うところの「ブロガーイベント」のはしりと言えます。

1ヶ月に1度テーマを変えて開催されるこのイベントは、ブロガー限定というわけではありませんが、田口さんと橋本さん周辺の友人が多く参加していたこともあり、多くの参加者がブログを書いていて、回を追う毎に話題がクチコミで拡がり、参加のための倍率が上がっていく印象が強かった人気イベントでした。

従来のセミナーはクローズド前提のものが多かったですが、無敵会議は「今日の内容はすべてオープンなので、ブログに遠慮なく書いてください」という田口さんの一言で幕を開けるのが印象的だったのをよく覚えてます。

参考:無敵会議の作り方 | IDEA*IDEA

私もブログを書いていたお陰で、無敵会議の懇親会で名刺交換したらお互いにブログを呼んでいる相手だった、ということも日常茶飯事で。

当時、無敵会議で出会った人の多くと、今でもSNSで緩くつながっています。

無敵会議がなければ、ブロガーネットワークとして始まったアジャイルメディア・ネットワークに私がブロガーとして参加することもなかったでしょうし、アジャイルメディア・ネットワークがブロガーイベントをビジネスの軸として最初の数年を生き延びることもできなかっただろうと思います。

参考:mixi年賀状を見て思い出した、無敵会議が教えてくれたもの。

■ライフハックブームの起点にも

さらに百式の田口さんは日本のライフハックブームの起点となった人でもあります。

参考:百式・田口氏が推奨!ストレスをなくすデジタル仕事術

GTDをはじめ、IT系のツールを組み合わせて自分の仕事の仕方を進化させるというアプローチに、私も含めて多くのネットユーザーが共感。田口さんが監訳したストレスフリーの仕事術は大ヒット。

ライフハックは今も続く大きなムーブメントになりましたし、田口さんが自らプログラミングしてリリースしたcheckpad.jpはユーザー数が10万人を突破する注目のサービスになりました。

実は、そんなライフハックのトレンドに、私自身も影響されて、仕事術のコラムをITmediaで連載

恥ずかしながら「デジタルワークスタイル」という本を出版させて頂くこともできました。

今こうやって振り返ると、私は田口さんの後追いばかりしてた人生なんですよね。

残念ながらプログラミングは向いてなさすぎて追いかけられませんでしたが。

(ちなみに、私のブログの tokuriki.com のロゴも田口さんに作ってもらったものだったりします)

■ポジティブにサイトを紹介

特に、百式の田口さんのネットに対するスタンスで印象的だったのが、基本的にポジティブにサイトを紹介するという点。

(出典:the Entrepreneur)
(出典:the Entrepreneur)

参考:田口 元 インタビュー「ポジティブな思考」

当時の私は梅田望夫信者でもあり、ニフティフォーラム時代から山本一郎さんの影響も受けている人間ですので、自分のブログ上では基本的に他の人とのディスカッションやディベートを好んでやっていました。

そうすると当然ネガティブなことも書くことになったり、議論が紛糾したり、炎上したりもするんですよね。

でも、百式の田口さんのスタンスは独特で、あくまで海外のウェブサイトのポジティブな点を紹介することに特化。

ネット上での論争とは距離を置く、とてもユニークな存在でした。

(直接会うと意外に結構毒を吐く人ではあるんですけど。)

そんな田口さんの価値観が透けて見える、私が今でも指標の一つにしているインタビュー記事がこちら。

参考:ITは、いま──個人論「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」──「百式」を運営するビジネスマン

田口さんにとってITとは?という岡田有花さんの質問に「シナプスの間の電流。インタラクションが上がれば上がる程、頭が良くなるもの。究極のインターネットは、みんながちょっとずつ頭がよくなる世界になるってことだと思う」って答えてるんですよね。

今でも何かの拍子に思い出す、とても印象に残っているインタビューです。

■百式終了を受けて私たちが考えるべきこと

そんな田口さんが百式の更新を終了する、というのは、ある意味田口さんがネットでみんなとつながることをやめる、と感じてしまったのは正直なところです。

ただ、先週開催されたラスト百式ナイトという、更新終了を振り返るイベントに参加して、改めて感じたのが18年更新という時間の長さ。

まぁ、ある意味田口さんはトッププレイヤーとしてずっとトップリーグで毎日プレーし続けていたという話ですからね。

画像

私みたいに月に数本しかブログを書かない、なんちゃってブロガーとはワケが違うわけで。

18年間やりきったから百式の更新については引退し、今後はドットインストールに専念するというのは、田口さんをブログ界の中田英寿と考えれば当然の展開で、遅かったぐらいなのではないかなとも思えてきました。

でも、だからといって、我々が田口さんが提示してくれた「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」を諦めるのも、これまた違うと思っています。

今年は、百式の更新終了だけでなく、福岡での刺殺事件であったり、漫画村を起点としたブロッキング騒動だったり、Facebookのケンブリッジアナリティカ問題だったりと、インターネットの性善説的なものの終わりを象徴する事件が続いている印象もあり、もはやWeb進化論的なユートピアを語るのは、明らかに難しい時代に入ってしまった印象もありますが。

そもそも田口さんはブログではなく、ドットインストールというプログラマーを増やすサービスにコミットすることで「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」に注力されることにしただけだと思いますし。

あらためて、自分がブログやネットを「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」にするためにどんな貢献ができるのかを、田口さんの後追いという形ではなく、ちゃんとゼロから考えたいなと感じる今日この頃です。