ヤフー通販「おすすめ順」ステマ指摘騒動のどこが一体問題なのか

ヤフーの防災広告はヤフーならではの素晴らしい取り組みだったと思います。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

本日の朝日新聞に、ヤフーショッピングの検索結果の「おすすめ順」が、いわゆる「ステマ」にあたるのではないかという指摘記事が掲載されていました。

【参考記事一覧】

ヤフー通販「おすすめ順」、広告料払えば検索上位に

表示順、みるみる急上昇 ヤフー広告料の「効果」とは

ヤフー執行役員「全て広告、ステマではない」 通販巡り

広告料金を支払えば検索上位に表示される仕組みにもかかわらず、広告明記がされていないためというのが指摘のポイントで、朝日新聞デジタル側にも、3本セットで掲載される力の入れようですから、朝日新聞としてもかなり力を入れて取材したトピックだというのが感じられます。

朝日新聞記者と、ヤフーの別所直哉執行役員とのやりとりの概要も一問一答形式で細かく掲載されていますので、詳細は上記の3本の記事を読んで頂くのが分かりやすいと思いますが。

有料記事で読めない方も多いかと思いますので、ポイントを簡単にまとめると下記の通りです。

■ヤフーショッピングで商品を検索する際のデフォルトになっている「おすすめ順」は、広告費を支払うことで検索順位を上げることができる。

■問題A:「おすすめ順」が広告費によって操作されうることはユーザー向けに明らかに説明が不足している。(ヘルプページにしか書いてない)

■問題B:広告費を支払って検索順位が上がった商品情報には、一切広告表記がなく、どれが広告費によって上位表示されているのか不明。

■土井弁護士の見解としては、これは「宣伝であることを隠す『ステルスマーケティング(ステマ)』にあたる」

■ヤフーの別所執行役員の見解としては、「ヤフーショッピングはサイト全体がカタログで、広告のかたまりだから」ステマにはあたらない。

■ただ、ヤフー側としても「おすすめ順」についての説明は不足していた、ということで、記事公開後の28日午前に、サイト上の説明が一部変更され、おすすめ順の説明ページにつながるリンクは追加された。

■しかし、依然としてどの情報が広告費が支払われたことにより検索順位が上がっているかの広告表記はされていない。

つまり、上記の「問題A」については、ヤフーとしても朝日新聞の指摘は正しい面があると受け止めて今回対策をされたのですが、「問題B」の個別商品情報の広告表記については必要性がないと判断した。ということになります。

参考:ヤフー、説明一部追加 通販サイト「おすすめ順」

はたして、普段お世話になっているヤフーニュースの記事で、ヤフー自身の騒動について言及して良いのかどうか、引っかかる点も正直なところとしてはありますが。

他のステマ騒動についてこの枠で書いておいて、この問題について全く言及しないのは逆に良くないと考え、あえて率直に厳しく書きたいと思います。

今後のヤフーさんへの期待も込めて、今回のステマ指摘へのメディア対応を評価すると、正直、残念な対応と言わざるを得ません。

もちろん、今回の取材対応をされている別所執行役員は、もともと法務系の方のようですから、今回の対応によって法務的にはおそらく問題ないレベルだと判断されているのだと思います。

実際に、現時点でこのレベルの対応をステマと指摘するのは厳しすぎる印象もありますし、ユーザーにわかりやすい表記等の説明さえ尽くせばセーフのラインでしょう。

朝日新聞の記事の対談内容を見る限り、インタビューで発言を誘導されてしまった印象もなくはありません。

やまもといちろうさんによると、日本よりステマに厳しい法律があることで有名な米国のFTCでも、こうした商品の一覧表示における広告出稿企業の上位表示は問題視してないとのことですので、これがステマかステマじゃないかと言われれば、ステマじゃない、法律的にも問題ない、が結論でしょう。

ただ、やはりヤフーの将来を考えて、ここで本当に注目すべきは、ユーザー目線での倫理的なレベルかと思います。

議論のポイントとなるのは下記の3点だと考えています。

■ユーザーファーストの会社としてそれでいいのか

■検索サービスの会社としてそれでいいのか

■ステマ撲滅を掲げる会社としてそれでいいのか

■ユーザーファーストの会社としてそれでいいのか?

「ヤフーは、日本のインターネット黎明期から「ユーザーファースト」を合言葉にしてきました。」

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これはヤフーのウェブアクセシビリティ方針に明確に書かれている文章です。

そういう視点で今回の対応を考えた場合に気になるのが、はたして現在の広告表記の方針はユーザーファーストなのかという点です。

今回の騒動を考える上で伏線となるのが、昨年騒動になった食べログの検索結果における広告表記問題でしょう。

参考:「食べログ」の標準検索は「広告枠」とカカクコム 「いきなり3.0点にリセット」の理由は

この騒動も、食べログの「標準」という機能で検索した際に表示された結果が、実は広告で買われている結果だったことが問題になりました。

その結果、最終的には「標準」の枠は「標準【広告優先】」という形で、一応関係性の明示がされるよう方針が変更されたという背景があります。

今回のヤフーの対応も、「おすすめ順」の説明を追記することで対応していますから、ある意味この「カカクコムの対応と同様の対応は終了した。」ということは言えるかもしれません。

カカクコムの表記も「標準【広告優先】」だったはずが、いつの間にか現時点では「標準【会員店舗優先】」と、微妙に会員店舗の意味が分からないユーザーには分かりにくい形に修正されていますから、明確に広告表記をしたくない人が世の中には多いことも伺えます。

記事広告の件名における広告表記問題が、まだ業界の中でも足並みを揃えて基準を厳しく高めることができていないように、こういった検索結果の広告表記もまだまだ企業によって対応が玉虫色という話なのが現実ではあるのですが。

それでも「ユーザーファースト」を掲げてネット業界の盟主に君臨するヤフーが、業界の低い側の基準の対応で終わってしまうというのは、残念な気持ちになる人が多いのではないかと感じます。

■検索サービスの会社としてそれでいいのか?

さらに個人的にショックだったのが、今回の問題になっている舞台が「検索結果」ページだった、という点です。

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ヤフーという会社は、日本最大級のポータルサイトであり、その存在価値の一つの柱となっているのが「検索」サービスだと思います。

もちろん、検索エンジンはGoogleのものを使っているからコア事業じゃないとか、いろいろ指摘はあると思いますが、多くのヤフーのエンジニアの方々が、ヤフーならでは、日本語圏ならではの検索技術の試行錯誤を続けていると思います。

そんな検索サービスを提供する会社が、ヤフーショッピングの検索結果の「おすすめ順」は、あくまでユーザーに対しての「おすすめ」ではなく、広告費を支払ってくれる会社をそうとは分からない形で上位表示するという姿勢で本当に良いのでしょうか?

「ヤフーショッピングは広告の固まりだから」というのは、「テレビはどうせヤラセでしょ」的な、ユーザーは業界の基準を諦めているはずだから、事業社側もその前提で取り組んで良い、という姿勢の発言に聞こえてしまいます。

今年度のヤフーでは「データドリブン企業」への脱皮というテーマを掲げられていたと思います。

ユーザーとしてヤフーに期待する「おすすめ順」は、データドリブン企業としてのヤフーならではの絶妙なおすすめであって、その検索結果が実はユーザーからは分からない形で広告によって操作されている、というのは、やはり正直残念な気持ちになる行為では無いかと思います。

■ステマ撲滅を掲げる会社としてそれでいいのか?

もう一つ、ヤフーだからこそ特に残念と感じるのが、ステマに対する倫理基準の問題です。

2年前の商業メディアのステマ騒動の際に、ステマ撲滅のために大きな影響を与えたのがヤフーのステマ撲滅宣言でした。

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参考:記事と偽る「騙し広告」本当に排除できるのか

私自身が極端なアンチステマ側の人間で、WOMマーケティング協議会の立ち上げにも関わった側の人間なので、ポジショントークなのはここで明確にしておきますが。

正直、商業メディアのステマは、関係者が黙っている限り見つけるのが難しいため、個人的には撲滅は難しいと諦めていたのが正直なところでした。

そんな中、ヤフーがステマ排除に本気で取り組むというニュースにはとても勇気づけられましたし、その後の関係者の方々の地道な活動は頭が下がる思いで拝見していました。

それだけに、そんなステマ撲滅宣言をした会社の広告表記の基準がこの程度と思われてしまうと言うのは、業界全体にとっても、とてももったいない話です。

こういったニュースが出ることによって、「ヤフーもステマ撲滅するとか言ってたけど、結局自分達も似たようなことやってるじゃん」という印象を受ける人が増えてしまうのは、業界にとって大きなダメージになってしまうでしょう。

そういう意味で、今回の騒動に対する現時点での対応姿勢は少し残念に感じてしまうのです。

もちろん、一部の方が指摘されているように、別にヤフーショッピングの検索結果が広告によって変わっていようがほとんどのユーザーは気にしないでしょ、という視点はあると思います。

実際、検索結果で上位表示されたところで、最終的にはユーザーは他のお店と比較して購入することが多いでしょうから、今回この問題がクローズアップされなければ、本来のステマに比べれば大したユーザーへの悪影響はないレベルという判断はありえたのかもしれません。

ただ、やはりこうやって朝日新聞に明確に問題点を指摘された以上、状況は全く変わってしまっています。

「ユーザーファースト」を掲げ、データドリブン企業として検索サービスを提供し、ステマ撲滅を掲げるネット業界のトップ企業であるヤフーが取るべき対策の基準は、明らかにもっと高い基準であるべきなのではないかと感じます。

記事の冒頭の写真にあえて、今年銀座のソニービルで実施された防災広告の画像を挿入してみました。

参考:ヤフーの銀座ソニービルの防災広告はみんな体験しておくべき

上記の防災広告のアプローチは、ネット企業のヤフーならではのリアル広告のアプローチだったと思いますし、正直、関係ない私も少し誇らしい気持ちになったものです。

やっぱり、ヤフーにはそういうお手本としての振る舞いを期待してしまうわけです。

くどいようですが、今回の朝日新聞に対するヤフー側の対応は法律面から見れば及第点だと思います。

これが零細ベンチャーであれば、指摘されるほどのないレベルだと思いますし、これをステマというのは実際の悪質なステマの存在を考えれば明らかに言い過ぎでしょう。

ただ、日本のネット企業の代表でもあり、多くのメディアや店舗の命運を握っているプラットフォームでもあるヤフーの振る舞いは、自然と二番手以降の事業者よりも厳しいものになると思いますし、ヤフーがお手本を見せてくれなければ零細ベンチャー企業の倫理基準は当然もっと悪い方に振れてしまうと思います。

昨今のネット企業の不祥事や、騒動で、日々マスメディアからのネット企業糾弾の手は厳しくなってきているのも明らかです。

だからこそ、日本のネット業界のリーダーであるヤフーの振る舞いは、単純に法律を守れば良いという法律的基準ではなく、それよりも厳しい倫理基準で対応して頂きたいとおもうわけです。

まぁ、そういう意味で、個人的には、まだ懲りずにコピペメディア運営を続けている企業がいる方の話も気になっていたりするのですが。

長くなりましたので、今日のところはこの辺で。

是非、ヤフーショッピングにおける広告表記基準についても、社内で議論を尽くして頂き、多くのユーザーが納得できる分かりやすい良いやり方を早期に見つけて頂きたいと、強く期待する次第です。