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大人な楽しみ「日本クラシックホテルの会」パスポートのお得度と遊び方

寺田直子トラベルジャーナリスト 寺田直子
日本を代表する9つの名門ホテルで構成される「日本クラシックホテルの会」/筆者撮影

昨年2017年11月9日に設立された日本クラシックホテルの会。目的はクラシックホテルならではの歴史ある空間とホテルとしての魅力を幅広く伝えたいというもの。加盟する条件として、1.第二次大戦以前に建てられている 2.その建物を維持(改修、復原含む) 3.文化財や産業遺産などに認定・登録 を挙げている。その条件を満たしたのが以下の9つのホテルだ。

日光金谷ホテル(創業1873年)

富士屋ホテル(創業1878年)

※2018年4月より耐震補強工事を実施のためクローズ中。2020年7月頃オープン予定

万平ホテル(創業1894年)

奈良ホテル(創業1909年)

東京ステーションホテル(創業1915年)

ホテルニューグランド(開業1927年)

蒲郡クラシックホテル(開業1934年)

雲仙観光ホテル(創業1935年)

川奈ホテル(開業1936年)

◆創業、開業の表記は同会の公式パンフレットに準ずる。

ホテル好きとして注目したいのが同会が発行する「クラシックパスポート」(一冊1500円)。各ホテルに宿泊した際にこのパスポートにスタンプを押してもらうと集めた数により特典がもらえる。まず、4つのホテルに宿泊しスタンプを押してもらうと9つのホテルの中から好きなホテルでのペアランチコース券がもらえる。さらに9つ全ホテルに宿泊するとペア宿泊券がもらえる。パスポートの有効期間は最初のホテルに宿泊した日から3年(富士屋ホテルのみ2018年夏までにパスポート購入にかぎり工事終了より1年間の期間延長あり)。

これはホテルニューグランド宿泊時に押してもらったスタンプ。パスポートにはメモ欄があり滞在時の記録を残すのも楽しい/筆者撮影
これはホテルニューグランド宿泊時に押してもらったスタンプ。パスポートにはメモ欄があり滞在時の記録を残すのも楽しい/筆者撮影

クラシックホテルというと格式があり高級、よって宿泊料金も高いと思いがちだ。だが上手に日にちや時期を選べば思っている以上に手が届く値段で泊まることができる。また、ホテルごとにお得な宿泊プランも随時、提供している。たとえば筆者が1件めに選んだ横浜のホテルニューグランドが現在行っているのが開業90周年を記念した9つの贈り物という宿泊プラン。朝食、レストラン優待券、マリンタワー入場券、レイトチェックアウト、さらにチェックイン時のくじびきでアップグレードチャンスなど9つの特典が付き3名で利用すればひとり1万5000円~。筆者も運よくくじでスイートにアップグレードしてもらい、レストラン優待券でホテル名物のプリンアラモードやドリアを味わったり隣接するマリンタワーでベイサイドのパノラマを満喫するなどたっぷりと横浜観光をお得に楽しむことができ満足度は高かった。

みごとくじでスイートにアップグレード/筆者撮影
みごとくじでスイートにアップグレード/筆者撮影
横浜市歴史的建造物、近代産業遺産に認定されるホテルニューグランド。おもむきある建築探訪もクラシックホテルの楽しみ方だ/筆者撮影
横浜市歴史的建造物、近代産業遺産に認定されるホテルニューグランド。おもむきある建築探訪もクラシックホテルの楽しみ方だ/筆者撮影
プリンアラモードはホテルニューグランド発祥。ほかにドリア、ナポリタンも。現在「90周年記念」の特製プリンアラモードも登場/筆者撮影
プリンアラモードはホテルニューグランド発祥。ほかにドリア、ナポリタンも。現在「90周年記念」の特製プリンアラモードも登場/筆者撮影

奈良を代表するクラシックホテル「奈良ホテル」も2名で泊まってひとり1万円台からのオンライン専用の朝食付き宿泊プランがある。筆者が泊まった3月時はひとりで泊まって1万1000円(朝食付き)。チェックインが遅めだったため夕食は到着前に軽く外で食べ、ホテルではエレガントなバーでカクテルを傾け大人な時間を味わった。お楽しみは翌朝の朝食。奈良ホテル名物の茶がゆを堪能。緑茶で炊き上げられたおかゆはサラリとした口当たりで滋味深く胃に沁みわたるよう。チェックアウト後はスーツケースをホテルに預け、奈良公園~春日大社など徒歩圏内の名所を散策。しっとりとした奈良の美しさを楽しむこともできる。

「関西の迎賓館」として1909年に誕生した奈良ホテル。和洋折衷の建築デザインは当時の面影を残す/筆者撮影
「関西の迎賓館」として1909年に誕生した奈良ホテル。和洋折衷の建築デザインは当時の面影を残す/筆者撮影
レトロクラシックな客室もまた味わい深い/筆者撮影
レトロクラシックな客室もまた味わい深い/筆者撮影
奈良ホテル名物といえば朝食の茶がゆ定食。一度は味わいたい/筆者撮影
奈良ホテル名物といえば朝食の茶がゆ定食。一度は味わいたい/筆者撮影

愛知県にある蒲郡クラシックホテルもこのパスポートのために初めて訪れた。三河湾を一望する高台のロケーションに和洋折衷のみごとな建築美。庭園のつつじが有名だが、新緑の今の時期も実に美しい。朝食とディナーが付いた宿泊プランは2名一部屋でひとり1万5500円~。ディナーは本格的なフレンチコースまたは別棟の日本家屋での会席コースなどが選べる。強くお薦めしたいのは海側の部屋を選ぶこと。山側とそれほど料金は変わらないが窓から見渡せる三河湾と庭園のパノラマは絶景だ。ホテルの目の前にはパワースポットとしても知られる竹島がある。八百富神社を筆頭に5つの神社があり、すべてをお参りすると一生の幸せを得ることができるといわれ参拝客に人気。境内で売っているおみくじには「大大吉」があるので運試しをぜひ。

竹島から見た蒲郡クラシックホテル。城郭風の建築が特徴的/筆者撮影
竹島から見た蒲郡クラシックホテル。城郭風の建築が特徴的/筆者撮影
海側のツインルーム。シンプルな空間だがみごとな眺望が贅沢/筆者撮影
海側のツインルーム。シンプルな空間だがみごとな眺望が贅沢/筆者撮影
火入れもみごとな卵料理。ホテルならではの朝食をゆったりと味わう/筆者撮影
火入れもみごとな卵料理。ホテルならではの朝食をゆったりと味わう/筆者撮影
竹島・八百富神社のおみくじ1番は「大大吉」/筆者撮影
竹島・八百富神社のおみくじ1番は「大大吉」/筆者撮影

クラシックホテルに泊まって気がつくのは創業当時の社会背景や、歴史に彩られた時空間の奥深さだ。さまざまな思惑、熱き情熱などホテルにかかわった人たちの人生、それを継承してきた企業としての姿勢。クラシカルな美しさを満喫するだけでなく日本の歴史をひもとく醍醐味。それもまた、クラシックホテルのおおいなる個性だといえる。

「日本クラシックホテルの会」のパスポートの有効期間は3年間。筆者もお得なシーズンやプランを上手に選んでそれぞれのホテルをゆっくり楽しみながら時間をかけて制覇したいと思っている。

トラベルジャーナリスト 寺田直子

観光は究極の六次産業であり、また災害・テロなどのリカバリーに欠かせない「平和産業」でもあります。トラベルジャーナリストとして旅歴35年。旅することの意義を柔らかく、ときにストレートに発信。アフターコロナ、インバウンド、民泊など日本を取り巻く観光産業も様変わりする中、最新のリゾート&ホテル情報から地方の観光活性化への気づき、人生を変えうる感動の旅など国内外の旅行事情を独自の視点で発信。著書に『ホテルブランド物語』(角川書店)『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)、『フランスの美しい村を歩く』(東海教育研究所)など。

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