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自民党の岸田政務調査会長が桜を見る会の問題について「軽く見てはならない」と発言 野党の追及に理解

立岩陽一郎InFact編集長
NHK日曜討論(2月2日)から

自民党の岸田文雄政務調査会長は、国会で桜を見る会の問題の追及が続いていることについて、「この問題をけして軽く見てはならない」と述べて、追及を続ける野党の姿勢に理解を示した。

去年の暮に共産党の追及で発覚した桜を見る会の問題については、今国会でも予算委員会などで引き続き審議が続いており、自民党の議員など一部から、新型コロナウイルスへの対応などが重要な時だとして、桜を見る会の追及を続ける野党の姿勢を批判する声が出ている。

これについて今朝(2月2日)のNHK日曜討論で、各党の政策責任者が議論を行った。この中で、自民党の岸田文雄政務調査会長は「政治の信頼に関わる重大な課題も含まれていると認識している」とした上で、「新型コロナウイルスなど重大な政治の課題が山積しているわけですから、政治の信頼に関わる問題についてしっかりとした説明責任を果たし説明するよう、信頼回復に務めるよう政府に求めるとともに、与党も努力をしないといけない」と述べた。

これについて立憲民主党の長妻昭代表代行が「この話は去年の臨時国会で政府が耳を揃えて資料を出せばすんでいる。今年は違う話題で議論ができた。総理に出してくれと与党が一致結束して要求して出せば済む話だ」と政府への対応を求めたところ、岸田政務調査会長は次の様に話した。

「様々な指摘が有ることを承知している。政府の説明に国民の中から不十分という声が有るなら、引き続き政府として説明努力をしていかなければいけない課題だと思う。あらためて、政府としても与党としてもしっかりと受け止めて、政府としてしっかりと説明責任をはたしていくよう求める

更に、「重要な政治課題に取り組むためにも、この問題をけして軽く見てはならない。ないがしろにしてはならない」と述べ、野党が国会で追及することに理解を示した。

また、公明党の石田祝稔政務調査会長は桜を見る会について、「相当な結論に達しないと、来年、一年休んだからやりますよとはならない」と述べて、徹底的な議論を踏まえずに再開することは困難との認識を示した。

この番組の内容はその日のNHKの正午のニュースとなる。この日は「日曜討論 新型肺炎感染拡大受けて与野党から政府に意見」と題して、各党の代表が新型コロナウイルスへの対応について述べた内容をつたえている。

例えば、岸田氏の発言は次の様に紹介されている。

「水際対策をしっかりやるのは当然だが、潜伏期でも感染させる可能性があることを考えると、国内に入ってきた後の対策も同時並行的に進めないといけない。迅速に簡易検査キットを開発しワクチンや治療法にもつなげないといけない。すでに観光業でキャンセルが続出するなど影響が出ている。景気対策を活用してリスクに備えないといけない」と述べました。

この後、各党代表の意見が順次紹介されていく。当然の様に、桜を見る会についての発言は取り上げられていない。

これは別に、NHKが官邸に配慮したということではない。NHKが目下、ニュースとして視聴者が知るべき、或いは視聴者が知りたい内容は新型コロナウイルスへの各党の対処だと考えているということだ。

テレビニュースは極めて短い。通常1分10秒。長くて2分が限度だ。そうした限られた時間の中で取捨選択がなされて、桜を見る会についての岸田氏の発言は取り上げられなかったということだろう。仮にNHKにこの点について問い合わせれば、「編集権に関わることについてはお答えは控えさせて頂くが、様々な状況を勘案してNHKとして編集判断した」と答えるだろう。

そこに嘘が有るとは思わないし、人の命がかかっている問題が優先されることに違和感は無い。それでも、岸田氏の発言は多くの人に知ってもらう価値の有る言葉だと思う。それは、岸田氏が語っている通り、桜を見る会の問題とは、政府の信頼に関わる問題だからだ。この議論を回避しては、人々は「この政府は本当のことは言わず、追及されると証拠を隠滅する」と感じ続けることになるだろう。それでは、仮に政府が新型コロナウイルスで対策をとっても、その効果は信頼されず、よって、十分に効果を発揮することはない。

私はNHKに対してこの日曜討論での参加者の発言をテキスト化して公表することを求めている。それによって、仮にニュースにならなくても、人々は各党政策責任者の発言を知ることができる。今のところ、良い返事は得ていないが、是非、NHKには検討してもらいたい。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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