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FBI長官の解任で トランプ米大統領への批判強まる

立岩陽一郎InFact編集長
(写真:ロイター/アフロ)

トランプ米大統領が自らの判断で続投させていたFBI長官を急きょ解任した。FBIが大統領選挙におけるトランプ大統領の陣営とロシア政府との関係を捜査している中での解任劇に、全米に衝撃が走っている。早くも大統領の対応に批判が出始めている。

(参考記事:FBIをはじめとする情報機関が分析した大統領の報告書とは?

発表は9日午後。ホワイトハウスからの発表では、司法長官からトランプ大統領に対してFBIのジェームズ・コミー長官を解任するよう進言が有ったという。その後、トランプ大統領は進言を受け、コミー長官は解任されたという。

全米の夕方のニュースは各局ともこの問題の対応に追われ、理由はわからないと繰り返した。

トランプ大統領はオバマ政権時に選ばれた人材の入れ替えを宣言し、就任時に国家情報局長官、CIA長官を替えたものの、コミー長官については残留を決めた。理由は特に明示されなかったが、任期10年のまだ4年だからというのが大方の見立てだった。

(参考記事:トランプ大統領のFBI長官続投方針で問われる「最強捜査機関」の独立性)

しかしワシントンで長く調査報道に従事するジャーナリストは、「トランプ大統領は、FBIがロシアの大統領選挙への関与について捜査していることを気にしており、コミー長官と2人で会っているところが目撃されている。コミー長官はトランプ大統領を安心させる情報を入れていたのではないか」と話す。

ところがそのジャーナリストによると、今年3月あたりから雲行きが怪しくなってきたという。

3月20日、連邦議会に呼ばれたコミー長官は、FBIが大統領選挙でトランプ大統領の陣営の誰かがロシア政府と接点を持ち選挙戦に影響を与える動きをしていたか捜査を開始していることを明らかにした。ロシア政府の大統領選挙への関与をFBIが捜査していることは既に周知の事実だったが、トランプ大統領の陣営が捜査の対象となっていたことはそれまで明らかになっていなかった。

しかしトランプ大統領にとってFBI長官の解任は、かえって世論の厳しい批判を招くものとなるとの見方が支配的だ。トランプ大統領周辺のロシア政府との異様な頻度の接触は就任前からスキャンダルと言って良い状態となっている。また、FBIは大統領が自らの利益のために政策をゆがめる「利益相反」についても情報収集をしていると言われている。

(参考記事:トランプ新政権を揺るがすロシアとの関係)]

トランプ大統領によって任命される新FBI長官による捜査を国民が納得するのかという疑問も出ている。

前出のジャーナリストは、「トランプ大統領の陣営が捜査対象になっているのにトランプ大統領が任命したFBI長官が捜査をして、それで結果、何も無かったとなって誰が納得するだろうか?こうなると、ロシアルート(ロシアの選挙関与)の捜査は独立検察官によって行うしかないかもしれない。それは、逆に、トランプ大統領を追い詰めることになるかもしれない」と話す。

トランプ大統領は、解任に際して、「(コミー長官は)私が捜査の対象となっていないと明言してくれて感謝している」とツィートしており、自身を守るための解任ではないと強調している。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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