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税務情報を開示しないトランプ米大統領を主要メディア各社が批判 政策推進に黄信号と

立岩陽一郎InFact編集長
米国製品の輸出を推進するための新たな大統領令について語るトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

自身の税務申告内容の開示を拒否し続けるトランプ米大統領に対して、身内の共和党からも、このままでは税制改革に着手できないと批判の声が出始めた。米主要メディアが報じた。

歴代大統領は自身の税務申告の内容を開示してきたが、トランプ大統領は拒否し続けている。当選後初の記者会見で開示について問われると、「私の税務申告内容に関心を持っているのは記者だけだ」と言い放っている。4月18日(通常は4月15日)は米国では確定申告の日だが、ホワイトハウスの記者会見でも、スパイサー報道官が、「大統領は税務申告内容について開示する考えはない」と記者からの質問を突っぱねた。

こうしたトランプ大統領の対応について米主要メディアが一斉に批判的な記事を掲載。このうちニューヨークタイムズ紙は18日、この税務情報の不開示によってトランプ大統領にとって次の最大の目標である税制改革への取り組みが困難になっているとする記事を掲載した。先に頓挫した医療保険制度改革と同じような状況になる可能性が出ていると指摘している。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (14)~米トランプ大統領が拒否する所得証明書の開示がなるか?)

記事は、野党民主党だけでなく与党共和党からも税務申告の内容を開示すべきとの考えが示されているとしており、不開示のままでは税制改革の議論を始められないとの議員の意見を紹介している。このうち民主党の議員は、「大統領自身がその税制の見直しによってどのような利益を得るのかわからない状況で、税制の見直しに応じることはできない」と話している。

また、ワシントンポスト紙も17日の社説で、こうしたトランプ大統領の姿勢を批判。透明性の確保に取り組んできた歴代大統領の取り組みと相いれない対応と指摘した

この中で、納税情報の不開示の問題の他に、ホワイトハウスを訪れた人物の氏名の公表を取りやめたトランプ政権の決定についても取り上げて疑問を呈している。ホワイトハウスは、オバマ政権時に大統領や副大統領、幹部スタッフと面会した人物の氏名を安全保障上問題が生じる人物を除いて定期的に公表してきた。トランプ政権はそれを止めることを決めている。

ワシントンポスト紙はその社説を次の言葉でしめくくっている。

「世論調査にあらわれる大統領に対する支持率の低さは、米国民が大統領が正直な人物かどうかに疑問を投げかけ続けていることを示している。何れ、大統領は米国民に信を問わねばならない日が来る。今のままこの国が取り組んできた透明性の確保に後ろ向きな対応を続けていると、信頼の蓄積がほとんど無いことに気づかされることになるだろう

(参考記事:「トランプ船に乗った安倍総理」 米ジャーナリストから見た日米首脳会談)

トランプ大統領はオバマ政権時に導入された医療保険制度を撤廃して新たな制度の導入を目指すとしていたが、民主党の他に共和党の理解も得られずに断念している。その際、トランプ大統領は次の最大の目標に、法人税や中流家庭への減税を柱とする税制改革の実現を挙げている。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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