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米主要テレビが韓国の米軍基地から中継特番 北朝鮮脅威論を反映か

立岩陽一郎InFact編集長
在韓米軍基地から伝えるNBCのキャスター、レスター・ホルト氏。後方には米軍機

今月行われる米中首脳会談で米国のトランプ大統領は中国の習近平国家主席に対して、北朝鮮に圧力をかけるよう求めると見られる。軍事力行使をちらつかせるトランプ政権に、米国でも緊迫感が漂い始めている。こうした中、主要テレビが夜のメインニュースを番組ごと韓国から放送する異例の対応。警戒態勢の在韓米軍からキャスターが中継した。

米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は今月6日と7日、米国で首脳会談を行う。トランプ大統領はここで核開発を進める北朝鮮への厳しい対応を求めるものと見られており、中国側の出方が注目されている。

(参考記事:米トランプ政権、北朝鮮との事実上の「協議」入りをドタキャン(36))

こうした中、米NBCが3日の夜のメインニュース「Nightly News」を番組ごと韓国から放送。全てのニュースをメイン・キャスターのレスター・ホルト氏が厳戒態勢の在韓米軍基地から生中継で伝えた。

この中で、韓国軍と米軍が合同でレーダーによる監視を続ける状況や、高高度から北朝鮮を監視するU2偵察機などの活動、米軍兵士へのインタビューなども約10分間にわたって伝えた。

トランプ政権は、対北朝鮮政策に従来とは異なるあらゆる選択肢を視野に入れると表明している。マティス国防長官は3月31日、「北朝鮮を止めなければいけない」と発言。米国は今後、中国の出方を見ながらも、北朝鮮に対して軍事力をちらつかせた圧力を強めると見られる。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (22)~ケネディ前駐日大使、トランプ大統領の外交政策に憂慮示す)

NBCのNightly NewsはNHKの夜7時のニュースに比する米国を代表するニュース番組だけに、その異例の対応は米国内で高まる北朝鮮脅威論を反映したものと考えられるが、逆に脅威をあおり過ぎているとの懸念の声も出ている。

ワシントンポスト紙のデスクは、「米国民がかつてないレベルで北朝鮮の脅威を感じていることは間違いないし、トランプ政権の対応に明らかにこれまでと違う軍事的なものを感じている。NBCの判断は、そうした状況を見てのことだろうが、影響力の大きいニュースだけに、放送によって脅威をあおることにならないか心配だ」と話している。

(参考記事:沖縄で密かに行われていた陸自-米海兵隊合同訓練 米軍映像で確認 進む日米軍事一体化、沖縄でも

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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