Yahoo!ニュース

トランプ政権元側近がロシア・スキャンダルで議会証言か 内容によっては政権に痛手

立岩陽一郎InFact編集長
フリン氏の証言内容によっては厳しい立場に立たされるトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

ロシアとの不適切な接触が明らかになって辞任した米トランプ大統領の元側近、マイケル・フリン前国家安全保障担当補佐官が議会で証言する意向を示した。訴追の対象としない免責が条件となるが、証言の内容によってはトランプ大統領に大きな痛手となる。

トランプ政権発足時に国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン氏は、ロシア政府に科せられる制裁についてロシア側と事前に話し合いをしていたことが明らかになり辞任した。話し合いはトランプ政権発足前のことで、当時、フリン氏は民間人であり、民間人が政府の許可なく外交に関与することを禁じたローガン法に違反した疑いがもたれている。

(参考記事:安倍総理帰国後のトランプ大統領を襲った側近のスキャンダル~トランプの米国とどう向き合うか? (29))

これについてフリン氏の弁護士が30日に声明を出し、フリン氏は議会での証言に応じる用意があることを明らかにした。

声明は、「フリン将軍は確かに語りたい内容を抱えており、条件が認められれば語りたい」としており、訴追の対象としない免責を与えることを証言の条件としている。

一連のロシア政府との問題について、議会は上下両院の情報機関に関する委員会で調査を行うことにしているが、NBCテレビはこのうち上院はフリン氏の免責条件を受けない方針で既に弁護士に伝えていると報じた。下院は現在、検討中だという。

ロシア政府の大統領選挙への関与については、トランプ大統領の陣営の人間が絡んでいなかったのかなどが焦点となっており、FBIも捜査に乗り出している。また、フリン氏は駐米ロシア大使とオバマ政権の科す制裁について話し合っており、そのやり取りにトランプ大統領の陣営の他の関係者が関与していなかったかも焦点となる。このため、仮にフリン氏が証言した場合、その内容によってはトランプ大統領と政権に痛手になる可能性がある。

(参考記事:米トランプ政権で幹部の登用に忠誠心求める まるで「独裁国家」との批判も~トランプの米国とどう向き合うか? (32))

フリン氏の弁護士は、フリン氏は根拠無き中傷と常軌を逸した裏切り者の汚名を着せられた状態に置かれおり、免責を受けなければ不公正な訴追を受ける恐れが有るとしており、フリン氏が必ずしも違法な行為を行っていたわけではないとしている。

ローガン法は1799年に制定された法律で、民間人が政府の許可なく外交に関与することを禁じている。訴追されて有罪となれば懲役刑もあり得る。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (6)~トランプ米次期大統領に情報機関は何を語ったのか?)

※米国では退役後も軍隊時代の肩書を利用することが多く、フリン氏はフリン将軍と呼ばれることが多い。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

立岩陽一郎の最近の記事