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米国務長官の日本訪問が米国メディアに不評

立岩陽一郎InFact編集長
安倍総理と会談するティラーソン米国務長官(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

日中韓を歴訪しているレックス・ティラーソン米国務長官。日本では安倍総理、岸田外務大臣と相次いで会談し、北朝鮮に厳しい姿勢でのぞむことを言明するなどして米国でも報じられている。しかし、この訪問が米国のメディアからは評判が悪いという。発信があまりに少ないのだという。ついたあだ名が国務長官ならぬ「寡黙」長官とか。

レックス・ティラーソン国務長官は日本、韓国、中国を歴訪している。このうち日本では安倍総理、岸田外相と相次いで会談。北朝鮮の核開発、弾道ミサイル開発をこれまでの外交政策の誤りの結果だとして、今後は軍事力の行使も選択肢として排除しないとする考えを表明。このニュースは米国でもテレビ、新聞で取り上げられている。

しかし、ティラーソン長官は今回の3か国訪問に、国務省担当の各メディアの記者を同行させていない。唯一、保守系のオンライン・メディア「インディペンデント・ジャーナル・レビュー」の同行を認めただけだ。これに対して、米国の新聞、テレビ、通信各社が抗議をしているが、国務省側は「予算の都合上」としか答えていない。

これまで欧州、メキシコを訪問しているティラーソン長官だが、記者団の同行を認めていない。その動向が世界の注目を浴びる国務長官だけに、極めて異例だ。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (22)~ケネディ前駐日大使、トランプ大統領の外交政策に憂慮示す)

ティラーソン長官は報道対応がほとんどないことが指摘されている。外国の外相との会談内容が外国のメディアを通じて入るケースも多くなっており、米国のメディアの中に不信感が募っている様だ。

ワシントン・ポスト紙は17日の社説でこうしたティラーソン長官の対応を、「寡黙長官」と題して取り上げている。

この中で、ティラーソン長官の対応について、「オイル会社の取り締まり役としてはそれで良いかもしれないが、合衆国の大統領、この国の価値観、原則を代弁すべき外交のトップとしては適していない」と批判。元エクソン・モービルCEOであるティラーソン長官を皮肉っている。そして「同行各社は経費を支払っている」として国務省側の説明には理が無いとし、同行記者を認めるようあらためて求めた。

社説は、その上で「沈黙を守ることは(国際社会の安定にとって)逆効果であり、国際社会における米国の役割を減少させることになる」と結んでいる。

(参考記事:トランプ大統領、安倍総理宿泊のリゾート施設で公私混同の問題が再燃か~トランプの米国とどう向き合うか? (28)

ワシントンで官公庁を取材している公共放送NPRの記者は、「北朝鮮への対応が注目されている中でなぜ国務省の担当記者の同行を認めず、オンライン・メディア1社の記者だけ同行させたのか理解できない。ホワイトハウスの指示なのか?理解不能だ」と話している。

※記事中の「寡黙長官」はSecretary Silenceを訳したものです。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (27)~「トランプ船に乗った安倍総理」 米ジャーナリストから見た日米首脳会談

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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