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トランプ大統領が連邦最高裁判事を指名で、更に米国の分裂が深まるとの懸念も

立岩陽一郎InFact編集長
連邦最高裁判所前で中絶反対を叫ぶ人々(写真:ロイター/アフロ)

イスラム教徒の入国を制限した大統領令が全米各地での抗議活動に発展しているトランプ大統領だが、31日にも連邦最高裁判事1人を指名する。終身職の最高裁判事は大統領よりも米国社会に与える影響が大きいとも言われている。

これは、去年2月に死亡したアントニン・スカリア判事の後任を決めるもの。去年オバマ大統領が後任候補を指名したが共和党の反対で任命にいたらなかった。

●保守的な高裁判事からの指名か?

長く連邦最高裁を取材してきた米国人記者の話では、日本でいう高等裁判所の3人の判事の名前が有力候補として挙がっているという。3人は何れも保守的な判断を下してきたことで知られているという。40代後半から50代前半と若く、最高裁判所判事が終身職なため、何れが任命されても長期にわたって米国社会の規範作りを担うことになる。

最高裁判所判事は9人。死亡したスカリア判事は保守的な判断をしてきたことで知られるが、現在の8人については保守的な傾向を示す判事が4人、リベラルな傾向を示す判事が4人とされる。

●保守派に根強い最高裁判断への不満

トランプ大統領の支持基盤とされる保守派の人々には最高裁判所の判断に不満を持つ人が多いとされる。去年、最高裁判所は同性婚を認める判断を示している。また、1973年に妊娠中絶は女性の権利だとする判断も示しており、この判断を書き換えるべきとする意見が保守派の中で強まっている。ペンス副大統領は就任後に最高裁判所前で行われた中絶の全面禁止を求める集会に歴代副大統領として初めて参加し、政権として中絶の全面禁止を支持する考えを明言している。

●分裂が深まるとの懸念

対する民主党は、指名された候補者の議会での証言によっては任命に反対することにしている。最高裁判事の任命をめぐる議会での論議がトランプ大統領の政策への反発とも相まって、米国の分裂を更に深めるとの懸念も出ている。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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