Yahoo!ニュース

トランプ大統領のFBI長官続投方針で問われる「最強捜査機関」の独立性

立岩陽一郎InFact編集長
クリントン氏のメール問題で公聴会に出るコミーFBI長官(写真:ロイター/アフロ)

オバマ政権時代の政府高官をことごとく交代させる意思を示していたトランプ米大統領が、FBI長官を残留させる方向であることが明らかになり、最強の捜査機関が独立性を維持できるか懸念する声が出ている。

FBIのジェームズ・コミー長官残留のニュースは、ニューヨーク・タイムズ紙に続きワシントン・ポスト紙も報じた。コミー長官は10年の任期の4年目。FBI長官が任期途中で交代させられるのは稀だが過去に無いわけではなく、1993年にクリントン大統領が当時の長官を交代させている。クラッパー国家情報担当長官やブレナンCIA長官など情報機関のトップの交代が決まる中、その去就が注目されていた。

コミー長官をめぐっては、大統領選挙の直前にヒラリー・クリントン候補が国務長官時代に私的なメールを使った問題について捜査を再開すると公言し、それが選挙に影響したとしてクリントン陣営から批判され、民主党から辞任を求める声が出ていた。

トランプ大統領は、ロシア政府が大統領選挙に関して民主党本部にハッキングをかけたとされる問題や、自身の醜態をロシアの情報機関が把握しているとされる問題について、コミー長官などから説明を受けている。このうち、トランプ大統領の醜態に関する情報についてはコミー長官が1人で説明したとワシントン・ポスト紙は報じている。

FBIは、これらについて現在捜査中だ。また、オバマ政権がロシアに制裁を科した際にトランプ大統領の当時の政権移行チームの幹部がロシア政府と連絡を取り合っていたことがわかっており、これについても捜査を開始している。

更に、トランプ大統領は、自身のビジネスに絡んで大統領が外国政府から利益を得てはいけないとしている憲法に違反しているとして訴えられている。

一方、コミー長官がなぜ選挙結果に影響を与える可能性の高い捜査着手情報を漏らしたのかは不明で、現在、司法省が調査している。

言うまでもなくFBIは「最強の捜査機関」として知られる。盗聴などあらゆる捜査手法が許されている。政権のトップに数々の火種を持つ人物が就いたことで、今後FBIが独立を維持できない局面も出てくるのではないかとの懸念の声も出ている。

※当初の記事で「中立」としていた部分を「独立」に変更しました。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

立岩陽一郎の最近の記事