#AmazonHQ2: アマゾン第二の本社の地はどの都市に選ばれるのか

アマゾンが披露した第2の本社候補都市。米国東部に候補が集中している。

米国のテクノロジー企業は、米国投資への「積極姿勢合戦」の様相を呈してきました。

Appleはトランプ減税を受けて海外に滞留する2500億ドル以上の資金を活用し、300億ドルの米国内への投資を発表しました。

これまで10億ドルだった米国向け先端製造業ファンドを5倍の50億ドルに増額し、またネバダ州リノの市内に新たな施設を建設することも明らかになりました。リノは“The Biggest Little City In The World”といわれ、かつては金の集散地として栄え、ラスベガスに次いでカジノの街として知られています。

Appleは2017年4月に、新本社Apple Parkを完成させたばかり。新キャンパスの設立を含めて、向こう5年間で2万人の新たな雇用を創出するとしています。

そんななか、米国の各都市が注目しているのが、アマゾンの新キャンパスの行方です。アマゾンは「Amazon HQ2」というページを立ち上げ、第二の本社を開設する北米の20都市の候補を挙げました。

アマゾンは、顧客、従業員、コミュニティの利益につながるよう、HQ2の設立に向けて一緒に取り組む都市選びを公開プロセスで行うと説明しています。HQ2設置の都市に対して、アマゾンは50億ドル以上を投資し、5万人以上の好待遇の従業員を雇用する計画です。

もちろん建築やインフラ整備、ローカルビジネス拡大などの副次的な都市の成長を見込むことができるため、なかには都市の発展の足がかりとなるテクノロジー業界の大企業の招致に賭けている部分もあります。

ただ、良い面ばかりではないことはサンフラニスコ周辺やシリコンバレーで過ごしていて感じる部分です。

5万人という新たに採用する人々が全て地元から選ばれるとは限らず、全米から人が集まってくることになるはずです。しかもテクノロジー企業基準の給与が与えられることから、居住コストや物価などが間違いなく上がることになるでしょう。

各都市は経済発展の起爆剤にアマゾン HQ2招致を活用したい一方で、既存のコミュニティとの格差をいかに生じさせないか、といった舵取りも行っていく必要があるでしょう。

アマゾンが第2本社の候補に挙げた都市とひとことメモを、以下にご紹介します。都市の場所は、冒頭の地図を参照して下さい。

・アトランタ(ジョージア州)

順調に雇用を増やし投資を集めるジョージア州におけるビジネスセンターで、再開発地や交通などのインフラが整っています。

・オースティン(テキサス州)

アマゾンが買収したWhole Foods Marketの本社所在地で、Apple、Google、Facebook、Microsoftなどもオフィスを構えている都市です。42万人以上の学生がこのエリアにおり、優秀な学生の雇用にも向いているといえます。年次のエンターテインメントやテクノロジーが集うイベントSXSWが開催されることでも知られています。

・ボストン(マサチューセッツ州)

他の都市に比べて手狭かもしれませんが、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などの教育機関が立ち並び、人材の宝庫となっています。また、GEが本社を移したことでも知られています。

・シカゴ(イリノイ州)

ボーイングやユナイテッドなどの航空産業が拠点としており、マクドナルドも2018年に本社を移すことになっています。今回候補となっている都市の中でも第3位の人口規模を誇ります。

・コロンバス(オハイオ州)

オバマ政権時代、77都市の競合を抑えて、2016年にスマートシティチャレンジで勝利した街。アマゾン本社機能を誘致するエリアの交通インフラ投資も行うほか、15年間の不動産に関する税の軽減を行うとしています。

・ダラス(テキサス州)

全米で第5位の516万人の経済圏を持つ都市。アメリカン航空のハブ空港として交通の利便性が高く、テキサスインスツルメンツやエクソンモービルなどの産業が集積しています。家賃などの基本的な生活コストが非常に低いことも魅力です。

・デンバー(コロラド州)

空の交通の要所となっており、旅客機では全米5位、流通では3位の規模を誇ります。近年、新興のテクノロジー企業も勃興しており、ビジネスのしやすさをアピールしています。

・インディアナポリス(インディアナ州)

アマゾンがHQ2を設置する都市の要件を数多く満たしている都市。近年Salesforce.comがその存在感を示しており、テクノロジー産業の集積が見られるそうです。

・ロサンゼルス(カリフォルニア州)

米国西海岸で唯一選ばれた候補都市。その理由は、そもそもアマゾンの本社が西海岸の北端のシアトルにあること、サンフランシスコ・シリコンバレー周辺にもオフィスはありますが、居住環境やスペースの問題で候補にできないことなどが挙げられます。世界のエンターテインメント産業の中心で、2028年の夏季オリンピックも予定されています。

・マイアミ(フロリダ州)

テクノロジー産業の集積も見られる都市で、特にラテン系の人種多様性は、複数の言語を扱うことができるソフトウェアエンジニア人材の豊富さという点で、アマゾンに対するセールスポイントになるとみられています。

・ナッシュビル(テネシー州)

米国南東部で第4の都市となり、音楽産業の集積で知られている都市です。コロンバスと並んで、主要ハブ空港が存在しない都市ながら、住環境の良さなどから、20都市の候補に残っているようです。

・ニューヨーク・ニューアーク(ニューヨーク州、ニュージャージー州)

米国の経済やメディア産業の中心地。アマゾンの新本社機能向けには、ミッドタウン・ウェスト、ロングアイランドシティ、ブルックリン、ロウアー・マンハッタンなどを候補に挙げています。また、対岸のニュージャージー州では、70億ドルの税優遇策を用意し、招致を行おうとしています。

・フィラデルフィア(ペンシルベニア州)

ペンシルベニア大学やドレクセル大学などがある学際都市で、ニューヨークまで130km、ワシントンD.C.へ200kmと、車や鉄道を使った陸路でのアクセスもできる。

・ピッツバーグ(ペンシルベニア州)

フィラデルフィアと並んで選ばれたペンシルベニア州の都市。カーネギーメロン大学・デュケイン大学・ピッツバーグ大学などの教育機関が多数あります。鉄鋼業から脱却し、ハイテク、金融、教育などの新しい産業が栄えています。

・ローリー(ノースカロライナ州)

デューク大学、ノースカロライナ大学などの教育機関が整い、優秀で多様性ある人材と強固なインフラ基盤をアピールしている都市です。

・トロント(カナダ・オンタリオ州)

今回の北米の都市の中で唯一のカナダからの選出。米国の他の都市に比べて、ビジネスや居住のためのコストが非常に低いことをアピールポイントにしています。

・ワシントンD.C.(コロンビア特別区、バージニア州、メリーランド州)

米国の首都周辺エリアも、候補都市に入っています。

皆さんが訪れたことがある都市は入っていたでしょうか。

現在のアマゾンの本社はワシントン州シアトルにあり、航空産業のボーイングの本社があるほか、スターバックス創業の地としても有名です。

テクノロジー産業では、アマゾンの本社があり、近郊レドモンドには世界最大のソフトウェア企業マイクロソフト、ニンテンドー(米国法人)といった大手企業が本拠地を置いており、南隣のオレゴン州ポートランドとともに「シリコンフォレスト」を形成しています。

米国の西海岸北部エリアをカバーしている現在の本社から考えると、第二の本社機能は、東海岸に配置した方が良いのかな、と考えてしまうのは私だけでしょうか。

1980年東京生まれ。現在、米国カリフォルニア州バークレー在住。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。テクノロジーを活用した新しい学びを研究・ビジネス化するキャスタリア株式会社取締役。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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