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「仕事フェイスブック」定着するか? - Facebook at Workリリース

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Facebookを仕事で利用する環境とアプリがリリースされました。

Facebookは、仕事用のFacebookとも言うべき「Facebook at Work」をリリースし「Work」というモバイルアプリも掲出しました。しかしながら、企業登録が必要であるため、ほとんどのユーザーからは利用できません。

Facebookは昨今の調査で、若年層だけでなく高い年齢層でもアクティブなユーザーが減少するなど、モバイル広告の売り上げの好調さに対して、ユーザーからは少しずつ離れられている傾向にあります。

その一方で、公私入り乱れた人のつながりの巨大なデータベースは、少しずつ「生活」というか「人生」に欠かせない情報という要素を持ち始めました。Facebookはプラットホームをユーザーに多角的に有効活用してもらおうという努力を続けている点で評価できます。

ニュース、写真、そして今回のテーマは仕事、というわけです。

とはいえ、仕事の環境とFacebookは、現状反りが合いません。きちんとハックすれば、Facebookのコミュニケーションだけで仕事が舞い込んでくる状況を作ることができますが、多くの一般的な仕事をしている企業では、Facebookは禁止事項に含まれることが多いでしょう。つまり、仕事ではなく「遊び」に分類される可能性が高い、ということです。

海外でもそれは同じ事なのかも知れません。そこで、Facebookは、投稿、メッセージング、グループといった企業内コミュニケーションの機能に限定したアプリ「Work」をリリースするに至ったのです。

Facebookを社内コミュニケーションで使う理由は、習得コストの低さとアテンションの高さ

Facebook at Workで活用するのは、巨大な人的ネットワークの記述だけではありません。Facebookアプリを使いこなせるという要素もまた、重要な動機になります。一例を示しましょう。

私が所属するCastaliaは、主たる社内コミュニケーションをFacebookで行っています。

メッセージのスレッドは複数存在しており、社内ですべてのスタッフが共有しているグループが1つ存在しています。グループをいくつかに増やしたこともありましたが、1つの方が効率的でした。

様々なグループウェアアプリがありましたが、Facebookを利用してきた理由は以下の5つです。

  • Facebookアプリ、メッセージアプリは、社員全員が日常のコミュニケーションで深く習熟して利用しているため、仕事に転用しても新たなツール習得コストがゼロ。
  • デスクトップではブラウザのタブ1枚に必ず開いており、モバイルでもアプリから利用する事ができるため、情報流通が最も素早く行える。
  • 特にモバイルアプリでは、プッシュ通知によってグループやメッセージの最新投稿が瞬時に共有される。
  • スレッド構造を持つグループ投稿は、ディスカッション、緊急対応などに最適。
  • グループメッセージによって、社外の人々とのコミュニケーションもキックスタートできる。

10人規模の企業では、お金を払って専用ツール導入に投資するよりも、Facebookの活用を工夫した方が素早く、また確実だったという、「実情」もあります。もちろん社内外に置いてセキュリティやプライバシー上の懸念があるコミュニケーションはメールになりますが、流量は驚くほど少なくなりました。

Facebookとして、仕事で利用する前提のツールを提供してくれることは、Castaliaとしても非常に歓迎すべきですが、おそらく我々は通常のFacebookアプリを使い続けることになると思います。その理由は、仕事中のFacebookを禁止していないから、です。

皆さんの仕事の環境ではどうでしょうか。FacebookもしくはWorkがフィットする可能性を、見出すことができるでしょうか。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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