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岸田首相も河野デジタル相も該当する政治家の「3代目世襲」約50人の検討。「王国」から途絶家系まで

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
この方も3代目(写真:つのだよしお/アフロ)

 岸田文雄首相が広島選出の「3代目世襲」であるのは知られた話で、4代目になるであろう息子を秘書官にして公私混同問題を引き起こしたのは記憶に新しいところ。他にも岸田政権樹立後に国務大臣となった3代目は岸信夫防衛相、寺田稔総務相、葉梨康弘法相、河野太郎デジタル相、堀内詔子五輪担当(4代目)、林芳正外相(同)と6人。党役員だと麻生太郎副総裁、福田達夫総務会長。うち寺田・葉梨の両氏は不祥事や舌禍で事実上更迭。河野大臣はマイナカード問題で火だるま。「大丈夫かあ」状態です。

 そもそも民主主義国家で3代も4代も同一家系で世襲されるといった事態がなぜ起きているのか。該当する約50人を総まくりしてみました。

 今回扱う「3代」は祖父母→父母→子がすべて国会(衆参両院)か帝国議会(貴族院と衆議院)の議員を務めた者とし、地方議会議員や首長は含めません。先代の実子以外は、甥姪、先代の子や甥姪を配偶者に迎えた者(婿を含む)、養子で、いずれも原則として地盤も継いでいるケース。参議院への転出は出身地の都道府県選出か比例区。衆議院比例ブロック単独の場合、同ブロックが先代出身地に属するのを条件としています。

 一覧表は最後に掲載したので好事家のみご覧下さい。政党名を特に付していなければ自民党系。敬称略。

「世襲ばかり」の山口、群馬、青森、岐阜、岡山

 何といってもキングオブ世襲は山口県。選挙区が次回総選挙から4→3となるなか1区の高村正大が3代目で2区の信千世、3区の芳正は4代目。ガチガチです。

 群馬県の小選挙区5のうち2区以外の実に4が3代目。中曽根康隆(1区)、笹川博義(3区)、福田達夫(4区)、小渕優子(5区)。うち3人が父か祖父を首相に戴く超名門。

 青森県の小選挙区3のうち津島淳(1区)と木村次郎(3区)の2議席が3代目。2区も祖父・親が地元首長や議員を務めた「準世襲」です。

 岐阜県も似たような構図。小選挙区5のうち武藤容治(3区)、金子俊平(4区)、古屋圭司(5区)が3代目で残る1区の野田聖子が2世、2区は祖父が衆院8回当選の棚橋泰文。

 選挙区が次回総選挙から5→4となる岡山県も3代目の「宝庫」。非世襲は新2区だけで逢沢一郎(新1区)、橋本岳(新4区)、平沼正二郎(旧3区)が3代目で新3区は2世の加藤勝信。橋本(父)、平沼(初代)が首相輩出の家柄でもあります。

「王国」ゆえに多すぎて煽りを食ったケース

 もっとも3代目は2代目と異なる苦労も。2代目が初代の後援会組織を引き継いで比較的順調に進むのに対して3代目となるとさすがに初代の応援団が高齢化し、新たな票を開拓しなければなりません。後援会メンバー自体が世襲化して縮小再生産へ陥るのです。

 また世襲が目立つのは地方。選挙区割り変更や定数削減に見舞われて煽りを食うケースもあります。

 先に挙げた「王国」5県ですらその傾向が見られるのです。区割り変更で津島淳は別の現職と小選挙区出馬を比例と交互に立候補する「コスタリカ方式」を受け入れているし、中曽根康隆の初当選は1区を別の2世へ譲って比例単独。再選時に選挙区を奪い取りました。平沼正二郎は選挙区に現職がいて自民公認を得られないまま2度戦って2度目に当選するも定数削減で次回は比例単独へ回る予定。

 林芳正は参院当選5回と塩漬けの憂き目に遭い、業を煮やして21年総選挙で衆院3区から出ると表明。当選10回のベテランをなかば追い出す形で選挙区を奪取したのです。

3代目をもって途絶した家系

 王国で上記のようなしのぎ合いをするぐらいだから、そうでない地域の3代目も多くが苦労をしています。「売り家と唐様で書」いたかどうかはともかく3代目で途絶した名門をご紹介。

 中島飛行機(現在のSUBARUの前身)創業者にして戦前の立憲政友会総裁も務めた中島知久平の家系(群馬県)は子の源太郎が継いだ後、孫へバトンタッチするも汚職事件で1999年に辞職。断絶しました。

 栃木県の植竹家は初代が参院5期を務めた後に2代目に継承。あまり選挙に強くない方で2005年に引退すると孫が栃木4区で出馬意欲をみせるも現職との公認争いで敗北。一度も当選していません。静岡大石家3代目の秀政も現職との公認争いに負けて00年、2区で無所属出馬するも落選して引退したケースです。

 長野県は2家が途絶しています。戦前の鉄道大臣・小川平吉を祖とする小川家は3代目の元が2000年総選挙で落選して引退。記念すべき1890年第1回総選挙以来、議席を維持してきた小坂家は4代目の憲次が2009年の政権交代選挙で民主党候補に敗れて議席を失い、その後参院議員を1期務めるも15年に引退し、まもなく病没。後継者を出さないまま途絶したのです。

 09年選挙を機会に終えた家系としては秋田二田家も。3代目の孝治が1区で落選して引退。断絶しました。

 広島には岸田文雄現首相(1区)、池田勇人元首相の系譜(5区)と並んで3代続いた中川家(4区)がありました。俊直が2度の総選挙を選挙区で勝っていたところ17年に醜聞に襲われて離党。候補者を差し替えられました。21年総選挙に無所属で立候補(落選)しているので復活があり得るかも。

ライバルと死闘を繰り広げる御曹司

 反対に断絶危機にありながら乗り越えたり、必死の綱渡りをしている御曹司もいます。

 自民から新党さきがけ結成に参画して代表も務めた井出家2代目の正一が1996年に長野3区で落選して途絶していたのを甥の庸生が2012年選挙でみんなの党から挑戦して比例復活当選を果たしました。その後、政党を変遷しつつ現在は自民現職として4選。

 参院議員で自民から新進党へ移った2代目の父を継ぐべく衆院香川1区から同党公認で1996年に出馬した平井卓也は落選。次の2000年総選挙は無所属で初当選して以来、立憲民主党の小川淳也と死闘を繰り広げて今日に至ります。

 当選13回(鹿児島1区)の大物・保岡興治(2代目)が病を得て17年総選挙に息子の宏武を後継候補とするも野党候補にまさかの敗北(落選)。この年は鹿児島県の小選挙区が5→4へと削減。あおりを食った現職の宮路拓馬が比例単独に回って、こちらは当選。

 そこで21年総選挙の1区候補は宮路となって快勝。宏武も比例単独で初当選したとはいえ1区には帰れなくなったのです。やむなく土地勘のない2区で次回総選挙に挑む格好ながら同選挙区は県知事から転身した無所属で自民入りを目指す三反園訓がいて予断を許しません。

1都3県は郊外。大阪は維新旋風で苦戦中

 1都3県や大阪も3代目を確認できるとはいえ浮動票や無党派層が多いためか定数に比して多くありません。都府県の中心部というより郊外で比較的目立つようです。

 埼玉は2代続けて参院議員で知名度が極めて高かった土屋品子(13区)、地元の名士である三ッ林裕巳(14区)。千葉は外房で戦前の財閥「森コンツェルン」を創った初代から圧倒的に強い英介(11区)が君臨。

 神奈川11区の小泉進次郎(4代目)と15区の河野太郎の選挙区は横浜市街からJRで30分~40分とやや離れています。横浜市内の3区には3代続いた小此木家の八郎が21年、横浜市長選に出馬して敗北・引退してしまったのです。

 大阪市内が選挙区の3代目2人は今は「維新旋風」を食らって浪人中。2区の左藤章と4区の中山泰秀が当てはまります。

参議院転出組

 衆議院で敗北したのを機に参議院議員に転出したり、もとから参院議席を得てきた家系も。

 「王国」青森は2代目山崎竜男と後継ぎの力(21年死去)が参院。4代目の娘が現在、県内の市長を務めています。同じく「王国」山口佐藤栄作元首相の家系は現在、孫娘の配偶者である阿達雅志が参院比例区で議席を維持。

 閣僚を歴任した愛知揆一の養子・和男は衆院選挙区議席を失い、3代目の治郎は参院宮城選挙区へ転出。似た例として千葉1区を世襲しようとして落選した3代目の臼井正人も参院へと回りました。衆院和歌山選挙区で落選後参院に5回当選した2代目・世耕政隆を継いだ当代の弘成はずっと参院。伯父の宮澤喜一元首相(父は参院)の地盤を継いだ洋一は09年の政権交代選挙で落選して参院広島選挙区へ鞍替えしています。

 自民党を離れて非自民連立政権の首相を務めた羽田孜(2代目)は選挙区の長野7区で「絶対勝てない」と称されたほど選挙に強かったのですが引退時に属していた当時の民主党が同一選挙区を譲る形の世襲を認めなかったので秘書に後を託したのです。現在は3代目の羽田次郎(立憲民主党)が参院長野選挙区で議席を持っています。

盤石一族

 最後に3代に至るまで多少の空白期間があったとしても盤石な世襲一族(上記記載者を除く)を北から南へ。

 北海道5区の和田義明は2代続いた町村家の娘の配偶者。山形3区の加藤鮎子は「加藤の乱」で有名な加藤紘一の実子。栃木1区の船田元、茨城3区の葉梨康弘、山梨2区の堀内詔子(4代目)、富山3区の慶一郎は全代同一の苗字。三重1区の田村憲久は4区から、三重2区の川崎秀人(4代目)は父の代で1区から国替えして存続中です。

 福岡8区の麻生太郎自民党副総裁は麻生家の祖父が非議員、曾祖父が麻生グループの祖。母方の祖父である吉田茂元首相の選挙区は高知県で、こちらの地盤は継承していません。

 福岡6区の鳩山二郎(5代目)は父の邦夫まで東京都選出でした。ただ邦夫が途中で国替えした福岡6区は母方の祖父にあたるブリヂストン創業者・石橋正二郎氏の出身地で名声が轟いているため世襲とみなしました。

 福岡9区の三原家は2代目の朝彦の子が公募で名乗りをあげています。もう1人の候補との党員投票で勝てば自民公認。12日に結果が出る予定です。

 野党系では立憲民主党の4代目・下条みつ(長野2区)と国民民主党の3代目・西岡秀子(長崎1区)が挙げられます。

3代目世襲一覧

 続柄は先代に対して。所属政党は当代。地域は衆院比例ブロックにならう。苗字表記は初代および義子などによって変更した場合のみ表記。■は首相経験者

【自民党】

北海道

町村金五─信孝─和田義明(義子)北海道5区

東北

津島文治─雄二(姪婿・義甥)─淳 青森1区(コスタリカ)

木村文男─守男─次郎 青森3区

加藤精三─紘一─鮎子 山形3区

北関東

船田中─譲─元 栃木1区

■中曽根康弘─弘文(参院)─康隆 群馬1区

笹川良一─堯─博義 群馬3区

■福田赳夫─■康夫─達夫 群馬4区

小渕光平─■恵三─優子 群馬5区

葉梨新五郎─信行─康弘(養子) 茨城3区

上原正吉─土屋義彦(甥)─品子 埼玉13区

三ッ林幸三─弥太郎─裕巳 埼玉14区

南関東

森矗昶─美秀─英介 千葉11区

小泉又次郎─純也(娘婿)─■純一郎─進次郎 神奈川11区

河野一郎─洋平─太郎 神奈川15区

堀内良平─一雄─一光雄─詔子(義子) 山梨2区

東京

■福田赳夫─越智通雄(義子)─隆雄 東京6区

北陸信越

井出一太郎─井出正一─庸生(甥) 長野3区

橘直治─康太郎─慶一郎 富山3区

東海

武藤嘉門─嘉一─嘉文―容治 岐阜3区

金子一平─一義─俊平 岐阜4区

古屋善造─慶隆─亨─圭司(甥・養子) 岐阜5区

田村?─元─憲久(甥) 三重4区→1区

川崎克─秀二─二郎─秀人 三重1区→2区

近畿

左藤義詮─恵─章(娘婿) 大阪2区

中山福蔵・マサ─正暉─泰秀 大阪4区

中国

逢沢寛─英雄─一郎 岡山1区=新1区

■平沼騏一郎─赳夫(養子)─正二郎 旧岡山3区→比例単独へ

橋本龍伍─■龍太郎─岳 岡山4区=新4区

岸田正記─文武─■文雄 広島1区

■池田勇人─行彦(義子)─寺田稔(義理甥) 広島5区

高村坂彦─正彦─正大 山口1区

安倍寛・■岸信介─安倍晋太郎─岸信夫─信千世 山口2区

林平四郎─佳介─義郎─芳正 山口3区

四国

平井太郎─卓志(娘婿)─卓也 香川1区

村上紋四郎─○─信二郎─誠一郎 愛媛2区

九州

鳩山和夫─■一郎─威一郎─邦夫─二郎 福岡6区

■吉田茂─麻生太賀吉(義子)─太郎 福岡8区

三原朝雄─三原朝彦─息子 福岡9区出馬予定

保岡武久─興治─宏武 鹿児島1区→2区変更予定

【参議院自民党】

愛知揆一─和男(養子)─治郎(参院3期で19年落選) 宮城

臼井荘一―臼井日出男(衆8回)―正人(参院1期) 千葉

世耕弘一―政隆(衆1・参5)─弘成 和歌山

宮澤裕一─■喜一(長男)・弘(次男。参)─洋一(弘の子で喜一の広島7区継承。落選後参院へ) 広島

■佐藤栄作─信二─阿達雅志(義子) 参院比例

現時点で国会議員が3代で途絶したとみられる家系

山崎岩男─竜男─力(16年参院選落選)─※娘(県内の首長)青森

初代二田是儀─2代是儀(養子)─孝治(09年落選引退) 秋田1区

中島知久平―源太郎―洋次郎(1999年議員辞職) 群馬旧2区

小此木歌治─彦三郎─八郎(21年横浜市長選で落選引退) 神奈川3区

小川平吉─一平─元(00年落選引退) 長野4区

小坂善之助─順造─善太郎─憲次(15年に引退) 長野1区

大石八治―千八―秀政(00年無所属で出馬落選引退) 静岡2区

砂田重政─重民―圭佑(甥。05年無所属で出馬落選離党) 兵庫1区

中川俊思─秀直(娘婿)─俊直(17年出馬断念) 広島4区

その他

桜内幸雄─義雄(衆院島根)─文城(妻が義雄の孫)愛媛から野党系として当選歴あり

立憲民主党

石原幹市郎─健太郎─洋三郎(12年に落選後、現在は福島市議) 福島1区

小宮山常吉(参)─重四郎(衆)─泰子 埼玉7区

山花秀雄─貞夫─郁夫(21年落選) 東京22区

下条正雄─康麿─進一郎─みつ 長野2区

羽田武嗣郎─■孜─次郎(参院) 長野

有馬頼寧─(娘が亀井家の配偶者)─亀井久興─亜紀子 島根参1衆比例1

国民民主党

西岡ハル─武夫─秀子 長崎1区

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

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