業者と消費者との間でトラブルが発生しやすい7つの取引に対して不当な勧誘行為を取り締まる特定商取引法が改正され今年6月から施行(効力を持つ)されます。同法および消費者契約法は社会の変化に応じて編み出されてきた悪徳商法を締め出すべく改正を重ねてきました。今度の改正で何が変わるのかを確認しておきます。

代表格は「健康食品、化粧品、飲料」

 最大の改正点は「詐欺的な定期購入商法」とおぼしき通信販売への取り締まりです。

 国民生活センターの調べによると「健康食品、化粧品、飲料」が代表的で主にネット通販。「1回限りの注文のつもりが『定期購入』だった」や「いつでも解約できるはずなのに、販売業者に電話が繋がらず解約できない」といった事例が挙げられています。相談件数も2020年は18年の2.4倍と激増。10~20代に多くみられます。

 いくつかの理由を挙げてみましょう。

1)主役はネットである

 放送・新聞・雑誌などの広告は発行・発信者側が事前に好ましくないものを排除し得るのに対してネットの多くはプラットフォーマー(PF。GAFAなど)。場を提供しているだけという姿勢に批判が高まり21年に「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」が成立する(今月から施行)も努力義務に止まったり罰則がないなど実効性に疑問が残ったままです。

2)通信販売はクーリングオフの対象外

 売買は契約で一方的には取り消せません。ただしクーリングオフという消費者側が一方的に解約でき、お金も戻ってくる制度が特定商取引法が対象とする商法に適用できます。ただし「7つの取引」のうち通販だけ対象外。訪問販売や電話勧誘販売(いずれも対象)と異なってじっくり自分で買うか否かを考えられ、かつ自らの意思で購入できるから、というのが理由です。

 ただしネット通販の実態は「玄関を通らない訪問販売」とも電話勧誘と変わらないともみなせます。当たり前のようにオンライン動画広告を見慣れた若い世代は刺激的な内容で不意を突かれて衝動買いしてしまうのも仕方ありません。言い換えると業者はそこを狙うのです。

3)「定期購入でないと誤認させる表示」の横行など

 改正法が「詐欺的」という言葉を用いているゆえんです。6月からの新制度も主にこの辺の取り締まり。以下に説明します。

「初回無料」「限定」「お試し」を強調した定期購入への誘導広告表示はアウト

 消費者庁が示す「違法となるおそれのある表示」を参考に紹介します。

1)「初回無料」「限定」などと強調された字句が踊る一方で離れた場所に小さく「このコースは5回定期購入契約である」などの具体的内容を記すような表示はアウト。

2)「サプリメントお届けコースに参加する」「送信する」といったあいまいな文言のボタンをクリックしたら申し込みが完了するといった設定はアウト。「注文を確定する」といった明確な文言であっても確定ボタンの下に具体的な内容が書かれていたらアウト。

3)「お試し」と「1回だけ試しに……」と認識される文言を大書しているのに実際は「5回定期購入契約である」などと矛盾した内容はアウト。

4)安価な「初回お試し価格」(例えば500円)のみを強調し、実際には「5回定期購入を条件に初回が500円。2回目からは3800円」といった契約の内容を「500円……」と大書された画面から離れて掲載していたり小さな文字で示していたらアウト。

「誤認させるような表示」での申し込みは取り消せる

 「誤認」以外で重要なのは「契約解除の妨害」行為の禁止です。表示に関しては以下の通り。

1)「いつでも解約可能」と強くうたっていながら「注意事項」と称して「解約は専用チャットからの連絡のみ」「電話での解約はできない」「解約料あり」などの条件を離れた場所に小さく表示していたらアウト。

2)「確定」ボタン以外の手段が提供されていなければアウト。

3)一応「1回のみ」と「5回定期購入」から選択できる形でも初期設定が後者のみになされていたらアウト。

 以上に挙げたのは「誤認させるような表示」です。実際にはさらに悪質な「不実の表示」「不表示」も。こうしたすべては買った側に申し込みを取り消せる制度が新たに設けられました。

 「取り消せるといわれても(上記のように)『電話が繋がら』ない」であれば全国の消費生活センターや国民生活センターの統括窓口「消費者ホットライン」(電話番号188=「いやや」)へ即相談。消費生活センターは自治体が設置するれっきとした行政機関で相談員が不当性を認識すれば該当する通販会社に掛け合ってくれる可能性大です。

 クレジットカード払いで契約していたら直ちにカード会社へ「カードの利用停止」を申し込みましょう。紛失などと理由を偽らずに「詐欺的な定期購入商法に引っかかって電話解約できない」と正直に。

 警察に被害届を出すのも有効です。「誤認させるような表示」があったと認められた時点で改正法は罰金刑以上の対象としているため第1次捜査権(=犯罪捜査を第一に行う)を持つ警察に駆け込むのは筋。何だかんだ渋られる可能性なきにしあらずですが粘って届け出たいところ。

主に高齢者を狙う「送り付け商法」も規制

 「詐欺的な定期購入商法」の被害が若者に多く見受けられるのに対して高齢者が狙われやすいのが「送り付け商法」。改正法は対策をさらに強化したのです。

 「送り付け商法」とは頼みもしない商品を一方的に送り付けて代金を請求するもの。元来支払い義務はないのですが電話などで「バカヤロウ」「死んでしまえ」などと怒鳴り散らされて恐ろしさのあまり支払ってしまうといった被害が出ていました。

 改正前も受け取り手が14日間保管したら処分可能でしたが、言い換えると14日間は送り手に商品返還が請求できるともいえ、そこを見越して14日で変質してしまう生鮮食料品などを送って、傷むなどして14日経つ前に受け取り手が処分してしまったら送り手がカネ払えと追い込んでくるトラブルが絶えなかったのです。

 そこで改正後は直ちに処分して一向に構わないと明示しました。こちらはすでに施行されているのです。

 クーリングオフ対象の取引では電子メールでも通知できるよう簡便化されています。

悪党はあくまで騙した側 

 商品の不当表示は1960年に発生した「にせ牛缶事件」(中身はクジラや馬の肉だった)を戦後の嚆矢として姿形を変えながら「これでもか」と現代にまで至っています。石川五右衛門風にいえば「浜の真砂は尽きるとも世に欺きの種は尽きまじ」。騙された者は決して悪くありません。悪党はあくまで騙した側。泣き寝入りせずに戦いましょう。