17日から通常国会が始まります。筆者は昨年12月「国会議員の『推定年俸4800万円』」と題した記事を掲載しました。その際に金額のみで論じるのはフェアでなく仕事ぶりと勘案して判定すべきという旨を記しています。ちょうどいい機会ですので今回試みた次第です。

「正当な理由」で国会を休めば歳費が満額支給

 国会議員の定数は衆議院議員465人(任期4年)と248人(2022年通常選挙後。任期6年)の計713人。衆議院は解散があり得て現憲法下での最短在職日数は195日。

 身分は特別職の国家公務員。普通の公務員のような服務規程や常勤義務はなく(ゆえに残業手当のような概念もない)、必ず出席しなければならないのは召集日初日(国会法)のみ。といって開催中に休み放題が許されているわけではなく議長に欠席届を出して受理されなければなりません。そうした手続きをせずに「正当な理由がなく」休むと議長が「招状」(=「来い!」)を発し、なお「故なく出席しない」と「懲罰委員会」に付されて最悪「除名」(=クビ)。ただし現憲法下での該当者は2人しかいません。

 欠席理由を衆議院は公開していないので詳細はわかりませんが「体調不良」「所用」あたりで大丈夫なもよう。欠席中も歳費は満額支給されます。

21年の会期は180日で週3勤4休。年間勤務は推定100日ほど

 とはいえ憲法が国会を「国権の最高機関で、国の唯一の立法機関」とし「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定める以上、国会議員が「全国民を代表」して国会に出席し、「立法」(法律を作ったり改廃する)に携わるのが一義的な仕事と期待されていると解するのが妥当でしょう。

 国会は3種類。1月に召集され150日の会期が決まっている通常国会と、議員や内閣の要請で開かれる臨時国会および衆議院議員総選挙後に召集される特別国会です。2021年のそれぞれの会期は次の通り。

・通常1回 150日

・臨時2回 計27日

・特別1回 3日

計180日となります。

 うち本会議の定例日が衆議院3日(火・木・金の午後1時から)参議院3日(月・水・金の午前10時から)で委員会もここにかぶせる形。単純にいえば週3勤4休。週休2日制の会社員・公務員よりゆとりがあります。もっともこれは原則で召集当初や会期末は連日開かれたり、委員会によってはグッと過密になるのです。

 そんなこんなをある程度反映した上で21年に国会へ議員が出席した日数はざっと80日~100日といったところでしょう。衆参両院への出席が必要になる首相か政務三役(国務大臣・副大臣・大臣政務官)を兼ねればもっと忙しいのですが、こちらは三権のうち「行政」側の任務となります。

法案の大半は行政側が作成

 次に国会議員の主な仕事である立法について。21年通常国会で可決成立した法案は約70。大半が閣法(内閣提出法案)です。

 内閣は首相と国務大臣で構成される「行政府」トップで憲法の「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出」規定に基づき案出して「立法府」=国会の判断を仰ぐという形式となります。もっとも実際に法案を作成するのはほとんどの場合、中央省庁(文部科学省や外務省など)に勤める国家公務員。重要法案(首相が意気込んでいる法案)ともなれば徹夜の連続で文言を調整していきます。出来上がったら各府省庁の幹部が「これでいいのか」の判断をし、GOとなれば「与党審査」にかけられるのが通例です。

 与党とは首相の味方側にいる政党。それ以外は野党と呼び習わします。つまり閣法作成に関与するのは与党議員のみ。ただ与党審査は法的根拠がないので直ちに国会議員の仕事とはいえません。

 さらに内閣法制局(非議員)に法律としての欠陥はないかなどチェックしてもらってOKとなれば閣議決定されて衆議院または参議院どちらかの議長へ提出されます。議長は委員会へと付託(審議を依頼して任せる)。ここからが与野党問わず国会議員の仕事となるのです。

野党の法案の多くはたなざらしで消滅

 野党も法案を作って国会にかけられます。衆議院20人(予算を伴う場合は50人)、参議院10人(同20人)で提案でき、一般に議員立法と呼びます。もっとも野党提出の議員立法はおおむね低調。最大の理由は提出されないからではなく、提出されても相手にされないから。

 議員立法が国会に提出されたら、どの委員会に付託するかを議院運営委員会(議運)が決めるのですが、議運の構成は基本的に多数が与党なので野党提出の法案を嫌い、結果的に多くが付託先も決まらないままたなざらしになって消えてしまうのです。

主な仕事は質疑と採決

 日本の国会は委員会中心主義を採用しています。法案の数が増え、その内容も専門的になってくると議員全員が集う本会議ではなく、まず省庁と対応した分野別の常任委員会(衆議院18、参議院16)を中心に話し合います。議員は少なくとも1つの常任委員会の委員とならなければいけません。委員の数は会派に所属する議員数の比率とほぼ一緒。したがって会派が大きいほど多くの議員を送り込めます。

 委員会ではまず担当国務大臣や副大臣が法案の狙いなどの説明を行います。その後、委員との質問のやりとり(質疑)が始まるのです。順番や時間はあらかじめ決められていて、そこが過ぎたら採決です。もめると議長の指名による委員長と、委員長指名による理事(いずれも慣例)によって今後を話し合います。それでも収まりがつかない場合、運営は委員長の職権ですので、それを行使する場面もあります。採決は起立や挙手で行われます。

 委員会を通過すると舞台は所属議員全員が構成する本会議へ。委員長から全議員に「本法案は委員会で可決されました」と報告された後に討論が行われて採決です。手法として「起立」「記名投票」「異議の有無」「押しボタン式投票」があります。記名投票は議長が必要があると判断した際に行われ、たいていは「起立」です。「押しボタン」は参議院のみの方法で、賛成か反対のボタンを押します。「記名投票」になったら賛成は白、反対は青の木札で意思表示する決まりです。多数決で可決されたらもう1つの議院での審議に移ります。委員会から本会議にかけられるまでの経緯はほぼ同じ。片方の院が否決したら原則として廃案です。そこで可決して「法案成立」となります。

与党は「党議拘束」で賛成、野党の反対は数の力で押し切られる

 この過程で国会議員の仕事は法案への質疑や採決への意思表示となります。たいてい与党議員は既に「与党審査」を経ている上に多くの場合「党議拘束」といって賛成を党があらかじめ縛っていて反した場合は処分される恐れがあります。何より首相の味方ですから内閣が出してきた法案に反対するいわれがありません。

 そこで野党の出番です。よく「反対ばかり」と批判されますが、反対かどうかはともかく疑義を呈するぐらいはしないと国会だけが立法機関という憲法上の要請が形骸化してしまいます。

 内閣を束ねる首相は国会議員の指名選挙(最終的には衆議院が優越)で選出されますから、よほどの事態でない限り衆議院の多数派は与党。党議拘束もかかるので野党が何をいおうが大半は多数決で可決してしまいます。

 したがって法案成立を野党が何としても阻止したければ会期中に両院の採決まで持って行かせず廃案を狙います。他方、首相がどうしても成立させたければ会期そのものを延長して「時間切れ」廃案を防ぐのが一般的です。

 要するに立法行為における国会議員の役割はすぐれて良心や情熱で定性的にはかられるのです。結果が与党多数で可決とわかっていても野党議員は問題点を指摘し続け、与党議員も「何も考えない」でなくより良くするという方向での提案をすべき。

 なお参議院が野党多数となる「ねじれ」が現出すると様相は一変します。委員会や本会議での否決が現実味を帯びるからです。したがって衆議院で圧倒する勢力を保つ与党であっても参院で伯仲していたら野党勢力の一部を味方に引き入れて連立政権を組むなどの工夫をします。

論戦の花形「予算委員会」が「何でもあり」になるゆえん

 今から始まる通常国会では法案と並んで重要なのが予算審議。年度(当年4月1日から翌年3月31日まで)に入ってくるカネと使い道を示した「一般会計予算」(「当初予算」とも)を決めます。

 何かをするには金が要るのは国のサービスも同じ。なので毎年1月必ず開かなければならない通常国会で新春から3月末までのうちに国が見込んだ収入(歳入)と使い道(歳出)の見積もりを憲法の規定で「内閣」が「作成して国会に提出する」のが予算案です。閣議決定されて出される経緯は閣法と同じ。ゆえに以後のロジックもだいたい同一となります。

 付託される先は予算委員会(衆議院50人・参議院45人)。当初予算はあらゆる国家機関の見積もりで内閣の責任で出されるため、答弁に立つべき国務大臣も原則全員出席。問いただす側はたいてい事前に「質問通告」をしているので、その通りに進めば「今日は出席しないでも大丈夫な大臣」がいます。しかし絶対に通告以外の質問をしてはいけないという決まりもないので「全員出席」になりがちです。

 となると予算委以外の委員会に大臣が出席できないため、結果的に予算委優先、予算委のみ開催となります。「当日の国会=予算委」となればテレビ中継の対象もそことなるわけです。ゆえに「論戦の花形」などと呼ばれています。

 予算は提出者も執行者も内閣。ゆえに国務大臣および長である首相がどういう姿勢で1年間を過ごすつもりかまで話題となります。例えば開催中のある日、ある場所で大火事があったとして、質問者は当然、首相や総務大臣(消防を統括)に考えを聞くわけです。閣僚のスキャンダルが報じられれば予算の執行者としての責任を問うという理由でやはり対象となるでしょう。結果的に予算委が「何でもあり」になるゆえんです。

最初から決まっている当初予算案の原案通り可決

 閣議決定された「予算書」はエリート官庁の財務省の、これまたエリートの主計官を中心に「日本で一番厳しい校閲を経た書類」として出されます。一個所が決壊するとドミノ倒しのようにあちこち矛盾が生じるため、内閣はどうしても原案通りに可決したいのです。そして、それは難しくありません。先に述べた「与党が衆議院で多数」の前提に加えて「衆議院の優越」規定があるため参院がねじれていても原則通せるから。

 野党が予算そのものにあれこれ仕掛けても、たいてい上手にかわされて終わりです。なので責める側の野党は「こんな内閣の作った予算案を信用できるのか」という格好でスキャンダル追及をしたり、「態度がなっていない」などと理事に文句をつけて引き延ばしをはかったりして「成果」を得ようとします。

 内閣にとって3月末までの成立は至上命題。それができないと大変みっともない非力な内閣とみなされるので、野党が強い状況や痛いところを握られている場合は、問題大臣のクビと引き替えに審議促進を非公式に伝えるといった手段に出るケースもあるのです。「予算を人質に揺さぶる」などと表現されます。