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小室夫妻誕生で「女性宮家」が新たに抱えた難題と今後に落とした影響

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
「揺るぎなき一般人」なのに……(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 秋篠宮家の長女、眞子内親王が小室圭さんと結婚して皇籍を離れ、一般人の「小室眞子さん」となりました。この出来事はゴシップが先行して騒動となりましたが、結果的に貴重な「生まれながらの皇族」が1人減ったことをも意味するのは周知の通り。

 今上天皇より若い世代で皇室典範が皇位継承を認める男系男子は5歳しか違わない弟の秋篠宮さまを除くと悠仁さまのみ。将来の皇統維持は危機的な状態です。「今後の皇室のあり方を議論する政府の有識者会議」(有識者会議)は今年、皇族の数を保つ2案として「女性皇族が結婚後も皇室に残れる」(女性宮家)と「戦後に皇籍離脱した旧宮家の男系男子を復帰させる」を決めたばかりです。今後の展開にどう影を落とすか考察してみます。

むしろ障害を取り除いたのかも?

 あのような形での結婚は、むしろ小室夫妻と宮内庁など皇室関係の当事者にとって案外都合がよかったのかもしれません。利害が一致したというのはうがち過ぎでしょうか。

 小室圭さんは結婚する前も後も「揺るぎなき一般人」です。それが皇女を娶るというだけで大騒動になるのですから、眞子さんが女性宮家として皇室に残っての結婚だとしたら圭さんは何らかの形で皇室入りするわけで「とんでもない」の声が100倍ぐらいにエスカレートしてもおかしくありませんでした。

 「何らかの形」とあいまいにしたのは有識者会議が女性皇族の夫や子の扱いについて検討中の段階だから。日本の天皇はすべて男系(うち女性8人)だから子が生まれて皇位継承者とするならば初の女系天皇となる可能性が生じ、その点に強い反発があります。といって継がせないと定めれば「悠仁さまだけ」が変わりません。

 眞子さん側からすれば「女性宮家」が制度化されれば当然その対象なので圭さんの扱いに加えて生まれてきた子をどうするかという難題まで抱え込みます。他方、有識者会議や国会(女性宮家誕生のためには皇室典範=法律の改正が必要となる)も厄介なテーマをいきなり具体的に問われる仕儀となりましょう。まだ制度が決まっていない段階で取りあえず眞子さんを対象から外す(=圭さんと結婚して皇籍離脱する)のは両者にとって幸福とまでいえなくとも一息つける方法ではあったのです。

「女性宮家」創設に影を落としそうな「小室基準」

 しかし眞子さんの結婚が今後の「女性宮家」をどうするかのケーススタディとなったのは事実です。現時点で未婚の女性皇族は愛子さま、秋篠宮家の佳子さま、寬仁親王(父が三笠宮さま)の子である彬子さまと瑶子さま、および高円宮家の承子さまの5人。おそらく今後の雰囲気として「結婚後も皇室に残るならば圭さんみたいな相手では困る」みたいな「小室基準」とでもいうべきものが醸成されそうです。

 問題はこの「小室基準」が極めてあいまいな点。批判されてきたのは主に母親についてだし、対象となった圭さん本人の人格や生き方も「これはアウトだ」と誰もが納得できる線引きはできそうもありません。

 女性宮家における夫を皇室典範の「男性皇族の結婚相手認否」と同等にしたと仮定したら皇室会議の可否に委ねるとなりましょうが、実際問題として「小室基準」でダメ出しなどできるのでしょうか。

皇室典範を改正した場合の整合性

 忘れてならないのは小室夫妻は女性皇族が嫁いで一般人となる話。圭さんに皇族となる野心があったわけではなく(あっても叶わない)、ゆえに両者が結婚を決意したという側面もあったと推測されます。

 男性皇族の結婚と同レベルとなればハードルは下手すると妃選びより高まりかねません。男性皇族の場合、あえて踏み込んで申せば相手が誰であれ子が皇族となり、うち男子が皇位継承者となるのに対して、女性宮家はそこが決まっていないからです。

 女性宮家創設が認められても典範12条の「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」が削除されて「皇族女子は婚姻しても皇族である」とはなりますまい。皇太子や皇太孫を除く男性皇族でさえ事情によっては離脱できる条文と整合性がとれませんから。となると12条を残したまま結婚後も皇室に残れる例外を設ける形となりましょう。そこですったもんだするぐらいならば現12条を行使して出ていった方がスッキリすると女性皇族が判断するケースが続出し、結局は空文化して皇族は減り続けます。

70年以上前に離脱した旧宮家男性と「愛子さま」

 他方で旧宮家の男系男子を皇籍復帰させる案も容易ではありません。一度皇籍を離脱しながら皇位についた例は宇多天皇と醍醐天皇の先例こそ存在するも、有識者会議案が想定する旧宮家の子孫とは全くといっていいほど背景が異なります。

 宇多天皇は光孝天皇の子で離れていたのは3年間。その間に生まれたのが醍醐天皇です。対して旧宮家は1947年に離れてから70年以上を経ていて、数人いる未婚の若い該当者も、その親も皇族ではないのです。それが「男系だから」という理由だけで殿下となるのに違和感を抱く国民は少なくないはず。

 そもそも該当する方々に「その気はあるのか」というところも課題です。有識者会議案は養子縁組による復帰を想定していますが、どこへ縁組みするかは定まっていません。

 皇位継承順に加えるかどうかも難しい。悠仁さま(継承順2位)までは異論がないとして、復帰された方がご高齢の常陸宮さまに次ぐ4位となれば「天皇陛下の子である愛子さまはどうなる」という議論が必ず出てきます。愛子さまは男系女子で過去に8人が即位していますし、国民感情として順番があべこべととらえられそうです。

 といって皇籍復帰された方自身は皇位を継げないとしたら何だか種馬のような扱い。簡単ではありません。

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

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