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拝啓 もう一度ラガーマンに熱狂したい貴女へ(フォワード編)

多羅正崇スポーツジャーナリスト
トップリーグ2020の第6節「神戸製鋼×東芝」(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

【部室トーク】拝啓 もう一度ラガーマンに熱狂したい貴女へ(フォワード編)

2019年のラグビーW杯から1年以上が経った。

「もう一度ラガーマンに熱狂したい」と思っている貴女に、贈り物がある。マスクではない。国内最高峰リーグの開幕情報だ。

1月16日(土)に「トップリーグ2021」が開幕する。(※1月14日追記:6チームで新型コロナ陽性者が確認され2月初旬~中旬に開幕が延期)

そもそもトップリーグとは何か。その魅力を簡潔に表現するなら、「イイ男の見本市」である。

天理大学が初優勝した2020年度の大学選手権を見ても分かる通り、ラグビーでは、イイ男ほど良いプレーをする。

たとえばラグビーのプレーを日常生活の行動に置き換えてみる。すると、そのほとんどが「イイ男の行動」であることに驚く。

・責任と向き合い仕事をやり遂げる(タックル)

・仲間のピンチに気付いてサポートする(ブレイクダウンのクリーンアウト)

・大切な人のために自己犠牲する(オフロードパス等)

・非があれば素直に認める(レフリーの尊重)

・対立しても最後は健闘を讃えて認め合う(ノーサイド)

ラグビーでは“イイ男っぷり”を発揮する機会がふんだんにある。イイ男が活躍するわけである。やんちゃ坊主もラグビーを通してイイ男の行動をなぞるうち、やがて本物のイイ男になっていく。

トップリーグの競技レベルは年々高度化している。大卒ルーキーがボーデン・バレット(サントリー/NZ代表SO・FB)とポジション争いをする時代である。真面目にラグビーと向き合うイイ男でなければ勝負は厳しい。

つまるところトップリーグとは、イイ男たちの頂点に君臨する男たち――イイ男の中のイイ男――による最高峰の戦いなのである。

もちろんイイ男の条件は人それぞれだろう。ただラグビー界には分析やメディカルなど“裏方ポジション”を含め、多種多様なイイ男がおり、貴女の期待を裏切らない。

今回はそんなトップリーグ2021から、5つのポジションがあるFW(フォワード)のイイ男たちを(ほんの一部だが)ご紹介させて頂きたい。

【プロップ】(PR)

まずはプロップ(1、3番)だ。パナソニックの稲垣啓太、Hondaの具智元らが代表格だろう。

基本的にプロップは人柄が柔和で、人を安心させるタイプの優男が多い。人型のビーズクッションであると言ってもよい。イイ男の条件に「安心感」を挙げる貴女にはプロップがオススメだ。

ただトップレベルのプロップになると屈強な肉体を誇る。

ヤマハ発動機の山本幸輝、トヨタ自動車の伊尾木洋斗、NTTコミュニケーションズの上田竜太郎、日野レッドドルフィンズの浅原拓真などなど、トップレベルのスクラム猛者たちは堂々たる体格をしている。ぜひトップリーグ2021で確認してほしい。

プロップの稲垣啓太(パナソニック)※筆者撮影
プロップの稲垣啓太(パナソニック)※筆者撮影

【フッカー】(HO)

フッカー(2番)は攻防自在の万能型が多く、パナソニックの堀江翔太がその筆頭だろう。

フッカーは揉め事で頼りになるアニキだ。ラグビーは80分間の揉め事とも言えるが、その揉め事の多くにフッカーは顔を出し、鮮やかに解決して喫茶店に帰っていく。

スクラムを最前列で戦ったかと思えば、ラインアウトでは主に重圧と戦うスローワーを務め、アタックでは突破役もする。

何でも出来てしまうアニキは誰からも頼られる。イイ男の条件に「頼りがい」「アニキ風」を挙げる貴女には、特にフッカーがオススメだ。

ただトップリーグのフッカーともなると風格が違う。

クボタの杉本博昭、リコーの森雄基、東芝の森太志、キヤノンの庭井祐輔・・・。何でも出来てしまうので、NECの川村慎は日本ラグビー選手会の会長まで務めている。

フッカーの杉本博昭(クボタ)※筆者撮影
フッカーの杉本博昭(クボタ)※筆者撮影

【ロック】(LO)

チームの最高身長が多いロック(4番、5番)。身長195センチのジェームス・ムーア(宗像サニックス)らが代表格だろう。

イイ男の条件に「働き者」「優しさ」を挙げる貴女にはロックがオススメだ。

ロックはラグビー村屈指の働き者だ。そもそもラグビーはまず選手全員に敢闘賞が贈られるべきスポーツだが、ロックにだけは敢闘賞に加え「温泉旅館のペア宿泊券」が贈られてほしい。

人一倍大きな身体を揺らしてブレイクダウンを往来し、倒れては起き上がり、倒れては起き上がる。

かつてラックはひと息つける「峠の茶屋」的存在だったが、「リロード」(倒れてもすぐ戦列に戻ること)という概念が一般化してしまい、峠の茶屋はすっかり廃れてしまった。

すぐにラックを出発しなければならず、ロックの労働環境は厳しくなるばかりだ。今こそ頑張り屋のロックを礼賛すべきだろう。

日本のトップレベルは「気は優しくて力持ち」なロックに事欠かない。クボタの今野達朗、NECの廣澤拓、東芝の梶川喬介。

神戸製鋼のトム・フランクリン(共同主将)やNTTドコモのヴィンピー ファンデルヴァルト、近鉄(トップチャレンジリーグ)の松岡勇、マイケル・ストーバークにも注目したい。

働き者の優しいナイスガイはまだまだいるだろう。ぜひお気に入りのロックを見つけ、背番号4、5番の後ろ姿を追いかけてみてほしい。

ロックのヴィンピー ファンデルヴァルト(NTTドコモ)※筆者撮影
ロックのヴィンピー ファンデルヴァルト(NTTドコモ)※筆者撮影

【フランカー】(FL)

もしもラグビー場で職人系のシブいオーラをまとっている男がいたら、その彼はかなりの確率でフランカー(6、7番)だ。それか芝生の管理者だ。

フランカーはタフガイが集結するポジションでもあり、クボタのピーター・ラブスカフニが代表格の一人だろう。イイ男の条件に「ストイック」「職人肌」を挙げる貴女にはフランカーがオススメだ。

寡黙であり、チームビルディングに必要なこと以外はまず口にしない。ただ酔っ払うと「ラグビーはフォワードだ」という本音が出てしまう。

勇敢なディフェンスでチームを鼓舞できるポジションでもあり、主将率が高い。オーストラリア代表の主将もフランカーであり、その男は誰あろうトヨタ自動車のマイケル・フーパーだ。

ぜひトップリーグ2021で、フランカーの職人芸を目撃してほしい。

パナソニックのベン・ガンター、布巻峻介。NTTコミュニケーションズの金正奎(共同主将)、リコーの松橋周平(共同主将)。

NECの亀井亮依(共同主将)。三菱重工相模原の武者大輔、釜石シーウェイブス(トップチャレンジリーグ)の河野良太・・・。

タフなフランカーは枚挙にいとまがない。ぜひプレーが心に響く6、7番を見つけてみてほしい。

フランカーの亀井亮依(NEC)※筆者撮影
フランカーの亀井亮依(NEC)※筆者撮影

【ナンバーエイト】(NO8)

ナンバーエイト(8番)はトヨタ自動車の姫野和樹(今季は海外挑戦予定)、東芝のリーチマイケルらが代表的だろう。

全ポジションで唯一番号で呼ばれているが、囚人というわけではない。ただその肉体は「バールのようなもの」で凶器のような攻撃力を持つ。

ラガーマンは理性と野性を高いレベルで両立させなければならないが、その「野性」の割合が高いポジションがナンバーエイトだろう。

イイ男の条件に「野性味」を挙げる貴女には、特にナンバーエイトがオススメだ。

一般的にナンバーエイトの最大の使命は「ボールを持ったら前進すること」。

神戸製鋼のナエアタ ルイ(前登録名「タウムア・ナエアタ」)。サントリーのテビタ タタフ。宗像サニックスのラーボニ・ウォーレンボスアヤコ。日野の堀江恭佑(共同主将)。

トップリーグ2021で、彼らの野性味溢れる突進を目に焼き付けてほしい。

ナンバーエイトの姫野和樹(トヨタ自動車)※筆者撮影
ナンバーエイトの姫野和樹(トヨタ自動車)※筆者撮影

■ ■ ■

以上がオススメのイイ男たち(フォワード)だ。

今シーズンはコロナ禍があり、こうした選手の人間性を直接知る機会が少なくなるかもしれないが、心配はいらない。

選手・チームのSNSで素顔を垣間見ることもできるし、そもそもラグビーは人間性が丸見えのスポーツだ。

最近テレビの番組表に「人間性暴露ゲーム」という文字を見つけ、てっきりラグビー中継が始まるのだろうと思っていたらバラエティ番組だった。

本稿筆者がそう信じているだけなのだが、「人間性暴露ゲーム」とはラグビーのことだ。人間には危機に露呈してしまう本性があり、ラグビーにはそんな危機が満載だからかもしれない。

ラグビーを観ていると選手の人間性が伝わってくる。ただ、どういう理屈で伝わってくるのかはよく分からず、筆者にとってはラグビー七不思議のひとつである。

ぜひトップリーグ2021で、もう一度ラガーマンに魅了されてほしい。

参加するイイ男たちの“イイ男っぷり”は、現地観戦はもちろんのこと、ステイホームでもしっかりと貴女に届くはずだ。 敬具

※ラグビー国内最高峰リーグ「トップリーグ」公式サイト https://www.top-league.jp/

※上位4チームがトップリーグ2021のセカンドステージに進む2021年「トップチャレンジリーグ」大会概要  https://rugby-kansai.or.jp/topchallengeleague2021

※「大会概要 ~トップリーグ2021開幕スペシャル~」。スポーツテレビ局「JSPORTS」の公式YouTubeチャンネルより

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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