2019年ラグビーW杯でビール不足が起こる?海外ラグビーファンのニーズどこに

各種ビールを手に声援を送る2015年W杯のアイルランドサポーター。(写真:ロイター/アフロ)

2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会組織委員会は4月21日、出場20チームが1次リーグで使用する公認キャンプ地を発表。59自治体、52か所が内定した(※1)。

昨年11月には全48試合の日程も発表済み。全国12開催都市(※2)を含めた受け入れ先は、準備をより具体化していきたい状況だ。

2015年W杯開幕戦当日、ロンドン郊外トゥイッケナムのパブは大賑わいだった(筆者撮影)
2015年W杯開幕戦当日、ロンドン郊外トゥイッケナムのパブは大賑わいだった(筆者撮影)

2019年9月20日開幕の祭典ために来日するのは、もちろん参加チームばかりではない。

ラグビーW杯組織委員会は3月20日、大会開催による経済波及効果を4372 億円とする分析結果を公表。

インフラ整備や観光客の飲食などの「直接効果」は1917億円で、そのうち実に半分以上を占めるのが訪日外国人客による1057億円の消費だ。(約40万人が14日間滞在し、1日2万円支出すると想定)

約40万人を見込んでいる訪日外国人客のニーズを捉え、お金をたくさん使ってもらうことが重要になってくる。

2015年W杯「日本×スコットランド」開始1時間前のスタジアム外。ビール片手のスコットランドサポーターがパブ前の道路を埋めている(筆者撮影)
2015年W杯「日本×スコットランド」開始1時間前のスタジアム外。ビール片手のスコットランドサポーターがパブ前の道路を埋めている(筆者撮影)

そんな訪日外国人客に関して、準備が進む今だからこそ考えたい懸案がある。

海外のラグビーファン、とりわけパブ文化の根付いている英国のラグビーファンは、ビールを大量に消費することで知られている。

2015年W杯イングランド大会で驚いたのは、ビール片手の海外ファンの多さだった。

日本代表の1次リーグはイングランド西部のグロスターが舞台のひとつだったが、第2戦で戦ったスコットランドのサポーターは、試合前、試合中、そして試合後にもビールをあおっていた印象がある。

グロスターの国内8部チーム「Longlevens RFC」のクラブハウス内。国内8部の小クラブが立派なカウンターを持っている(2015年9月筆者撮影)
グロスターの国内8部チーム「Longlevens RFC」のクラブハウス内。国内8部の小クラブが立派なカウンターを持っている(2015年9月筆者撮影)

アルコールは英国のラグビー文化の奥深くに入り込んでいるようだ。

グロスターを拠点とするイングランド国内8部チーム「Longlevens RFC」のクラブハウスを訪問した際は、8部チームとは思えぬ立派なカウンターに驚かされた。

南ウェールズ・ブリジェンドのラグビー場「Brewery Field」には、正面スタンド一階にパブ風の遊興スペースがあった。

かつて英国の植民地だったニュージーランド(NZ)も影響を受けており、地域クラブのクラブハウスには大抵アルコール類を提供するカウンターがあり、アフターマッチファンクション(試合後の交流会)での交歓にひと役買っている。

ラグビーにこうした文化があるからだろう、オランダの『Heineken』やNZの『Tui』といった大手酒造メーカーは積極的に各種大会を後援している。英国などでは、ラグビーとアルコールは文化的、経済的に密接な関係を築いていると言えるだろう。

NZローワーハットのクラブ「Petone」のクラブハウスで行われていたアフターマッチファンクション。右手にカウンター(2015年筆者撮影)
NZローワーハットのクラブ「Petone」のクラブハウスで行われていたアフターマッチファンクション。右手にカウンター(2015年筆者撮影)

では、そんな海外ラグビーファンを受け入れる日本側の現状はどうだろうか。

神奈川県横浜市は、2019年秋にこうした”パブ大国”のサポーターが大挙してやってくる開催都市のひとつだ。

最寄りの小机駅から徒歩で約15分、新横浜駅から約20分の距離にある横浜国際総合競技場では、決勝、準決勝2試合などのビッグマッチを含む計7試合が予定されている。

4試合あるグループステージだけを見ても、ニュージーランド、南アフリカ、アイルランド、スコットランド、フランス、イングランド、そして日本が登場。今大会屈指のビール消費量が予想される。

今年3月、横浜国際総合競技場のある新横浜を訪れ、居酒屋、フランス料理屋、カラオケ店、スポーツ施設のスタッフなど7人に話を訊いた。

結果として、夫婦でラグビーファンだという女性、弟がラグビースクールのコーチだという女性以外の5人は、ラグビーW杯への関心が低かった。

取材先のひとつだった料理店には、壁一面に酒瓶が並ぶ豪華なバーカウンターがあった。しかしラグビーはまったく知らないというスタッフは「うちは来ないと思いますよ」と確信的に語った。

国際大会としては長期の44日間(オリンピックは17日間)という2019年W杯のスケール、そして、海外ラグビーファンのアルコール消費量が伝わっていなかった。

カウンターに用意されたカップの山。2015年W杯開幕戦当日、ロンドン郊外トゥイッケナムのパブ「The Cabbage Patch」にて。(筆者撮影)
カウンターに用意されたカップの山。2015年W杯開幕戦当日、ロンドン郊外トゥイッケナムのパブ「The Cabbage Patch」にて。(筆者撮影)

取材を通して抱いた危惧はまだある。

アルコールを提供する日本の居酒屋などは、17時など夕方以降に開店する店が多い。

2019年W杯の全48試合のキックオフ時間は、最も早くて12時15分、最も遅くて19時45分。多くは13時台から18時台に行われる。

では、たとえば17時開始の試合に合わせて最寄り駅に着いた万単位のスコットランドサポーターが、試合前にビールを楽しみたい場合、一体どうすればよいのだろう。

このままでは試合当日、最寄り駅や会場周辺で大量の“ビール難民”が生まれてしまう可能性がある。

彼らをスタジアムに招き入れて大量のビールを提供する手もあるが、それは地域活性化の観点からしてどうなのかという疑問は残る。

会場近くでフードエリアを開くにしても、出店できる店は限られてしまうだろう。個人的にはビールにあわせて、店舗でしか提供できない地料理なども体験してほしい。

たとえば、試合当日に限って飲食店の開店時間を早めるなど、“W杯仕様”の営業時間で対応することはできないだろうか。

訪日外国人客と地元飲食店、双方が満足するラグビーワールドカップにしたい。 〈了〉

(※1)

ラグビーワールドカップ2019日本大会「公認チームキャンプ地」内定のお知らせ」(ラグビーワールドカップ2019大会公式HP)

https://www.rugbyworldcup.com/news/328290

(※2)

【開催都市・試合会場】

○札幌市     (札幌ドーム)

○岩手県・釜石市 (釜石鵜住居復興スタジアム(仮称))

○埼玉県・熊谷市 (熊谷ラグビー場)

○東京都     (新国立競技場)※開幕戦

○神奈川県・横浜市(横浜国際総合競技場)※決勝戦

○静岡県     (小笠山総合運動公園エコパスタジアム)

○愛知県・豊田市 (豊田スタジアム)

○大阪府・東大阪市(花園ラグビー場)

○神戸市     (御崎公園球技場)

○福岡県・福岡市 (東平尾公園博多の森球技場)

○熊本県・熊本市 (熊本県民総合運動公園陸上競技場)

○大分県     (大分スポーツ公園総合競技場)