Yahoo!ニュース

『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』だけじゃない!2021年の「週刊少年ジャンプ」アニメを振り返る

多根清史アニメライター/ゲームライター
(写真:つのだよしお/アフロ)

『週刊少年ジャンプ』マンガのアニメ化と言えば、『鬼滅の刃』やそれに続く『呪術廻戦』ばかりに注目が集まりがちです。が、週ジャン(略称)アニメはこれら以外にも絶えず送り出されており、日本中を巻き込む大ブームに至らずとも、いつも“風”を巻き起こしているもの。

それに週ジャンは数十年もの歴史を重ねている上に、同時期に連載中の各マンガも1つのジャンルに収まるどころか幅広い読者層、それこそ10代(「呪術」など)から50代(「こち亀」世代)にまたがっているはず。そのため全体をふかんしてみると、本当に『ジャンプアニメ』として一括りにしていいのか……?という複雑な模様を描き出したりしています。

では、2021年のジャンプアニメ模様はどういうものだったのか。ザッとではありますが、駆け足で振り返ってみましょう。

『Dr.STONE』と『約束のネバーランド』の分岐点は「長期連載をどう扱うか」

奇しくも1月からの1クール(約3か月)、しかもアニメ化2期ということで被っているのが『Dr.STONE』と『約束のネバーランド』でした。どちらも原作マンガは約20巻が既刊であり、大河ドラマの中の一区切りとなるお話を、全11話に収めるのは容易くはないことも共通しています。

さてフタを開けると、『Dr.STONE』はほぼ原作通りのまま。時系列の入れ替えなど目立った改変や削除箇所もなく、科学により文明の復興をめざす「科学王国」と、文明を否定し大人(既得権益)の排除をはかる「司帝国」との激突と決着までが描かれました。血を流さずに知略を尽くすお話や、マンガ版の緻密な絵柄もばっちり再現されています。

それに対して『約束のネバーランド』は、原作に忠実(それが非常に好評)だったアニメ第一期から大きくシフトチェンジ。「食用児」として育てられた主人公らがハウス(という名の牢獄)から脱出した後の物語ですが、原作では父親代わりにもなった「おじさん」など主要キャラがいなくなり、彼にまつわるエピソードも省略。

それに人間と鬼が箱庭で戦いを繰り広げる「ゴールディ・ポンド編」もカットされ、熱いバトルも見られずじまい。その後はあらすじだけは原作をなぞっているものの、要所要所が飛ばされてしまい、最終回は止め絵を連発して駆け足で終わり。原作を読んでいれば脳内で補完はできますが、アニメ初見の人からはワケが分からないとの声も上がっていました。

なぜ、こんなことになってしまったのか。それは『Dr.STONE』2期が原作の6~10巻(5冊)に当たるのに、約ネバ(略称)は6~20巻(15冊)を詰め込んでいるため。どちらもアニメ版は11話という尺ですから、約ネバ2期がダイジェストになるのは避けようがなかったわけです。

『Dr.STONE』はアニメ第3期の放送決定が発表済みで、約ネバは2期で完全に終了。長期連載マンガのアニメ化にあたっては、企画する側に「どれだけシリーズを長引かせる覚悟があるのか」が問われるのかもしれません。

原作に誠実に寄りそったアニメ版「ヒロアカ」と「ワートリ」

長期連載のジャンプ漫画は、アニメもシリーズを何期も重ねることが本来の通常運転。ここ最近では『ONE PIECE』や『BORUTO』(これらは連続して放送され続けていますが)に続くのが、『僕のヒーローアカデミア』でしょう。

ヒロアカ(略称)最新テレビシリーズは3月末に放送開始、9月末に終了。今回で第5期ものシリーズを重ねているのは、おそらく海外でも人気が高いためでしょう。特に「ヒーロー大国」ともいえる米国でも意外なほど愛されていて、その理由は「(アメコミのように)何十年にもわたる背景を知らなくてもすぐに楽しめる」「テンポが速い」といったところのようです。

もはや安心のブランドの域に達したかと思いきや、キャラクターデザインが変更されたり、序盤が学校内のチーム対抗戦でヴィラン(異能力を持つ悪党)と戦わなかったり、原作では一部に人気あるヴィランアカデミアの話数を端折ったりと、長年追っかけてきた視聴者の間でも意見が割れることになりました。

しかし幅広い視聴者を捉えるには絵柄を変えることも時には必要かもしれず、「ヒーロー」ものであるかぎりテレビで悪党を掘り下げるのも限界があるはず。すでに第6期アニメの制作が決まっていることもあり、長期シリーズゆえの「揺らぎと調整」の範ちゅうに収まるといえそうです。

その後10月に『ワールドトリガー』第3期テレビアニメが入れ替わりに放送スタート。だいたい1年間隔でシリーズを重ねているヒロアカに対して、ワートリ(略称)アニメは第1期から第2期までが約4年半も空き、その第2期終了から第3期までは半年というハイペースに転じています。

なぜ、これほどブランクが生じたのかといえば、原作マンガが長期休載していて完結に不安があったから……?とは憶測ですが、ともあれ連載再開(月刊誌『ジャンプスクエア』に移籍して2018年末~)を喜ぶとともに、原作者・葦原大介先生のご自愛を祈りたいところです。

さてワートリの大きな魅力は主人公・三雲修が「最弱」というのは比喩でもなんでもなく、本当に弱いなかで「今できること」の制約のもとであがくこと。そしてアニメ第3期は格上がゴロゴロいるなかで、知略と死力を尽くしてランク戦(防衛組織ボーダーの中で模擬戦闘)を戦い抜くくだりを忠実に映像化したもの。丁寧かつ理詰めな戦いの描写は他に類がなく、FPS/TPSゲーマー(要するに『フォートナイト』や『エーペックスレジェンズ』方面)にも勉強になると絶賛の声が聞こえてくるほどです。

日常会話の細やかさやチームメイト達の息の合った連携、ぎっしり情報量が詰まっているOP映像まで、スタッフの「原作を分かってる」感が隅々まで行き渡ったデキ。それだけに、まだ4期のアナウンスがないことや、原作も(丁寧さゆえに)話の進みが遅いこともあり、かえって心配が高まっている印象もあります。

「将来性と過去作の分厚さ」がジャンプアニメの強み

それらリアルタイム連載組の一方で、10年以上前に完結したジャンプ漫画のアニメ化ブームも来ています。まず『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は原作マンガが25年前に完結、1991年に1度はアニメ化されながらも半ばで打ち切りに(番組枠の改変のため。人気はあった)。

それから約28年ぶりの新作テレビシリーズは、旧作が1年かけたお話を駆け足気味に半年でやりきった上に、前は最終回とされていたバラン編のその先までたどり着きました。公式に明言こそされていませんが、随所にはさまれたアニメオリジナルの話も原作の終盤を意識して織り込んでいるのでは?との指摘もあり、今度こそ最終回までやりきるはずと期待が高まっています。子ども向けのグッズ展開が今ひとつ順調とは言えない、との声も聞こえては来ますが……。

そして『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』は原作が18年前に完結しており、ジョジョのテレビアニメシリーズとしては第6作目(劇場版やOVAは除く)。歴代キャラの中でも一番人気の空条承太郎の娘・空条徐倫(ジョリーン)と、第3部で承太郎が倒したDIOの遺志を受け継ぐスタンド使い(異能力者)らのバトルが描かれる……といえば、しごく王道のジャンプアニメにも聞こえます。

しかし舞台となるのは大半が刑務所の中、毎回のふんいきは変わり映えせず暗め、ジョリーンの能力にも派手さはなく(むしろ精神力の強さで勝利をもぎ取るタイプ)、ストーリーやバトルも前の第5部以上に複雑さが目立ち、今度こそアニメ化は難しいのではないかと思われていました。

それがNetflixにて第1話から第12話まで先行配信(地上波では2022年1月から放送予定)、しかも全世界に向けてストリーミングされることになった驚き。もちろんディ・モールトベネ(非常に良しッ!!)な話ではありますが、どのような要因が働いたのかは興味深くはあります。

純粋に憶測でいうと、1つには同じく日本のマンガ原作でNetflixで配信された『バキ』シリーズが、世界の約50か国で「最も観られた作品 総合トップ10」入りを果たしたこと。毎期、新作だけでもかなりの本数が追加される中でのランキングだけに相当なものといえます。その発表とともに、Netflixは15以上のオリジナル作品を配信予定だと明かしていたことから、国産マンガのポテンシャルに賭ける一環なのかもしれません。

またジョジョ第六部はジャンプ漫画では異例ではあっても、海外ドラマや映画を見渡せば「刑務所もの」としてド定番ではあります。『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』、そして『プリズン・ブレイク』に連なる系譜として、全米や全世界で爆発的な人気を勝ちえる可能性は大いにあるはず。

現在連載中の作品としてはハードな『呪術廻戦』からギャグ漫画の『僕とロボコ』までの多彩なヨコの幅があり、かたや『ドラゴンボール』や『BLEACH』といった完結済み作品の新作アニメ(2022年4月公開の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』と2022年10月放送予定のテレビアニメ『BLEACH 千年血戦篇』)も控えている『週刊少年ジャンプ』は、今後も原作の供給源として台風の目であり続けるでしょう。2022年以降のまだ見ぬ新作アニメを、期待を膨らませて待ちたいものです。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

多根清史の最近の記事