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Vリーググランドファイナル。注目は兄弟セッター対決

田中夕子スポーツライター、フリーライター
男子決勝で対戦するパナソニックとJT(左から深津旭、山本、深津英、山内)

兄旭弘は「セッターとして大事なことがわかってきた」

 3回戦総当たりのレギュラーラウンドを終え、ファイナル6に突入したばかりの頃だった。

 4位通過を果たしたJTサンダーズのセッター、深津旭弘がこう言った。

「最近やっと、セッターとして大事なことがわかってきた気がするんです。前はもっと自分が何とかしなきゃ、と思っていたけれど、そうじゃないな、と。自分は何もしなくていい。ただアタッカーにとっていいトスを上げて、目立たなくていいんです。だから勝った時は若いヤツらが称えられればいいし、僕は負けた時に『セッターのせいだ』と言われるのが役割。試合に出し続けさせてもらって、経験を重ねられたおかげで、自分が、じゃなくていい、というのがやっとわかってきた気がします」

 チームのスパイク決定率の平均が60%近く、決めたアタッカーもさることながら、それだけ決めさせたセッターの功績は言うまでもなく大きい。だが深津に言わせればそれは当然。

 レギュラーラウンドの順位によりポイントが加算された状態で臨むため、下位のチームには不利とされるファイナル6もパナソニックに敗れはしたが残りの試合を全勝し、ファイナル3を制し、堂々のファイナル進出。先に決勝へコマを進めていたパナソニックとの対戦に向け、こう言った。

「誰もが立てる場所じゃないし、決勝という場で試合ができるのは幸せなこと。それも兄弟で立てるというのは、滅多にできる経験じゃないですから。ほんとに貴重だし、幸せですよね」

弟英臣は「とにかくチームとして勝ちたい」

兄旭弘(左)と弟英臣(右)。経験を重ねたセッターの兄弟対決に注目だ
兄旭弘(左)と弟英臣(右)。経験を重ねたセッターの兄弟対決に注目だ

 パナソニックで主将も務める深津英臣は、JTの深津の実弟で、豊田合成トレフェルサでコーチを務める次男の貴之に続く三男坊。高校、大学時代から全国優勝など多くのタイトルを獲得し、13年から日本代表入りを果たし、4年前のワールドカップや、リオ五輪世界最終予選では正セッターとして日の丸を背負った。

 セッターとしてのキャリアや、ハンドリング、チームを牽引するキャプテンシーは申し分なく、多くの選手がセッターとしてだけでなく、その人柄にも全幅の信頼を寄せる存在だ。

 リオ五輪出場は逃したが、東京五輪へ向け始動した17年にも主将を務め、翌年イタリアで開催される世界選手権の出場権を獲得した。

 だがその18年、深津は世界選手権出場メンバーから外れ、アジア大会に出場。「ここから這い上がりたい」と並々ならぬ決意を抱き、アジアの頂点を目指すも、5位に終わった。

「僕自身、なぜ代表を外されたのか。選ばれたメンバーと比べて何が自分に足りないかはよくわかっています。だから悔しかったし、やってやる、と思って臨みましたが、勝つことができなかった。本当の意味で自分の勝負は崖っぷちに立つ今からだと思うし、何が何でも結果を残したいです」

 有言実行でフィナーレを飾る連覇まであと一歩。兄弟対決に注目が集まることは理解しながらも、表情を引き締め、深津は言った。

「(兄の)今シーズンはクイックとパイプを有効に使っていると客観的に見ていますし、自分もそういう状況をつくりたいと思っているので、難しいですけど、兄に負けたくないということよりも何より、チームとして勝ちたい。とにかくJTに勝ちたいです」

 さまざまな経験を重ねた2人のセッターがどんなゲームメイクを見せるのか。

 1本目のトス、自らのサーブ。ひとつひとつの選択に理由がある。なぜその攻撃を使うのか、そこにサーブを打つ狙いは何か。長いリーグを締めくくるグランドファイナル。両セッターに注目するのもきっとまた、面白い見所になるはずだ。

 頂点に立つのはどちらか。女子の決勝は明日13日に久光製薬スプリングスと東レアローズが、男子決勝は明後日14日にパナソニックとJTが対戦する。

スポーツライター、フリーライター

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。共著に「海と、がれきと、ボールと、絆」(講談社)、「青春サプリ」(ポプラ社)。「SAORI」(日本文化出版)、「夢を泳ぐ」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した「当たり前の積み重ねが本物になる」(カンゼン)などで構成を担当。

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