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プロ1年目。男子バレー石川祐希、新入社員へ「苦しくつらいこともチャンスと思い、チャレンジを」

田中夕子スポーツライター、フリーライター
シエナでのシーズンを終え帰国。デサントを訪問した石川祐希(写真提供/デサント)

「苦しくつらいこともチャンスだと思って」

 サプライズで広げた祝辞は原稿用紙3枚に及んだ。

 満開の桜が咲き誇る4日、男子バレー日本代表の石川祐希はアドバイザリー契約を結ぶデサントの東京オフィスを訪れた。昨春中大を卒業、プロとして歩み始めた自身の経験をもとに、努力の大切さ、周囲への感謝と共に、今春から社会人として新たなスタートを切った新入社員へ向け、自身の経験も含めたメッセージを送った。

「これからいいことばかりではなく、苦しくつらいこともあると思いますが、それをチャンスだと思って何にでもチャレンジしていって下さい」

 目を輝かせ、ひとつひとつの言葉に耳を傾ける新入社員の姿に石川も「嬉しかった」と笑みを浮かべた。

イタリアでの経験を活かし「これまで以上に結果にこだわりたい」

新入社員に向け自らの経験を活かした祝辞を送る石川(写真提供/デサント)
新入社員に向け自らの経験を活かした祝辞を送る石川(写真提供/デサント)

 プロとして1年目の今季は、イタリアセリエAのシエナでプレー。26試合すべてにスタメン出場を果たし、サーブ、スパイクを含む総得点はリーグ12位と個人としては成果を残したが、チームは3勝23敗と勝ち星を重ねることができず14チーム中13位でシーズンを終えた。

 星城高時代は春高やインターハイなど主要タイトルを2年連続で制し、六冠を達成。中大でも1年時から春、秋のリーグ戦や全日本インカレを制するなど華々しい成績を残してきた学生時代と異なり、自身でも「ここまで勝てない経験はなかなかなかった」と振り返ったように、石川にとってはこれまでとは違う経験を重ねるシーズンとなった。

 しかし、その厳しい結果だからこそ得られたものも大きい。石川だけでなくイタリアやイランでの代表経験を持つ選手が揃い、個々の力は劣るわけではないチームがなぜ勝てないのか。その中でもいかに前を向きモチベーションを保つことができるか。なおかつそれを自身の成績や好不調のみならず、エースとしてチームの成績にどうすれば結びつけることができるか。

支援してくれるスポンサーはもちろん、応援してくれる人たちに「もっといい報告をしたい」と意気込んだ(写真提供/デサント)
支援してくれるスポンサーはもちろん、応援してくれる人たちに「もっといい報告をしたい」と意気込んだ(写真提供/デサント)

 なかなか勝てない経験もこれからにつながる糧となった。そして、それを活かすのはこれから。石川は言う。

「今シーズンは苦しい状態でしたが、その中でプレーすることが自分自身はチャンスだと思っていました。これから代表(シーズン)に入りますし、代表も苦しい状況に置かれることがあると思いますが、そこにモチベーションやチャンスが生まれてくると思っています」

 4月1日に今季の日本代表候補選手が発表され、4月下旬から合宿が始まる。5月31日から開幕し、6月7~9日には日本でも開催されるネーションズリーグを皮切りに、今季最大のターゲットは10月に開催されるワールドカップ。五輪前年の戦いに向け、石川が言った。

「オリンピック前年で結果が出ないと自分たちも見ている方もイメージできない。自信を持つために、内容もそうですが、まずは結果。ラインは見えていると思うので、到達できるように。今まで以上に結果を追求して、選手、スタッフが一丸となってトライしていきたいです」

 チャンスをつかむべく、新たなチャレンジが始まる。

スポーツライター、フリーライター

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。共著に「海と、がれきと、ボールと、絆」(講談社)、「青春サプリ」(ポプラ社)。「SAORI」(日本文化出版)、「夢を泳ぐ」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した「当たり前の積み重ねが本物になる」(カンゼン)などで構成を担当。

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