新型コロナで日本語教室活動休止ー学び場失う海外ルーツの子、言葉と情報の壁へ対策急いで

新学期に向け、初めて日本の学校に行くために準備してきた子どもも(写真:森祐一)

新型コロナウィルス感染拡大防止を目的とした一斉休校やイベント等自粛要請は、日本人だけでなく、地域で生活する外国人や海外にルーツを持つ子どもたちにも影響を及ぼしています。学校を中心に行われていた日本語支援は一斉休校に伴い休止を余儀なくされている他、地域ボランティアによる日本語教室が公的施設休館のために活動場所を失うなどによって、支援を行えない団体が増えており、日本語力の低下などが懸念されています。

日本語がゼロに・・・1か月間休止、またはじめから

2018年の時点で、日本の公立学校に通う外国籍の児童生徒は93,133人。日本語がわからない子どもは、日本国籍の子どもを含めて約51,000人に上っています。これら、海外にルーツを持つ子どもたちの内、約5分の4が学校内で日本語学級や日本語支援員等による何らかのサポートを受けていますが、残る11,000人は何の支援もない無支援状態です。

こうした無支援状態の子どもたちや、自治体による支援制度の対象とならない子どもたちなどは、主に地域ボランティアが運営する日本語教室などでサポートを受けてきました。支援者らは日本語を教えるだけでなく、外国人保護者に学校のお便りをわかりやすく説明したり、困りごとの相談にのるなど、外国人と地域・情報とをつなぐ「仲介役」を担ってきました。

日本語教室は子どもや外国人保護者と地域との「仲介役」としての役割も担う。海外ルーツの子ども同士の出会いの場でもあり、大切な居場所でもある。(写真:森祐一)
日本語教室は子どもや外国人保護者と地域との「仲介役」としての役割も担う。海外ルーツの子ども同士の出会いの場でもあり、大切な居場所でもある。(写真:森祐一)

その活動が休止を余儀なくされる中、平時から情報弱者となりやすい外国人、海外ルーツの子どもたちの支援が空白になりつつあります。

筆者がSNSを通じてお話を伺った「放課後学習支援日本語教室-来夢 らいむ」は、2017年より愛知県安城市で支援を行っている団体で、ふだんは幼児から高校生年齢までの約30人の海外ルーツの子どもたちが学んでいます。今回の一斉休校要請に伴い、活動休止を決断せざるを得ませんでした。

代表の滝口佐綾香さんは、筆者によるSNSメッセージでの問いかけに対し、長期間にわたる活動休止を余儀なくされたことについて、

「外国ルーツの子どもたちは、学校が休みだからこそ学習支援教室を開けて欲しいと私に懇願してきますが、私自身、この状況の不透明さに正直身動きが取れない状況です。せっかく身につけた日本語も学習習慣もこの1か月の休みの間に、ゼロに戻ってしまう子も少なくないと思われるので、また、はじめから積み上げていかなければなりません」

と、やり場のない気持ちを滲ませました。

教育機会と情報からの一層の断絶、高まるリスク懸念

海外にルーツを持つ子どもたちの中には、家庭の中では母語だけで過ごすという子も多く、特に来日して日が浅い場合は日本語に触れる時間が短くなったり、適切な支援へのアクセスが途絶えることで日本語を忘れてしまう子どももいます。スムーズな進級や進学を目指して支援を続けてきた日本語学習支援者らは、これまでの成果が失われることで日本での学校生活に躓いてしまうのではないかと言った不安を募らせています。

子どもたちの受け入れ側である学校では、以前から日本語がわからない子どもに対する受け入れ体制の不整備が課題となってきました。「日本語指導ができないので、日本語がわかるようになってから学校にきてください」と事実上就学を拒否される事例もあとを絶たない中で、今回の非常事態が長引けば、4月以降も就学待機状態にとどめ置かれる子どもが出てくる可能性を否定できません。

平時より、義務教育の対象外であることや、支援体制整備の遅れなどから教育機会へのアクセスが限定的となりやすい海外にルーツを持つ子どもたちにとって、現在の事態は教育機会の一層の断絶につながりやすく、リスクの高い状況となっています。

日本語と情報の壁―届かない支援に対策を

先の一斉休校要請以来、学校に通うことができなくなった子どもたちのためにと、NPOや企業などから多数のオンライン教育機会が無償で提供され始めました。外出がままならない子どもたちにとって、自宅でも学べる機会が増えることは、2人の子どもを育てる筆者にとっても大変ありがたく、心強いものです。また、教育機会だけでなく、地域のレストランなどによる「子ども弁当」などをはじめとする生活上のサポートも次々に提供され、社会全体でこの事態を乗り切ろうというあたたかな気持ちを感じられる支援も増えています。

一方で、海外にルーツを持つ子どもたちや外国人家庭にとって、その活用は容易ではありません。ほとんどの支援情報が日本語のみで発信されており、「日本語ネイティブの子ども」やじゅうぶんな日本語力(加えて、情報リテラシー)のある家庭以外には届きづらいものとなっています。親も子も、日本語の読み書きが得意でなければ「支援が存在する」ことにも気づくことができません。

筆者運営のスクールでは、オンライン授業に切り替え対応。顔が見える関係があってこそ、スムーズに移行できる。日本語ボランティアやNPOらと連携し、外国人への支援提供について検討してほしい(写真:YSC)
筆者運営のスクールでは、オンライン授業に切り替え対応。顔が見える関係があってこそ、スムーズに移行できる。日本語ボランティアやNPOらと連携し、外国人への支援提供について検討してほしい(写真:YSC)

愛知県安城市で海外ルーツの子どもたちを支援している「来夢」のボランティア、高木祐子さんは政府や自治体に対して、

「国として外国につながる子どもたちの支援を強化するのであれば、その保護者への配慮も必要だと思います。学校教育関連の多言語化等の取決めもしっかりと示してもらい、保護者への周知ができるようにしていただきたい」

と、多言語化の指針を示し、外国人家庭にも速やかに情報を届けてゆくことを求めています。

日本で暮らす外国籍住民は現在、約300万人に上ります。日本語のネイティブにとっても、大小さまざまなレベルの情報が矢継ぎ早に更新されそれらによって行動が制約される事態もある現状は、精神的にも疲弊しやすい状態です。それが日本語がわからない外国人や海外ルーツの子どもたちにとって、一層の不安と困難をもたらすことは想像に難くありません。

情報弱者となりやすいマイノリティを無視した対策は、当事者を一層追い詰めるだけでなく、地域全体にその影響を及ぼし得るものです。現在のような非常時にこそ、地域の多様性から目をそらすことなく、共にこの事態を乗り越えられるよう、地域全体で知恵を出し合い、必要な配慮や対策を講じていくことが急務です。