バリアフリー選挙へ行こう!―今考えたい、みんなにやさしい選挙のこと
バリアフリー選挙してますか?
参政権は憲法で日本国民に保障された権利で、障害の有無にかかわらず有権者はだれもがその権利を行使することが可能です。
これまでも選挙時には必要に応じて代理投票や点字投票などの制度が設けられてきましたが、今回の選挙からはさらに体が不自由な高齢者や障害者が投票しやすいよう、移動費用を国が負担する規定が新設されたり、候補者の演説内容を文字で要約して筆記する際に要約筆記をする人員への報酬が支払えるようになりました。
また、政見放送では手話通訳や字幕をつけることが可能となっていたり、選挙公報を点訳・音訳で配布する取り組みなども行われています。
例えば京都府の選挙管理委員会には以下のようなページがウェブサイト内に設けられています。
各地域の選挙管理委員会のウェブサイトにも、音声読み上げに対応したり、文字の拡大ができるなどの配慮がされています。
このように、特に投票所へのアクセスや投票行動に対するサポートなどを中心に、投票しやすい選挙のバリアフリー化は前進しつつあるように見えるのですが、一方で6月19日には共同通信より以下のような記事が配信され、各紙に掲載されました。
・・・SNS上では障害者差別解消法が施行された今においても、政見放送の手話通訳や字幕が義務規定ではないことへの違和感や、放送によっては手話も字幕もなく、政策比較ができないといった声が複数あがっていました。
投票所に行くということのバリアだけでなく、各党の政策を集め、比較し、どの政党や候補者に自らの一票を託すかを判断するために必要な「票を投じる前」のバリアが、まだまだ存在していることを窺わせます。
有権者の多様性を、政治参加へのバリアにしないために
さらに、海外にルーツを持つ日本人で、日本語を母語としないために、政策情報などの難しい日本語がわからない有権者の存在など、現時点ではその存在すら、一般に認識されていないバリアもあります。
日本語を母語としない、海外にルーツを持つ日本人有権者が国内外を含めて何人いるのか具体的にそれを知る手がかりはありません。ただ、現時点ですでに日本国籍を持つ、日本語指導を必要とする子どもたちは、日本の公立学校にだけでも7,800人以上が在籍していて、この10年で、その数は2倍に増えています。
彼らは数年のうちに有権者として政治に参加する権利を持つことになりますが、その時点で政治参加に十分なだけの日本語の力を、育くむ機会は今、100%いきわたっているとは言えません。
これまで、さまざまなバリアのために政治参加・選挙参加が困難だった有権者の方々に対する、一層のバリアフリー化が進むことの必要性と同時に、多様化する「日本人有権者」が直面するバリアにも、目を向ける必要性が今後一層高まってくるのではないかと考えています。
例えば各党マニフェストや選挙公報を「やさしい日本語」で配布することは、難しい日本語がわからないすべての有権者にとってアクセシビリティを高めるだけでなく、未来の有権者を育むという点でも有効かもしれません。
マジョリティの有権者の間で選挙への熱が高まる中で、マイノリティの方々が抱えている困難はいっそう見えづらくなり、その声も小さくなりがちです。でもその小さな声こそ、政治に届けることが必要な声なのではないでしょうか。
今、やさしい選挙の実現に向けて私たち一人ひとりにできること・すべきことは何かを考えてはみませんか?