「森のようちえん」の広がりと認証制度の可能性

子供は森の中で自分で遊び方を見つける。(写真は「森の幼稚園」ではありません。)

鳥取県が、2015年度に「森のようちえん」認証制度を創設することを決定した。全国初の施策である。

これは一定の基準を満たした「森のようちえん」運営団体を県が認証し、運営費を補助するもの。「野外保育促進事業」の一環として、すでに14年度の一般会計補正予算に約1570万円を計上し、15年度は6団体への補助を見込んでいるという。

「森のようちえん」は、幼稚園・保育園とは違って認可外のため、これまで国などの公的補助はなく、保護者の負担が大きかった。それを県単独で応援する施策だ。今後、大きな流れになるような予感がする。

「森のようちえん」と言っても、まだ世間ではあまり知られていないだろう。

園舎などを設けず、自然の中で子供たち(主に未就学児童)を遊ばせて、その体験を通して育てるものだ。雨の日でも野外で過ごし、遊具もない。保育者は子供たちを過度に「指導」せず、子供たち自身で遊び方を考えさせる……というのが基本方針だ。

こんな保育方法は、特殊なケースと思われがちだが、実は世界中で広がっている。

世界で最初の「森のようちえん」は、デンマークに誕生した。1954年にエラ・フラタウが自分の子供や近所の年少幼児たちを森の中へ連れ出して遊ばせ始めたのが最初とされる。その活動が広がり、今やデンマークでは当たり前の幼児教育になり各国に普及したのだ。すでにドイツには400以上、さらに北欧にも広がっているという。また韓国にも誕生し、行政の支援も行われている。

森で過ごした子供たちは、身体が鍛えられるとともに感性が磨かれ、コミュニケーション能力のほか協調性や創造性が高まるという研究結果も出ており、幼児教育の分野だけでなく森林の効用の面からも注目を集めているのだ。

野外で過ごすのだから、当然怪我もするし、危険もある。子供たちの間で争いも起きるだろう。しかし、なるべく保護者が手助けすることなく、自分たちで解決する術を学ばせることが大きな経験になるとされている。

思えば、最初の幼稚園は1834年のドイツに誕生しているが、設立したのは教育者ではなく森林測量技師のフリードリヒ・フレーベルだった。内容も森に子供たちを連れて行く活動である。つまり「森のようちえん」は、原点にもどった意味もあるのだ。

日本でも、少しずつ広がっている。いろいろな形態があるため、どこが最初とはいいづらいが、たとえば鎌倉の「なかよし会」は1985年から始めている。今世紀に入ると、ドイツなどのケースが紹介されたことで急速に広がった。

2005年に全国フォーラムが開催され、2008年には全国ネットワークが結成された。現在100以上の団体が加盟しているそうだが、参加せずに活動しているところも多く、実数は150以上になる。その中には、自主保育もあれはNPOの運営もある。既成の幼稚園・保育園が活動の一部に取り入れるものもある。

私は、こうした動きが全国に広がっていくのではないかと思っている。

これまで市民の自主的な取組だったが、鳥取県に続いて長野県でも行政が「森のようちえん」の認定事業の策定を進めているし、さらに三重県でも動きがある。今後、各自治体の施策に取り入れられていくのではないか。

それは、単に幼児教育の面からだけではない。鳥取県では、当初は林業関係部署が担当していたように、森林の新たな利用法を引き出す役目も担っているからだ。しかも園舎がいらないなど、行政にとって財政的にも負担は小さい。

さらに「森のようちえん」が人気を呼ぶにつれて、子どもを通わせるために実施団体のある地域に移り住む家族も少なくない。過疎に悩む地域にとって、魅力的な教育現場を持つことは、人を呼び込む処方箋の一つになるかもしれない。

私自身も、子供が小さいときは、よく山に連れて行った。私自身が森で遊びたかったからだが、子供は放っておいても勝手に遊んでくれるものだ。アブナイと思うことも多かったが、それを止めずに見守るのは勇気が要った。ちなみに成人した今は、森にまったく見向きもしないが、きっと心の深層に森の体験が残っている(と信じたい)。

なお保育内容の一定水準を保つのは、なかなかやっかいなハードルがある。適切な活動場所の確保や保育者の意識も重要だ。都会ほどニーズは多いだろうが、近郊に活動に適した自然があるとは限らないからだ。見守り役の資質も問われる。認証制度はそのためにつくられるのだろうが、そのうち「森のようちえん保育士」の養成・認定も課題になるかもしれない。

ただ、この手の認証・認定制度は、往々にして妙な利権につながりかねない。森林セラピーのごとく……。真の目的を忘れずに発展することを願う。