「全国森林計画」から大規模皆伐を考える

宮崎南部に広がる大規模皆伐地。1カ所100ヘクタールを越すところもある

2014年から15年間の「全国森林計画が閣議決定された。全国森林計画とは、今後の森林政策の指針となるもので、5年ごとに15年を1期として策定するものだ。林野庁は「日本の森のグランドデザイン」としている。

私も目を通したが、気になった点が幾つもある。ここですべて指摘するのは無理だが、木材生産(伐採)に関したところに注目しよう。

まず木材生産量は、15年間の総計が7億9961万立方メートル。現行の計画では6億9019万立方メートルだったから大幅増だ。とくに主伐は2億9318立方メートルだったのが、23%増の3億6184万立方メートルに設定している。

生産強化の理由は、人工林が成熟して伐期を迎えているからだとするが、肝心の伐った木の需要については言及していない。今でも国産材はだぶついて木材価格の下落を引き起こしているのに、今後どうなるのだろうか。林業は産業なのだから、販売利用先を考えなければならない。もっとも、価格が安ければ民有林の所有者は伐採したがらないだろう。となると、国有林の伐採が強化されるかもしれない。

むしろ気になるのは、伐採方法だ。統計的には日本の森林蓄積は増えているから、この程度伐採しても生長量以下であり、森林破壊にはならない。しかし現場を見ると、そんな計算どおりのきれいごとでは済まないだろう。

すでに九州南部や東北、そして北海道には、大規模な禿山が出現している。大面積の皆伐が行われているからである。

木の伐り方には、森の中から必要な木を選んで抜き伐りする択伐と、一定の林地の木を丸ごと伐ってしまう皆伐がある。皆伐は生産効率は高いが、跡地が森でなくなってしまい、森林生態系を破壊するため、世界的には危険視されている。しかし、日本ではずっと皆伐が主流だ。

もともと皆伐は、ヨーロッパで生まれた理論で、全部伐って一斉に同樹種・同樹齢の森づくりをする方式が効率的とされた。日本も明治時代にこの理論を取り入れたのだが、現在では、肝心のヨーロッパで方針転換して原則禁止になった国も多い。また皆伐をする国でも、せいぜい1区画1~5ヘクタール程度なのだが、日本の場合は20~30ヘクタールは当たり前。ときに100ヘクタール以上の伐採地も登場する。

そこで今回の全国森林計画をチェックしたが、皆伐を抑える意図は感じられなかった。いきなり禁止するのは無理でも、せめて面積制限は設けるべきだと思うのだが。

ただ次のように説明されている。

「皆伐は、主伐のうち択伐以外のものとし、皆伐に当たっては、気候、地形、土壌等の自然的条件及び公益的機能の確保の必要性を踏まえ、適切な伐採区域の形状、一か所当たりの伐採面積の規模及び伐採区域のモザイク的配置に配慮し、適確な更新を図ることとする。」

当たり前のことを差し障りのないように記した、としか言いようがない。結局、伐採を担当する業者の意思に任せるということか。100ヘクタールの皆伐地でも、業者が「配慮した」と言えば、何も言い返せないだろう。

ちなみに附則に「伐採面積の規模を縮小した皆伐を推進すべき森林」が打ち出されている。

(ア)地形について

a 標高の高い地域

b 傾斜が急峻な地域

c 谷密度の大きい地域

d 起伏量の大きい地域

e 渓床又は河床勾配の急な地域

f 掌状型集水区域

(イ)気象について

a 年平均又は季節的降水量の多い地域

b 短時間に強い雨の降る頻度が高い地域

(ウ)その他

大面積の伐採が行われがちな地域

(ア)も(イ)も抽象的で基準がないが、とくに最後の(ウ)がさっぱりわからない。(ア)や(イ)でなくても、やっぱり大面積に皆伐してほしくないのなら、すべての土地でするなということになる。しかし現実に大面積皆伐は行われている。それを規制したいのか、それとも放置やむなしなのか。そもそも小規模とは何ヘクタール以下なのか。「規模を縮小した皆伐」なら推進すべきなのか……。結局、ここに書いているのは「お願い」ということになる。

私は、皆伐がすべて悪いというつもりはない。小面積をモザイク状に行うなら、むしろ森林内に草地を配置することになり、生物多様性にも寄与するのではないかと思っている。しかし、面積の基準を設けなくてはなし崩し的に大面積になるだろう。

そういえば、文章全体に見受けられるのは、「配慮する」「考慮する」「図るものとする」「努めるものとする」といった語尾ばかり。これが役人用語か。加えて、どちらにでも取れる表現を多用しているから、方向性はいよいよ見えなくなる。

はっきり記すと利害にからむ林業関係者のクレームが来るとか、個人所有地の経営には口をはさめないというなら、「全国森林計画」そのものが無意味だし、グランドデザインというより「全国森林夢物語」である。