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空港からタクシーに乗ってレンタカーを借りに!? 沖縄【レンタカー問題】知恵を出し合う事業者やホテル

瀧澤信秋ホテル評論家
那覇空港のレンタカー送迎車レーン(2023年9月筆者撮影)

コロナ禍を経てクローズアップされているサービス業の人手不足問題ですが、需要と供給の急激な変化は事業者にとって雇用はもちろんのこと、サービス提供そのものにも事業者に苦渋の決断を強いるシーンは続いています。

ホテルでいえば装置産業ゆえ、需給の変化に応じて部屋そのものを減らしたり増やしたりすることは困難です(ホテルそのものを減らすシーンは散見された)。他方、たとえば本記事のテーマであるレンタカーなら、保有する台数を増減させることはリスクヘッジという面からも理屈としては可能でしょう。

観光客が激減していた沖縄へは、2021年の後半を中心に何度かホテルの現状を探る取材に出向きましたが、そんな時に利用したレンタカー会社のスタッフから聞こえてきたのが「これからコロナが収束に向かったら大変なことになりますよ」という話でした。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

「コロナで事業から撤退する業者もいるが、既存の事業者も台数を大幅に減らしているので、いきなり需要が高まっても提供できるレンタカー数は限られる」というものでした。保有台数を増減させる-と前述しましたが、減らしたものを元に戻すのは決して容易いことではないということも含め、他のレンタカー会社での取材でも同様の話が出てきました。

そこで、2022年4月にGW沖縄レンタカー事情に警鐘を鳴らす記事を掲載、記事がきっかけとなりテレビのワイドショーなどで何度か取りあげられ、シーズンの沖縄旅行は何よりまずレンタカーの確保をと情報拡散されました。

GW沖縄、飛行機ホテルは取れても【レンタカー無い問題】がホテルを直撃…コンパクトカー3日間15万!? Yahoo!ニュース(エキスパート)

このレンタカー不足問題、その後供給数(台数)は増え当時から比べると状況は改善されつつあるようで、先日出向いた際には、レンタカー会社の送迎車に乗り込む那覇空港の専用レーン案内板にも異変がみられました。

●2022年4月に訪れた際の案内板

(筆者撮影)
(筆者撮影)

●2023年9月に撮影した案内板

(筆者撮影)
(筆者撮影)

県レンタカー協会に加盟する大手業者が使用できるレーンと、加盟しない業者が使用できるレーンが異なっている那覇空港のレーンで注目したいのが14というエリア。2022年4月に撮影した案内板では11業者だったのが、2023年9月撮影の写真では表記されているだけでも15業者(いずれも「その他」は除く)と増加していました。

沖縄タイムスの記事によると「那覇空港1階にあるレンタカーの送迎バス乗り場の一角では、中小規模業者の送迎車による長蛇の列ができている。65業者がワゴン車3台分の停車スペースに止めようとし、混雑時は送迎待ちで走行車線にも停車している」「空港のキャパシティーは限界に近い」とのこと。

レンタカー送迎待ちで那覇空港混雑 車3台分のスペースに65業者  沖縄タイムス

とはいえ、なかなか混雑解消への道のりも遠そうです。

空港のレンタカー送迎 観光客は「便利」 混雑解消の妙案なし 那覇市  沖縄タイムス

※レンタカー事業者は、那覇空港1階の決められたレーンで車を借りる客を送迎車に迎えるのがルール。戻りは空港ターミナル3階で降ろすことになっています。これらの場所も含め駐車禁止区域においてレンタカーの受け渡しそのものが禁止されています(空港管理規則)。

ゆいレールに乗って

写真:イメージマート

とはいえ、特に真夏の沖縄で混雑するレーンに暑い中待たされる利用者にとっては不満が募ることでしょう。中には空港から送迎車を利用せずゆいレールで移動、ゆいレールの駅から近いレンタカー会社を選ぶという人も増えています。

実際にそうした方から話を聞いてみると「暑い中で長い時間待たされた挙げ句、送迎車で渋滞に巻き込まれつつ、遠い事業所まで移動するよりもストレスがない」「空港周辺のレンタカー事務所だと着いても混雑していて受付にも時間がかかることもあるが、市街地のレンタカーは割と空いている」「送迎がないからか料金も割安」とのこと。

筆者も何度がそうした利用をしたことがありますが、市街のレンタカー会社は“飛行機の時間に合わせてくれる”という(時間にかなり余裕を持った返却は重要)空港周辺のレンタカーにはない、遅めの営業開始時間や早めの終了時間というところもあり、返却できず飛行機に間に合わなかったなんてことのないよう事前チェックも必要と感じました。

ホテルもいろいろ工夫

レンタカー不足でフォーカスされた路線バス(筆者撮影)
レンタカー不足でフォーカスされた路線バス(筆者撮影)

レンタカー不足で予約が出来ない、とキャンセルされることもあったホテルも様々なアプローチを模索してきたようです。レンタカーばかり注目される那覇空港ですが、島内各地へ路線バスも運行されており、積極的にバスの案内をするホテルも。

アメリカンビレッジ(筆者撮影)
アメリカンビレッジ(筆者撮影)

一例として、アメリカンな雰囲気に溢れる人気観光スポット「北谷」、ホテルも多くある中で「北谷エアポートエクスプレス」や「北谷ライナー」が空港と直結しています。たとえば、北谷ライナーが停車する「レクー沖縄北谷スパ&リゾート」のスタッフは「一定のエリア(アメリカンビレッジ)内で非日常感溢れる観光が満喫できるとあって、レンタカーなしでも存分に愉しまれるゲストも多くいる」といいます。

レフ沖縄アリーナ(筆者撮影)
レフ沖縄アリーナ(筆者撮影)

同ホテルの運営会社では、2023年FIBAバスケットボール・ワールドカップの会場となった、琉球ゴールデンキングスの本拠地でもある沖縄アリーナ向かいに、8月1日「レフ沖縄アリーナ by ベッセルホテルズ」を開業、空港からの直通バスはありませんが、北谷から3~4キロメートルという距離感でタクシーでも安価で気軽に行き来できるロケーションなので、北谷まで空港直行バスを利用してタクシーでのアクセスも便利とのこと。 

(筆者撮影)
(筆者撮影)

レフ沖縄北谷のエントランス前には、沖縄市循環バスの乗り場があり「市内観光に利用されるゲストもいる」(ホテル関係者)といいます。高速バス、タクシー、循環バス、様々な組み合わせで可能性も広がるといったところでしょうか。

他方、真夏日でキツイ酷暑という条件下ではやはりレンタカーということで、広大な平面駐車場のあるホテルにしてレンタカーでのアクセスが多いわけですが、夏休みのトップシーズンは過ぎつつも、コロナ禍でレンタカー不足に辛酸を嘗めてきたホテルは様々なアプローチを模索しているようです。

レンタカー借りるのに空港を出たらすぐタクシー?

(筆者撮影)
(筆者撮影)

さて、そんな沖縄へ最近出向いた際のこと。冒頭の引用記事のような信じられない高騰はなかったものの、とはいえまだまだ高レートだったレンタカー。ゆいレール移動作戦もアリでしたが、やはり酷暑の中で重いスーツケースを携行しつつは気が引けます。あれこれ考え、最安値プランでチェックした聞いたことのなかった名前のレンタカー会社(中小事業者)で気になるプランがあり予約してみました。

タクシープラン的な名称で、那覇空港レンタカーレーンで酷暑の中の送迎車待ちの長い列は気が重いというところ、那覇空港出口ですぐにタクシーに乗ってレンタカー会社まで行き、レンタカー契約時にタクシー代を精算してもらえるといった内容。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

興味津々で大手の半額以下だったそのプランを予約、那覇空港に到着しタクシーに乗ろうとスーツケース片手に向かうと・・・トランクがサッと開き運転席から降りてきたのはかなりのベテラン(と思わしき)ドライバーさん。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

ところがトランクへかろうじて乗った2個のスーツケース、横にして収めようとするもどうにもこうにもトランクの横幅があと何センチか足りない。やっぱタクシー移動は無理か・・・レンタカー送迎車に軍配?などと心配になっていると、運転手さん、おもむろに両方のスーツケースの上面と上面をハの字に向かい合わせてストンと落とし、パコッとトランクにはめた。すごい。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

車内の派手派手シートカバーにもカーステレオの大音量演歌にも驚かないファンキータクシー!? 冷房の効いた車内でストレスフリーで無事レンタカー借り受け、なんだかとても沖縄を感じる旅のはじまりとなりました。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

ホテル評論家の辛口取材裏現場

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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